# 速度を変えた複製音源が65万再生、配信の分配に残る穴

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/ai-took-94-of-an-artist-s-spotify-royalties-through-speed/
- 公開日: 2026.07.12 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: 音楽データ資本主義（https://andown.space/topics/data-capitalism/）、著作権の再発明（https://andown.space/topics/copyright-remix/）
- フック: 作品を奪うのは、新曲とは限らない

> 米国のデュオ、Makeshift Hammerの録音が、速度を変えた別名義のアルバムとして流通していた。報道によれば複製側は65万再生を超えたが、実際の支払額は確認されていない。見えてくるのは、生成AIによる新曲の問題だけではなく、既存音源の小さな改変と再生数の操作が重なる配信の隙間である。

## 知らない名義から、自分の声が聞こえる

発見の入口は、長年のファンから届いた連絡だった。米フィラデルフィアのデュオ、Makeshift Hammerの曲に似た音源がSpotifyにある。リンク先はCarey Dupont名義のアルバム『Blue Road』。メンバーのOwen Lyman-Schmidtが聴くと、そこには速度を変えられた自分の声があった。

2026年7月のDigital Music Newsの報道によれば、収録音源はデュオの録音を速く、あるいは遅くしたものだった。曲名も「All My Friends」が「All My Friend」になるなど、わずかに変更されていた。知らない音楽が競争相手になったのではない。自分たちの録音が、別の作品として並んでいたのである。

この記事で注目したいのは、生成AIが音楽を一から作る場面ではない。既存録音の改変、別名義での流通、不自然な再生の増加が重なる場面だ。記事はジャケットをAI生成と記述する一方、音源の速度変更にAIが使われたかまでは示していない。制作技術と不正の仕組みは、分けて読む必要がある。

## 65万再生と、確認されていない収益

Lyman-Schmidtによれば、発見前の約1年間に『Blue Road』の各曲は約5万回聴かれていた。対して、4年前に出したオリジナルの多くは1,000〜2,000回。記事では、その後アルバム全体が65万再生を超えたとされる。無名に近い名義が、元の演奏者を再生数で上回っていた。

ただし、数字には留保がある。記事は、ほぼ途切れない再生をボットによる水増しと見ているが、配信サービスによる調査結果は示していない。65万再生に対する1,600〜2,600ドルという額も、オンラインの試算ツールによる推計だ。不正再生の認定、収益の確定、実際の支払いは、いずれも確認できない。

原題にある「94%」も、実際の収益明細や算定過程が本文に示されていない。デュオに入るはずの金額の94%が、そのまま別名義へ移ったとまでは読めない。それでも問題の接点は明確だ。ストリーミングでは、作品の流通と、再生を分配の根拠にする仕組みがつながっている。

記事が紹介するSpotifyの説明では、支払いは総再生に占める割合を基礎とする。仮に複製音源の不正な再生が分配計算に残れば、その名義の取り分は他の権利者の取り分にも影響し得る。これは盗まれた音源だけの問題ではない。何を有効な再生として数えるかという、分配全体の問題でもある。

## 削除の先にある、流通経路の確認

同じデュオには、約半年後にも類似の事態が起きた。Hayden Donne名義の『Powerful Thinking』では、デュオの録音と別のポップアーティストの音源が混在していたという。こちらも数十万回再生された後、姿を消した。地元の音楽家Roberta Faceplantも、似た被害の削除対応が続いていると語っている。

Lyman-Schmidtは、通報して音源が消えるだけでは、その背後が分からないと考えた。調べた結果、両名義のアルバムがSoundCloudを通じて配信されていたと述べている。問い合わせには追加情報を求める自動返信が届き、Spotifyからは返答がなかったという。これは本人の説明であり、両社の調査結果は記事にない。

ここから先の1〜3年で焦点になり得るのは、削除だけでなく、配信の入口と分配の出口を結ぶ確認である。ディストリビューターが受け付けた録音の権利をどう確かめ、サービス側の再生記録とどう照合するか。既存録音の小さな改変にも対応できるか。記事は仕組みの改善を報告してはいないが、異なる名義での反復は、個別の削除だけでは追いにくい問題を示している。

## 日本から見ると、生成よりも先に流通がある

出典には日本の被害件数や対応制度の比較はない。国内でも同じ規模の問題が起きているとは言えない。ただ、日本語でこの事例を読む際にも、「AIが作った曲」と「他人の録音を改変した曲」を一括りにしないことが、問題の所在を見えやすくする。今回の中心にあるのは、既存録音の利用と名義、そして再生数である。

ストリーミング不正は、記事自身が指摘する通り、今日の生成AI以前から存在した。この事例から見える兆しは、新しい制作技術だけでは説明できない。録音を届ける手軽さに対して、誰の作品かを確かめる手続きと、数えられた再生を検証する手続きが、どこまで接続されているのか。その隙間に、小さな演奏者の作品と収益が置かれている。

## 要するに

- 既存録音を速度改変し、別名義で流通させる事例が報じられた。
- 65万再生超という数字に対し、不正の認定や実際の支払額は確認されていない。
- 焦点はAIによる制作だけでなく、録音の権利確認と再生に基づく分配の接続にもある。

## 出典（エビデンス）

1. [二次] Digital Music News「AI Took 94% of an Artist’s Spotify Royalties Through Speed」 (2026-07-13) https://www.digitalmusicnews.com/2026/07/12/ai-steals-artist-royalties-speed-altering/
   > "Someone was using our music to play the streaming game and was massively outperforming us."
   > 訳: 誰かが私たちの音楽を使ってストリーミングのゲームをし、私たちを大きく上回る成果を出していた。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **ストリーミング** / Music streaming: ネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。 https://andown.space/glossary/music-streaming/
- **ストリーミング不正** / Streaming fraud: 実際の聴取ではない再生を人為的に生み出すなど、音楽配信サービスを操作して収益を得る行為。正当な再生に基づく収益分配や、サービスへの信頼を損なう。 https://andown.space/glossary/streaming-fraud/
- **ディストリビューター** / Music distributor: アーティストやレーベルから音源と楽曲情報を受け取り、音楽配信サービスへ届ける流通事業者。今回の取り組みでは、不正目的の音源を入口で防ぐ役割が焦点となる。 https://andown.space/glossary/music-distributor/
- **生成AI**（せいせいエーアイ） / Generative AI: 学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。 https://andown.space/glossary/generative-ai/

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この記事の写真は出典記事の空気感をもとに AI で生成したイメージです。引用の際は上記の出典を一次資料として参照してください。
