# サンパウロの画廊で交わる旧い技術とクィアの告白

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/around-sao-paulo-new-media-queer-confessionality-and-lygia-pape/
- 公開日: 2026.06.05 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: 兆しの初動（数ヶ月〜1年）
- テーマ: ローカル・シーン復権（https://andown.space/topics/local-scene/）
- フック: 新しさは機材の先だけにない

> 2026年4月のサンパウロで、アートフェアの外にある画廊を巡ったArtforumの批評は、複写機、ネオン、映像、簡素な機械がつなぐ表現の系譜を捉えた。6月5日公開の記事から見えるのは、新技術への更新だけではない。過去の実験を身体や欲望の言葉として使い直す、街の展示空間の動きだ。

## フェアの外にあった、別の技術史

新しいメディア表現は、必ずしも新しい機材から始まらない。2026年4月のサンパウロを巡ったArtforumの批評に浮かぶのは、複写機やネオン、映像、粗い機械仕掛けが、身体や欲望を語り直すために使われる光景だ。目を向ける先は、大規模なアートフェアの外にある画廊である。

発端には、SP-Arteを見た人々の評価のずれがあった。海外から来たキュレーターらは、絵画より立体的な作品が充実していたと好意的に語った。一方、筆者には、出展された風景画の一群が、ブラジルの大胆な近代美術に比べて安全に映ったという。これは市場全体の統計ではなく、街を歩く批評家の視点だ。

その視点が捉えた兆しは、技術の新旧よりも、技術を誰の経験に結びつけるかという問いである。クィアな告白、機械の反復、絵画を物体へと開く試み。それらが別々の会場で響き合っていた。

## 複写機とネオンがつなぐ告白

中心街のVerveは、1950年代の建築ルーヴルに新しいプロジェクトスペースを設けた。そこで開かれたランドルフォ・ラモニエルの個展は、床に散らした玩具やボクシング用品、性的な器具を、ネオン、画面、写真壁画と組み合わせる。異質な物を集めるアサンブラージュが、私室のような親密さをつくっていた。

作品が語るのは、カトリック的な道徳観を背景にした同性愛者の渇望だ。筆者はそこに、エイズで亡くなった1980年代のブラジルの美術家、レオニルソンとラファエル・フランサの系譜を見る。技術を介して自分を語る手法が、ラモニエルのセルフィー世代の感覚で再び動き出す、という読みである。

別の画廊Martins&Monteroでは、フジニルソン・ジュニオールの先駆的な複写機作品が、絵画やコラージュ、コレクティブ「3Nós3」の公共空間での活動記録と並んだ。唇や手足の粗い接写は、複写技術の複製性と連続性を引き受けながら、機械的な処理に身体の官能を差し込む。新旧の技術が同じ街で見られるだけでなく、それぞれが身体をどう写すかを比較できる配置である。

## 十周年の画廊が見せた、不完全な機械

Centralの開廊10周年展では、因果や終わりをめぐる構成のなかに、古い技術と新しい技術の詩情やユーモアがあった。ガブリエラ・ムレブの2017年の作品では、二つの滑車に掛かったゴムベルトが回る。その音から筆者が連想したのが、あり合わせの構造や工夫を指すポルトガル語の「ガンビアーハ」だ。

ブルーノ・カンサードの2022年の作品も、煉瓦の積層、傾いた木の梯子、セメントの弧を組み合わせたもの。マリアナ・マニャンイスの2021年の展示空間では、袋や照明、簡素な機械、小さな映像が、親密さと居心地の悪さを同居させる。ここで技術は、滑らかな便利さを見せる装置ではない。音や動き、素材の不揃いさを残す表現である。

この動きの背景として記事が具体的に示すのは、展示の受け皿の重なりだ。新設スペースがあり、10年続く画廊があり、労働者階級の地区バーハ・フンダでは2000年代半ばから倉庫を転用した画廊が現れている。ただし、来場者数や売上の数字はない。街全体の拡大や市場の転換まで読み込むことはできない。

## 日本から見る、更新とは別の広がり

今後数年への手がかりは、過去の実験を現在の展示に接続する方法にある。メンデス・ウッドDMでのリジア・パペ展では、1968年の《快楽の輪》が、色の異なる染料を満たした16個の白い器を床に並べていた。筆者が見たのは、絵画と物体、表現媒体とそれを支えるものとの境界がほどける場面だ。ラモニエルらと同じ運動ではないが、媒体を固定しない姿勢には接点がある。

こうした接続が別の展示へ広がる可能性はある。ただし、記事は共同企画や巡回の計画を報じていない。現時点で確かめられるのは、歴史的な作品、新作、活動記録を見比べられる複数の場所が、一つの街に存在したこと。その配置自体が、地域の表現を単発の新奇さから切り離している。

日本の展示環境との制度的な違いを測る材料は、この出典にはない。それでも日本から読むとき、最新技術の導入だけを「新しさ」の尺度にしない見方は残る。サンパウロで見えたのは、複写機もネオンも過去の遺物にせず、身体の記憶を伝える媒体として使う姿だった。地域の蓄積を、いまの欲望へつなぎ直す小さな動きである。

## 要するに

- サンパウロの画廊では、旧い技術と新しい技術が身体や欲望を語る媒体として並んでいた。
- クィアな告白の系譜と、媒体の境界を開く過去の実験が、同じ街の展示で読み直されていた。
- 確認できる兆しは市場全体の転換ではなく、地域の表現の蓄積を現在へ接続する展示の重なりだ。

## 出典（エビデンス）

1. [論評] Artforum「Around São Paulo: New Media, Queer Confessionality, and Lygia Pape」 (2026-06-05) https://www.artforum.com/columns/a-city-tattooed-with-neons-around-sao-paulo-1234751627/
   > "Craving art attuned to the exploration of old and new media, I headed for the galleries."
   > 訳: 新旧のメディアを探究する感覚を備えた美術を求めて、私は画廊へ向かった。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **アートフェア** / Art fair: 複数の出展者が一定期間、同じ会場で美術作品を展示・販売する催し。展示を見る場であると同時に、作家や販売者とコレクターが出会い、取引を行う場でもある。 https://andown.space/glossary/art-fair/
- **アサンブラージュ** / Assemblage: 既製品や日用品、断片的な素材など、異なる物を集めて組み合わせる立体的な表現。物が持つ用途や記憶を残しながら、新しい関係や意味を生み出す。 https://andown.space/glossary/assemblage/
- **ガンビアーハ** / Gambiarra: あり合わせの材料や仕組みを使った、その場しのぎの構造や工夫を指すポルトガル語。美術の批評では、不完全な組み立てが生む表現を捉える言葉にもなる。 https://andown.space/glossary/gambiarra/
- **キュレーター** / Curator: 作品の調査や選定、展覧会の構成などを担う専門職。担当範囲は館ごとに異なり、来館者対応や施設管理など、公開を支えるほかの仕事とは区別される。 https://andown.space/glossary/curator/
- **コレクティブ** / Collective: 共通の関心や活動方針のもとで、DJや制作者、企画者などが協働する集団。法人や固定メンバーの団体とは限らず、選曲や催しの運営を共同で担う場合もある。 https://andown.space/glossary/collective/
- **プロジェクトスペース** / Project space: 完成作品の陳列や販売だけでなく、制作過程、実験、対話などを支える展示・活動拠点。小規模な運営も多いが、名称だけで非営利法人や非商業の施設とは判断できない。 https://andown.space/glossary/project-space/

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