# LAのアートブックフェアで、カセットがつなぐ移民の記憶

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/getting-messy-in-the-archive-at-la-s-art-book-fair/
- 公開日: 2026.05.09 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: フィジカル回帰（https://andown.space/topics/physical-comeback/）
- フック: 保存から、手渡すための編集へ

> 2026年5月のロサンゼルス・アートブックフェアでは、古い写真や音楽を編み直す出版物が並んだ。パレスチナ系米国人作家のカセットは、家族が故郷とつながった聴取の記憶を継ぐもの。ここに見えるフィジカルの意味は、懐かしい媒体の復活だけではない。過去の資料を、別の誰かへ手渡すための編集である。

## カセットは、故郷への回路だった

音楽を収めた小さなテープが、アートブックの会場で家族の歴史を語っていた。2026年5月7日に開幕した、Printed Matter主催のロサンゼルス・アートブックフェア。Hyperallergicの同月9日の報告で目を引くのは、パレスチナ系米国人作家サブリ・スンドスのカセット・ミックステープ『Hand to Hand』だ。

Aventures LTDから刊行されたこの作品には、レバノン、エジプト、サウジアラビアの音楽が集められている。スンドスは幼いころ、中東の親族や友人から両親に届くテープを聴いて育った。それは故郷との音のつながりだった。自身の選曲は、サンディエゴでの子ども時代から、さらにパレスチナのディアスポラへとさかのぼる。

ここでのフィジカルは、音源を所有するための容器にとどまらない。誰が、どこから、誰へ音楽を渡したか。その経路も引き受ける媒体である。収録曲についてスンドスは、左派の政治や階級闘争を扱いながら、どれも楽しめる曲なのだと説明する。政治の記憶と聴く喜びが、同じテープに収まっている。

## 250超の出展者が編み直す過去

会場はパサデナのArt Center College of Design。第13回となる今回は250超が出展し、前年の300超から規模をやや縮めた。出展者のおよそ5分の1は初参加だった。数字が示すのは急拡大ではなく、新しい参加者を含む出版の場の継続である。記事には、カセットの販売本数や音楽媒体別の売上は示されていない。

記者が会場に見いだした共通項は、アーカイブだった。既存の写真や印刷物を掘り起こし、組み替え、過去の断片に今日の意味を与える出版物が並ぶ。『Fishworm』は、作家たちが米国メイン州の自宅周辺の廃屋で集めた写真を使う。家族写真や室内、風景の並置によって、残された像の読み方を変えている。

音楽の歴史も、その編集の対象だ。1993年に10代の姉妹ウェンディとエイミー・ヤオが結成したインディーロック・バンド、Emily's Sasy Limeの展示には、ポップカルチャーや地下音楽の一時的な印刷物が集まった。近くにはウェンディが設立した書店Ooga Boogaも出展。音源だけでなく、その周囲に生まれた紙片や交流までが、音楽を伝える資料になっていた。

Armenian Creativesの共同設立者キャロライン・パルタミアンによる『Khaz Poems』も、古代アルメニアの記譜法をタイポグラフィの構成へ変える本だ。テープ、写真集、文字の造形。形式は異なるが、過去をそのまま保存するのでなく、別の人が受け取れる形に編み直す姿勢が重なっている。

## モノの先に、集まる場所をつくる

この時点から先の1〜3年を見るうえで、注目したいのは媒体の復活だけではなく、媒体を介して人が会う場所の広がりだ。出展したColoured Publishingは、実店舗の書店へ事業を広げる計画を語った。共同運営者のカヒム・スミスは、あらゆるものがデジタルになる状況で、生活や仕事の場とは別に集まれる場所をつくる意図を説明している。

これは計画であり、開店や継続が確認されたわけではない。それでも、制作して配ることと、集まる場所を持つことが、一続きの営みとして語られている点は重要だ。カセットを買う、本を開く、展示で資料を見る。その接点が書店へ延びれば、過去の資料に触れる機会も増える可能性がある。

ただし、この一会場から米国全体のフィジカル市場の伸長は読み取れない。見えているのは、音楽のモノが美術出版や移民の記憶と隣り合う、小さく具体的な動きだ。今後の広がりを考える手がかりは、テープの数量だけでなく、異なる領域の人が同じ資料に出会えるかどうかにもある。

## 日本からは、復刻とは別の軸が見える

日本からこの事例を読む際、国内のレコードやカセットの人気と、そのまま同じ動きとして扱うことはできない。出典には日本の市場や活動との比較がなく、規模の違いも判断できない。一方、ここで報告されたテープの背景には、国境を越えて家族に音楽が届いた経験がある。媒体の古さ以上に、その受け渡しの来歴が作品を形づくっている。

その違いから、フィジカル回帰を見るもう一つの軸が浮かぶ。何が再び売れるかだけではなく、何を、誰の記憶として手渡すのか。2026年5月の会場で見えたのは、過去の音楽や紙片が、出版という手仕事を通じて新しい関係の入口になる兆しだった。

## 要するに

- 家族に届いたテープの記憶が、新たなカセット作品へと編み直された。
- 音楽の資料は、写真集や文字の造形と同じ出版の場に並んでいた。
- 出版物を配る活動から、人が集まる実店舗へ延ばす計画も語られた。

## 出典（エビデンス）

1. [二次] Hyperallergic「Getting Messy in the Archive at LA’s Art Book Fair」 (2026-05-09) https://hyperallergic.com/getting-messy-in-the-archive-at-las-art-book-fair/
   > "Growing up, Sundos would listen to the tapes his parents would receive from friends and family in the Middle East, sonic links to their homeland."
   > 訳: スンドスは幼いころ、中東の友人や親族から両親に届くテープを聴いていた。それらは故郷へとつながる音の回路だった。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **タイポグラフィ** / Typography: 文字の形、大きさ、間隔、配置などを組み立て、意味や印象を伝える表現技術。読みやすさに加え、文字そのものの視覚的な働きも扱う。 https://andown.space/glossary/typography/
- **ディアスポラ** / Diaspora: 故郷や祖先の土地を離れて各地に暮らす人々と、そのつながりを指す概念。美術では、移動先と出自の双方から歴史や帰属を捉える視点として用いられる。 https://andown.space/glossary/diaspora/
- **フィジカル** / Physical release: レコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。 https://andown.space/glossary/physical-release/

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