# 国と年代から海へ、LACMAが組み替える常設展示

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/love-among-the-ruins-george-baker-on-the-lacma-remodel/
- 公開日: 2026.09.01 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: ミュージアムの再定義（https://andown.space/topics/museum-redefined/）
- フック: 作品を分ける境界そのものへ

> ロサンゼルス郡立美術館の新展示は、国別・年代別の分類から、海を介したつながりへと軸足を移した。陶磁器や染織が絵画と並び、日本美術も別の文脈に置かれる。2026年9月の批評が捉えたのは、建築の刷新だけではない。総合的なコレクションを持つ美術館が、何を隣り合わせにするかを問い直す試みである。

## 展示室の住所が「海」に変わる

美術館で作品を探すとき、国名や年代は見取り図になる。ロサンゼルス郡立美術館(LACMA)の新しいデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズは、その見取り図を組み替えた。2026年9月のArtforumで、美術史家ジョージ・ベイカーが検討したのは、建築と常設展示が一緒に変わる現場である。

展示を大きく分けるのは、太平洋、インド洋、大西洋、そして地中海。国、年代、素材ごとに作品を整理する従来の枠組みに代わり、海を介したつながりが空間の骨格になった。かつて「アメリカ」に分類された収蔵品も、太平洋と大西洋の双方へ分かれて配置される。

兆しは、異なる時代の作品を混ぜたことだけではない。分類の単位を変えれば、同じ収蔵品から別の美術史が立ち上がる。多地域・多時代を扱う百科全書型美術館が、世界を網羅する棚から、世界の関係を読み直す場所へ。その可能性が、ここでは展示として試されている。

## 4つの領域で、絵画の序列もほどく

太平洋の領域には、メソアメリカの美術、ラテンアメリカ絵画における先住民の影響、ポリネシアの彫刻、古代アンデスの織物、日本の陶磁器、戦後カリフォルニアのデザインが含まれる。アッシリアの浮彫と17世紀オランダ絵画も近接する。時代横断展示は、例外的な取り合わせではなく、館全体の構成原理に近づいている。

変わるのは地域の境界だけではない。ベイカーは、陶磁器や染織が広く配置されることで、絵画を頂点とするジャンルの序列も揺らいだと読む。絵画を中心に他の作品を添えるのではなく、素材や用途の違うものが互いの見え方を変える。キュレーションの力点が、作品の所属から、作品同士の関係へ移っている。

背景には、館長マイケル・ゴーヴァンによる分類への政治的な批判がある。彼は、世界を区画する格子状の枠組みを、植民地主義による測量と征服に結びつける。ただし、これは館長の主張だ。ベイカーは、約10億ドル規模の美術館を20年かけて計画・建設した館長の立場にも疑問を差し挟む。分類を崩す理念と、それを実現する権力は、同じものではない。

ペーター・ツムトアの建築も、この再編を支える。明確な正面や背面を持たず、曲線的な輪郭で大通りをまたぐ建物。その内部では海域の境界も浸透的に扱われる。作品だけを入れ替えるのでなく、観客がどこから入り、何を隣に見るかまで組み直す試みだ。

## 「水」でつなぐ、その先にある難しさ

水や流動性は、展示の各所に現れる。日本美術の一室では、神坂雪佳の着物や葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》などが「流れる水」を軸に集められた。別の場所ではアンドレアス・グルスキーの海洋写真が、建築と観客を映すガラス面も含め、海をめぐる空間をつくっている。

もっとも、共通する主題を見つけるだけで、歴史的な関係まで説明できるわけではない。ベイカーは新展示を全面的には肯定しない。「大地と水」と題した区画では、異なる時代・地域の陶磁器が巨大な卓上に並び、置き場所に困ったかのようにも見えると批判する。新しい隣接は、理解の入口にも、文脈が薄まる地点にもなり得る。

この時点から数年先に向けて注目されるのは、海という区分が他館に広がるかだけではない。国別・年代別では出会わなかった作品を結び、その関係をどこまで説明できるかという課題である。ここで示されたのは、再分類の一例だ。ほかの美術館による採用や、その効果までは確認できない。

## 日本美術を「日本」の外側から見る

日本から読むと、重要なのは日本美術の置かれ方である。記事では、日本美術館は少なくとも当時、一般公開されていない。一方、新展示では日本の陶磁器が太平洋の領域に入り、着物や版画は水という主題で結ばれる。専用の建物にまとめることと、別の関係の中に配置すること。その違いが、同じ敷地で見えている。

出典には日本国内の美術館との比較調査はなく、国内の傾向までは言えない。ただ、日本美術を国の単位で受け止める視点に対し、LACMAは海域や素材、主題という別の入口を差し出している。境界を外せば理解が深まるとは限らない。それでも、何を隣に置くかが文化の語られ方を変えることは、この展示から読み取れる。

## 要するに

- LACMAは、国や年代に代えて海域を常設展示の大きな枠組みに据えた。
- 陶磁器や染織の配置は、絵画中心の序列を問い直すものとして批評された。
- 異なる作品を結ぶ可能性と、その歴史的文脈をどう保つかという課題が並んでいる。

## 出典（エビデンス）

1. [論評] Artforum「Love Among The Ruins: George Baker on the LACMA Remodel」 (2026-09-01) https://www.artforum.com/features/george-baker-lacma-1234757878/
   > "Chronology no longer rules: Assyrian reliefs are arranged cheek by jowl with seventeenth-century Dutch painting, while a Lauren Halsey wall sculpture is embedded in a room of Egyptian funerary objects."
   > 訳: もはや年代順が支配してはいない。アッシリアの浮彫が17世紀オランダ絵画と隣り合い、エジプトの埋葬用の品々を集めた部屋にはローレン・ハルシーの壁面彫刻が組み込まれている。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **キュレーション** / Curation: 作品を選び、調査し、配置や解説を通じて観客との関係をつくる実践。美術館では、何をどの視点から伝えるかという判断と、その責任も含んでいる。 https://andown.space/glossary/curation/
- **再分類**（さいぶんるい） / Award category reassignment: 賞への応募作品を、主催者が別の部門へ振り分け直すこと。応募者が選んだ部門と実際の審査部門が異なり得るため、判断基準の説明が重要になる。 https://andown.space/glossary/award-category-reassignment/
- **時代横断展示**（じだいおうだんてんじ） / Transhistorical display: 異なる時代の作品を同じ空間に置き、主題や素材、形態などの関係から見せる展示方法。年代順では見えにくい共通点と差異を示す試み。 https://andown.space/glossary/transhistorical-display/
- **百科全書型美術館**（ひゃっかぜんしょがたびじゅつかん） / Encyclopedic museum: 幅広い地域・時代・分野の作品を収集し、人類の文化を総合的に示そうとする美術館。何を分類の軸にするかが、世界の見え方を左右する。 https://andown.space/glossary/encyclopedic-museum/

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