# ウータンの一点物アルバム訴訟、盤の所有と著作権のずれ

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/martin-shkreli-sues-wu/
- 公開日: 2026.02.04 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: 音楽の金融化（https://andown.space/topics/music-as-asset/）、著作権の再発明（https://andown.space/topics/copyright-remix/）
- フック: 希少性を支える契約の輪郭

> 世界に一組だけのCDを買うことと、その音楽の権利を得ることは同じではない。ウータン・クランの『Once Upon A Time In Shaolin』をめぐり、マーティン・シュクレリがRZAらを提訴した。2026年2月初めの報道から見えるのは、希少な音楽を資産として売買するとき、現物と著作権、複製の扱いが別々に問われる構図だ。

## 一組のCDに、複数の権利の主張

一組しか作られなかったアルバムに、誰がどこまで権利を持つのか。ウータン・クランの『Once Upon A Time In Shaolin』をめぐる争いが、現物の所有から契約の読み方へと広がっている。CMUが2026年2月5日に報じたのは、元所有者のマーティン・シュクレリが、RZA、共同プロデューサーのCilvaringz、現物を取得した暗号資産系コレクティブのPleasrDAOを訴えたという動きだ。

シュクレリの主張では、2015年の購入時に著作権の50%を取得し、残る50%も88年後の2103年に移転される契約だった。ところが両プロデューサーは2024年、PleasrDAOにも50%を売ったという。彼が「合計150%」を売ったと批判する根拠は、この将来の移転約束にある。ただし、これは訴訟当事者の主張であり、権利の帰属が確定したという報道ではない。

見えてくるのは、一点物という言葉の内側にある分離だ。CDという物体、その音を複製する権限、現在の著作権持分、将来の著作権譲渡。それらが同じ相手に、同じ時期に帰属するとは限らない。

## 200万ドルの盤と、75万ドルの持分

出発点は2015年の競売だった。2枚のCDに収められた唯一のフィジカルを、シュクレリが200万ドルで購入。その後、証券詐欺事件で2017年に有罪判決を受け、資産没収の一環としてCDも米政府に引き渡された。米連邦保安官局は2021年、そのCDをPleasrDAOに400万ドルで売却した。

さらにPleasrDAOは2024年、RZAとCilvaringzに75万ドルを支払い、両者が保持していると認識していた著作権の50%を取得したとCMUは伝える。400万ドルの現物取引と、75万ドルの権利取引。金額は別々の対象に付いている。単純に合算して作品全体の価値とみなせば、何を買ったのかが見えにくくなる。

争いが表面化した契機は、シュクレリが2024年のライブ配信で、没収前に作った複製をなお持っていると認めたことだった。PleasrDAOは彼を提訴。これに対しシュクレリは、当初の契約は私的な複製を認めており、現物の没収でも自分の著作権は移っていないと主張した。希少性の前提を揺らしたのは、新しい製造ではなく、以前から存在したとされるコピーだった。

## 希少性の値段から、権利の連鎖へ

シュクレリは既存の訴訟に両プロデューサーを加えるよう求めたが、裁判官は認めなかった。その後に起こした今回の訴えでは、契約違反による損害に加え、PleasrDAOが従来の契約を知りながら取引した責任も問う。一方、PleasrDAO側の代理人は、刑事事件で全権利の没収を命じられたのに権利を保持したと認めている、と反論している。現物を手放した際に何が移ったかが、対立の中心にある。

この時点から先の1〜3年を見ると、注目点は一点物の作品が増えるかどうかだけではない。音楽を希少な資産として売買する際、権利の連鎖をどこまで確認できるかという論点が広がる可能性がある。過去の譲渡、留保された持分、複製の許可、将来の移転約束。現物の来歴だけでは説明しきれない情報である。

ただし、この一件から音楽資産全体の取引慣行が変わるとは言えない。唯一の現物、長期の移転約束、刑事事件による没収が重なった特殊な事例だ。それでも、作品の希少性を物体の数で語る説明と、契約が実際に認める利用範囲との間に、ずれが生じ得ることは読み取れる。

## 日本から見ると、限定盤とは別の問い

日本からこの報道を読む際にも、「一組だけのCD」と「音楽を独占できる権利」は分けて捉えられる。ただし、出典は日本の限定盤市場や契約実務との比較を示していない。同じ構造が国内にもある、とまでは言えない。ここで確認できるのは、米国のこの取引では、現物の購入後にも著作権持分を得る別契約が結ばれたという事実だ。

音楽を聴くための盤が、保有し、売買する資産にもなる。そのとき価値を支えるのは、珍しさだけではない。誰がコピーを持ち、誰がどの権利を保持し、いつ誰に移す約束をしたのか。2026年2月初めにそこにあった兆しは、音楽の資産化を語る言葉の背後で、契約の輪郭が改めて問われていることだった。

## 要するに

- 一組だけのCDの所有と、音楽の著作権持分は別々に取引されていた。
- 今回の訴訟では、将来の権利移転の約束と現物没収の範囲が争われている。
- 希少な音楽の資産価値を考えるうえで、複製の扱いと契約の連なりが論点として浮かんでいる。

## 出典（エビデンス）

1. [二次] CMU（Complete Music Update）「Martin Shkreli sues Wu」 (2026-02-05) https://completemusicupdate.com/martin-shkreli-sues-wu-tangs-rza-in-ongoing-once-upon-a-time-in-shaolin-battle/
   > "The US Marshals Service then sold the CDs to PleasrDAO for $4 million in 2021."
   > 訳: その後、米連邦保安官局は2021年、そのCDをPleasrDAOに400万ドルで売却した。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **コレクティブ** / Collective: 共通の関心や活動方針のもとで、DJや制作者、企画者などが協働する集団。法人や固定メンバーの団体とは限らず、選曲や催しの運営を共同で担う場合もある。 https://andown.space/glossary/collective/
- **フィジカル** / Physical release: レコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。 https://andown.space/glossary/physical-release/
- **ライブ配信** / Livestream: 公演などの映像と音声を、進行に合わせてインターネットで届ける方式。後日の見逃し視聴や映像の保存は別の条件であり、生中継だけでは保証されない。 https://andown.space/glossary/livestream/
- **契約違反**（けいやくいはん） / Breach of contract: 契約によって負った義務を果たさないこと。芸名を変更する約束が争われる場合、名前の類似そのものとは別に、合意の内容や履行の有無が問題となる。 https://andown.space/glossary/breach-of-contract/
- **権利の連鎖**（けんりのれんさ） / Chain of title: ある権利が誰に帰属し、どの契約を通じて誰へ移ったかという履歴。現在の保有者だけでなく、最初の所有者や各段階の移転主体を確かめる手がかりとなる。 https://andown.space/glossary/chain-of-title/
- **著作権**（ちょさくけん） / Copyright: 楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。 https://andown.space/glossary/copyright/
- **著作権譲渡**（ちょさくけんじょうと） / Copyright assignment: 著作権を持つ者から、別の者へ権利を移すこと。今回の争いでは、アーティスト本人から譲渡があったといえるかどうかが、米国の終結権を利用する入口となった。 https://andown.space/glossary/copyright-assignment/

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