# ソルト・ン・ペパの原盤訴訟棄却、問われた権利の起点

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/salt-n-pepa-lawsuit-against-universal-music-group-over-ownership-of-mast/
- 公開日: 2026.01.09 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: 音楽の金融化（https://andown.space/topics/music-as-asset/）、著作権の再発明（https://andown.space/topics/copyright-remix/）
- フック: 取り戻す権利はどこから始まる

> ソルト・ン・ペパが原盤の著作権などの回復を求めた訴訟で、米連邦地裁は請求を棄却した。判断の中心は、契約から何年が過ぎたかではなく、誰が最初に権利を持ち、誰が移転したか。2026年1月9日時点の報道から、音楽の権利を取り戻す制度と、古い契約の構造との間にある境界を読む。

## 年数の先にあった、所有の条件

長く歌い継がれてきた録音を、その歌い手が取り戻せるとは限らない。ソルト・ン・ペパがユニバーサル ミュージック グループ(UMG)を相手に起こした訴訟で、米ニューヨーク州南部地区連邦地裁は2026年1月8日、原盤の著作権と現物のマスターテープをめぐる請求を棄却した。

デニス・コート判事が焦点を当てたのは、作品への貢献や成功の大きさではない。デュオが、その録音の著作権を保有し、自ら他者へ移転したことがあったか。判事は、請求の根拠とされた1986年の契約には、それを示す内容がないと判断した。

ここに見えるのは、権利回復をめぐる時間の問題が、権利の出発点の問題へ移る場面だ。一定期間が過ぎれば誰でも原盤を取り戻せる、という制度ではない。かつて誰が何を持っていたのか。その記録が、制度を使えるかどうかの境界になった。

## 35年の制度を分けた、同日の契約

デュオが利用しようとしたのは、米著作権法203条の移転終了権である。報道によれば、著作権の当初の移転から35年後に権利を取り戻せる仕組みだ。デュオは2022年3月に終了通知を送り、最も早い終了日を2024年5月15日とした。その後、2025年5月に提訴している。

ただし、判決を分けたのは経過年数ではなかった。1986年5月15日に結ばれた三つの契約書類である。デュオは制作会社Noise In The Attic Productions(NITA)と録音契約を結んだ。この契約には、録音の著作権を含む権利をNITAが単独かつ独占的に所有すると記されていた。

同日、NITA側からNext Plateau Recordsへ権利を移す契約が結ばれ、デュオも同社宛ての確認書に署名した。デュオは、この確認書が自分たちによる直接の権利移転に当たると主張した。しかし判事は、確認書がNITAの単独所有という説明への同意を含む点を挙げ、その解釈を退けた。

判事の整理では、権利を移転したのはデュオではなくNITA側だった。本人が実行していない移転を、本人の移転終了権で終わらせることはできない。録音契約だけでなく、制作会社からレコード会社へ至る権利の連鎖が、回復の可否を左右したのである。UMGは関係するレコード会社の権利承継者とされている。

## 所有の回復と、報酬の交渉は別の道

今回の判断は、著作権だけにとどまらない。デュオは、UMGがマスターテープの占有を不当に妨げたとも訴えたが、この請求も棄却された。判事は、デュオがテープの所有権を示していないと判断した。録音を利用する権利と、録音を収めた物の所有。両方が争われ、それぞれ所有の根拠が問われた。

一方、UMGの広報担当者は、訴訟前にも報酬改善などを含む解決を試みたと説明し、棄却後も解決に向けた協議に応じる姿勢を示した。これはあくまでUMG側の説明であり、合意成立の報告ではない。それでも、法的な所有権の回復と、報酬や利用条件をめぐる交渉が別の経路であることは読み取れる。

この時点から先を見れば、原盤の帰属を争う際、古い録音契約に加え、制作会社を介した移転や付随書類を確かめることの重みが増す可能性がある。ただし、本件だけで他のアーティストの請求の成否は決まらない。契約の文言と権利を移した主体が違えば、検討の前提も変わる。

## 日本から見ると、「原盤」を分けて読む

日本からこの報道を読む際には、「原盤を取り戻す」という一言をほどくと、争点が見えやすい。録音に関する著作権の帰属、現物のテープの所有、そこから生じる報酬は、同じ問いではない。本件でも、著作権の移転終了とテープの占有をめぐる請求は、別々に判断されている。

また、35年という数字は米国の制度に結びついており、日本の契約にも同じ時計があることを示すものではない。2026年1月9日時点で見えた兆しは、原盤の価値をめぐる議論の足元に、所有と移転の履歴があるということだ。誰の声が録音されているかと、誰から権利が渡ったか。その隔たりが、権利回復の具体的な条件として表に出ている。

## 要するに

- ソルト・ン・ペパの請求は、自ら著作権を保有し移転したことを示せないとして棄却された。
- 35年という期間だけでなく、1986年の契約が定めた権利の起点が判断を左右した。
- 所有権の回復とは別に、UMGは報酬などをめぐる解決に応じる姿勢を示した。

## 出典（エビデンス）

1. [二次] Music Business Worldwide「Salt-N-Pepa lawsuit against Universal Music Group over ownership of master recordings dismissed」 (2026-01-09) https://www.musicbusinessworldwide.com/salt-n-pepa-lawsuit-against-umg-over-ownership-of-master-recordings-dismissed/
   > "It was only Azor and NITA that granted a transfer of rights in 1986 to Next Plateau Records."
   > 訳: 1986年にNext Plateau Recordsへ権利を移転したのは、アゾールとNITAだけだった。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **移転終了権**（いてんしゅうりょうけん） / Copyright termination right: 著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。 https://andown.space/glossary/copyright-termination-right/
- **権利の連鎖**（けんりのれんさ） / Chain of title: ある権利が誰に帰属し、どの契約を通じて誰へ移ったかという履歴。現在の保有者だけでなく、最初の所有者や各段階の移転主体を確かめる手がかりとなる。 https://andown.space/glossary/chain-of-title/
- **原盤**（げんばん） / Master recording: 音楽の録音そのものや、その元となる録音物を指す言葉。権利を論じる際は、録音に関する権利と、テープなど現物の所有を区別する必要がある。 https://andown.space/glossary/master-recording-rights/
- **著作権**（ちょさくけん） / Copyright: 楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。 https://andown.space/glossary/copyright/

---
この記事の写真は出典記事の空気感をもとに AI で生成したイメージです。引用の際は上記の出典を一次資料として参照してください。
