# ソルト・ン・ペパ判決が示す、原盤の権利回収と契約の壁

- 媒体: Andown（行灯）— そこにある光
- URL: https://andown.space/salt-n-pepa-ruling-could-pose-a-threat-to-artists-seeking-to-reclaim-rig/
- 公開日: 2026.01.21 / 更新 2026.10.18
- 著者: Andown
- 時間軸: シーンと言説の潮流（1〜3年）
- テーマ: 著作権の再発明（https://andown.space/topics/copyright-remix/）
- フック: 取り戻す前に問われる権利の出発点

> 米国では、譲渡した著作権を一定期間後に取り戻せる。ただし、その入口に立つには、アーティスト自身が権利を譲渡したと認められる必要がある。2026年1月のソルト・ン・ペパをめぐる判決報道は、古い契約の文言が将来の権利回収を左右する問題を照らした。同時期の楽曲著作権をめぐる判断とは、異なる方向の兆しである。

## 35年を待つだけでは戻らない

長く流通してきた録音を、歌った本人が取り戻す。その道筋は、経過した年月だけでは決まらない。2026年1月に報じられたソルト・ン・ペパとユニバーサル・ミュージックの争いが照らしたのは、そもそも誰が最初に権利を持っていたのかという、契約の出発点である。

米著作権法の終結権は、創作者がレーベルや音楽出版社へ譲渡した著作権を、一定期間後に回収できる仕組みだ。ところが今回、裁判官は初期録音を手がけたプロデューサーとの1980年代の契約を根拠に、最初の権利者はラッパー本人たちではなく、プロデューサーとその会社だったと判断した。

本人からの著作権譲渡がなければ、終わらせる対象もない。CMUが紹介した法律事務所Womble Bond Dickinsonの分析は、この判断が将来の録音の権利回収を妨げる可能性を指摘する。見えてきたのは制度そのものの消滅ではない。制度を使えるかどうかが、古い契約の文言に左右されるという問題だ。

## 同じ制度が、楽曲と録音で分かれる

出典によれば、米国の創作者が事業上のパートナーへ著作権を譲渡した場合、原則として35年後に回収できる。1978年より前に創作された作品では56年だ。音楽出版では、数十年前に長期契約を結んだソングライターが、この制度を利用することは珍しくないという。

同時期には、ソングライターのシリル・E・ヴェッターに有利な判断も出ていた。従来、世界を対象とする出版契約でも、終結権によって戻るのは米国内の権利だけと考えられてきた。ヴェッターはその理解を争い、前年の判断が1月の控訴審でも維持された。さらなる上訴の可能性は残るが、世界規模での権利回収を求める余地が示されたのである。

一方、録音には別の争点がある。一部のレーベルは、最初からプロデューサーやレーベルが権利者であり、アーティストからの譲渡は存在しないと主張する。その根拠には契約の文言に加え、雇用や委託に関わる米法上のワーク・メイド・フォー・ハイアという扱いがある。この扱いが成立する場合、終結権は適用されない。

ソルト・ン・ペパの件でも、ユニバーサルはこの主張を行った。ただし裁判官は、契約文言に基づく判断で結論を出しており、ワーク・メイド・フォー・ハイアに当たるかどうかは判断していない。法律事務所が懸念したのは、1986年の契約文言から、その扱いに該当しそうだと裁判所が示唆した点だ。確定した判断と、判断に至らなかった論点は分けて読む必要がある。

## これからの争点は、契約の入口へ

2026年1月から先の1〜3年を考えると、注目されるのは権利回収の件数だけではない。新しい契約で、権利が誰から誰へ移るのかを、どこまで明文化する動きが広がるかである。今回の法律事務所の分析は、その入口を具体的に示している。

分析が挙げたのは、契約で著作権譲渡が行われること、アーティストの仕事がワーク・メイド・フォー・ハイアではないこと、米著作権法203条に基づく終結通知を適時に提出できることの明記だ。これは当該事務所の提案であり、業界全体で採用された条件ではない。それでも、将来の回収可能性を契約時点で確かめようとする論点が表に出ている。

ただし、すべての契約が35年後の争いへ向かうわけでもない。CMUは、近年はより短期の契約を結ぶアーティストも多く、35年を待たずに権利が戻る場合があると記す。法律に基づく回収と、契約期間に基づく返還。その二つが並ぶなかで、どの仕組みで権利が戻るのかという違いが、より重要になる可能性がある。

## 日本から見ると、まず権利を分ける

日本から読む際、この米国の制度を、そのまま国内契約にも使える仕組みとは捉えられない。今回の報道が扱うのは米著作権法に基づく争いであり、日本法や日本の契約実務との比較までは示していない。また、歌詞や曲の著作権と、録音そのものの権利では、同じ終結権をめぐっても争点が異なる。

読み取れるのは、「取り戻せる年数」の手前に、「何を、誰が、どの契約で渡したのか」という問いがあることだ。楽曲では回収の地域的な範囲が広がる余地が示され、録音では制度への入口が争われた。創作者の権利回収は一方向に進むのではなく、権利の種類と契約の言葉ごとに、異なる輪郭を見せていた。

## 要するに

- ソルト・ン・ペパの件では、旧契約が示す最初の権利者が、録音の権利回収を左右した。
- 同時期の楽曲著作権の争いでは、米国外の権利も回収できる可能性が示された。
- 将来の権利回収をめぐり、契約時点で権利の移転を明確にするという論点が浮かんでいる。

## 出典（エビデンス）

1. [二次] CMU（Complete Music Update）「Salt N Pepa ruling could “pose a threat” to artists seeking to reclaim rights in the future, say lawyers」 (2026-01-22) https://completemusicupdate.com/salt-n-pepa-ruling-could-pose-a-threat-to-artists-seeking-to-reclaim-rights-in-the-future-say-lawyers/
   > "Some labels argue that in many scenarios it is the producer or the label that is the default first owner of the copyright in any one recording, rather than the artist."
   > 訳: 一部のレーベルは、多くの場合、個々の録音の著作権を最初に持つのはアーティストではなく、プロデューサーまたはレーベルだと主張している。
   確認日: 2026-10-18

## 用語

- **ワーク・メイド・フォー・ハイア** / Work made for hire: 雇用や一定の委託に関わる米著作権法上の作品の扱い。該当すると終結権は適用されないが、契約にそう記すだけで成立するかどうかも、法的な検討を要する。 https://andown.space/glossary/work-made-for-hire/
- **移転終了権**（いてんしゅうりょうけん） / Copyright termination right: 著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。 https://andown.space/glossary/copyright-termination-right/
- **音楽出版**（おんがくしゅっぱん） / Music publishing: 歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。 https://andown.space/glossary/music-publishing/
- **原盤**（げんばん） / Master recording: 音楽の録音そのものや、その元となる録音物を指す言葉。権利を論じる際は、録音に関する権利と、テープなど現物の所有を区別する必要がある。 https://andown.space/glossary/master-recording-rights/
- **著作権**（ちょさくけん） / Copyright: 楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。 https://andown.space/glossary/copyright/
- **著作権譲渡**（ちょさくけんじょうと） / Copyright assignment: 著作権を持つ者から、別の者へ権利を移すこと。今回の争いでは、アーティスト本人から譲渡があったといえるかどうかが、米国の終結権を利用する入口となった。 https://andown.space/glossary/copyright-assignment/
- **返還**（へんかん） / Cultural repatriation: 文化財や遺骨などを、由来する共同体や権利を持つ人々へ戻すこと。文化財の返還では、所有だけでなく、儀礼や祖先との関係を誰が引き継ぐかも関わる。 https://andown.space/glossary/cultural-repatriation/

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