1–3 YEARS · シーンと言説の潮流ミュージアムの再定義ローカル・シーン復権
展示の先に、制作と学びの場所
タシケントの旧車庫に開館、現代美術を育てる常設拠点
ウズベキスタン初の現代美術専門の常設機関が、タシケントの旧路面電車車庫に開館した。歴史的な美術と現代作品を並べる開幕展に加え、図書室や制作滞在のための空間も備える。2026年9月時点で見えるのは、作品を見せるだけでなく、制作と学びが続く場所をつくろうとする動きだ。

一度の展覧会から、続いていく場所へ
2026年9月6日、ウズベキスタンの首都タシケントに、Centre for Contemporary Arts Tashkent(CCA Tashkent)が一般公開された。Artforumによれば、同国で初めて現代美術を専門に扱う常設機関である。ここで注目したいのは、新しい展示施設の誕生だけではない。「常設」という時間の持ち方だ。
建物には展示室に加え、図書室、ワークショップ、一般向けプログラム、アーティスト・イン・レジデンスアーティスト・イン・レジデンスArtist-in-residence作家が一定期間ある場所に滞在し、制作や調査を行う仕組み。作業空間や素材、人との出会いなど、受け入れ先の条件も表現に関わる。用語集で詳しくのための空間が組み込まれている。作品を見ることと、調べること、つくることを同じ場所に置く構成。完成した作品の発表だけに用途を限らない、アートセンターアートセンターCentres d’art本記事では、作品の収集・保存を主目的とせず、現代美術の展示や制作、地域に向けたプログラムを担うフランスの公共文化施設を指す。用語集で詳しくとしての輪郭が見える。
ただし、空間が用意されたことと、活動が定着したことは同じではない。出典には滞在制作の募集条件や参加人数、年間の運営計画までは示されていない。9月時点で確認できる兆しは、継続的な制作と交流を受け止める場所が、施設の設計に含まれたことである。
1912年の産業建築に、歴史と現代を重ねる
施設が入るのは、1912年の路面電車車庫とディーゼル施設を修復した建物だ。改修を担ったのは、パリを拠点とするStudio KO。設計者たちは声明で、力強い産業建築の記憶を尊重しながら、新しい詩的な生命を与えることを目指したと説明している。建築の過去を消すのではなく、現代美術の用途を重ねる試みである。
展示にも、異なる時代を隣り合わせにする構成がある。芸術監督兼チーフキュレーターキュレーターCurator作品の調査や選定、展覧会の構成などを担う専門職。担当範囲は館ごとに異なり、来館者対応や施設管理など、公開を支えるほかの仕事とは区別される。用語集で詳しくに前年就任したサラ・ラザによる開幕展は、アラビア語で「知恵」を意味する「Hikmah」。現代作品とともに、カラカルパクスタン国立美術館の所蔵する歴史的なウズベク美術とカラカルパク美術が並ぶ。会期は2027年1月31日までとされる。
この展示内容からは、現代美術を地域の歴史と切り離さずに見せる方向が読み取れる。ただし、出典には個々の出品作や展示の詳細はない。歴史作品が現代作品をどう照らすのか、その具体的な関係まで断定はできない。確認できるのは、両者が開館時の展示を構成しているという事実だ。
事業を主導したのは、2017年設立のウズベキスタン芸術文化開発財団(ACDF)である。同財団は、安藤忠雄が設計する新しいウズベキスタン国立博物館や、リナ・ゴットメが設計するブハラのジャディード遺産博物館も手がける。CCA Tashkentは、同財団が進める複数の文化施設計画のなかに位置づけられる。
次の数年に問われる、空間から活動への接続
開館時点から先の1〜3年を見るなら、焦点は、併設された空間がどのような活動につながるかにある。展示に合わせて図書室の資料を読む。ワークショップで制作過程に触れる。滞在する作家と地域の人が接点を持つ。いずれも施設の構成から考えられる可能性だが、実施済みの成果ではない。
一般向けの活動をどう組み立てるかというプログラミングプログラミングProgramming会場でどんな催しを、いつ、どのような組み合わせで開くかを組み立てること。クラブでは出演者の選定に加え、曜日ごとの企画や定例イベントの配置も指す。用語集で詳しくが、その接続を左右すると見られる。展覧会の会期を越えて参加できる活動が続けば、来館者と施設の関係にも反復が生まれる可能性がある。反対に、部屋があるだけで交流が育つとは限らない。今後の活動内容を見て初めて、建築に込められた複数の用途がどう結びつくかが分かる。
また、この開館だけで中央アジア全体の美術環境が変わったとは言えない。出典は、地域の作家の参加規模や他機関との連携を伝えていない。それでも、地域の歴史的な美術を現代作品とともに提示し、制作滞在も受け止める常設の場所ができたことは、交流を継続させる条件の一つになり得る。
日本から見ると、比べたいのは建物より役割
日本からこの開館を読む際、安藤忠雄の名が登場する文化施設計画と、CCA Tashkentそのものは分けて捉えたい。後者の改修設計はStudio KOであり、その特徴は、旧産業施設に展示、学習、制作滞在の空間をまとめた点にある。建築家の知名度だけでは見えない、施設の使われ方の設計だ。
出典だけでは、日本とウズベキスタンの制度や運営費を比較することはできない。一方、同国初の常設機関が何を備えて出発したかは読める。展示室だけではなく、読む場所と、つくる人の居場所。タシケントで見えたのは、現代美術の発表と、それを支える活動を同じ建物に置こうとする動きである。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年9月17日(木))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 論評Artforum2026-09-18
Centre for Contemporary Arts Tashkent Opens in Uzbekistanartforum.com ↗
“The show features contemporary works alongside historic Uzbek and Karakalpak art from the collection of the State Museum of Arts of Karakalpakstan.”
この展覧会では、現代作品とともに、カラカルパクスタン国立美術館の所蔵する歴史的なウズベク美術とカラカルパク美術が展示される。
確認日 2026-10-18


