1–3 YEARS · シーンと言説の潮流ローカル・シーン復権著作権の再発明

音楽が届く先に、対価の通り道

UAE初の音楽著作権管理団体、仏SACEMと代表契約

UAE初の集中管理団体EMRAが、フランスのSACEMと代表契約を結んだ。2026年2月下旬に報じられたのは、国内外の音楽使用料を集め、創作者へ分配する仕組みの整備である。文化拠点としての存在感だけでなく、そこで使われる音楽の対価を誰が回収するか。その制度に目を向ける動きが見える。

クリーム色の背景に、レコードと、コバルトブルーの線で結ばれた小さな円を配置し、音楽の対価が巡る経路を表した抽象図。

文化拠点に、権利を集める仕組み

2026年2月24日前後、アラブ首長国連邦(UAE)の音楽を支える制度に、新しい接続が生まれた。翌25日付のDigital Music Newsによると、フランスの著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく管理団体SACEMは、Emirates Arts & Music Rights Association(EMRA)との代表契約締結を発表した。EMRAは、同国初の非営利の集中管理集中管理しゅうちゅうかんりCollective rights management多数の権利者に代わり、管理団体が作品の利用許諾や使用料の回収・分配をまとめて行う仕組み。権利者と利用者の個別交渉の負担を減らす役割を持つ。用語集で詳しく団体である。

兆しは、海外の大きな団体が湾岸地域へ進出したことだけではない。音楽が使われる場所と、その対価を創作者へ戻す仕組みを、現地の組織を通じて結び直そうとしている点にある。記事は、UAEの創作者が初めて、国内外で使用料を回収・分配する集中管理集中管理しゅうちゅうかんりCollective rights management多数の権利者に代わり、管理団体が作品の利用許諾や使用料の回収・分配をまとめて行う仕組み。権利者と利用者の個別交渉の負担を減らす役割を持つ。用語集で詳しくの仕組みを利用できるようになると伝える。

ただし、契約の発表と、分配の成果は同じではない。回収額や分配時期、対象となる利用の細目は記事に示されていない。ここで確認できるのは、創作者に公正な対価を届けるための制度づくりが、国際的な連携を伴って進んでいるという事実だ。

22万4470の権利者を支える網との接続

背景には、SACEMがすでに湾岸地域で活動してきた蓄積がある。記事によれば、同団体が扱うアラビア語の管理楽曲群は世界最大である。今回の協力を、SACEMのセシル・ラプ=ヴェベール最高経営責任者は、長年の対話の結果と説明している。突然の参入というより、既存の関係を制度として形にする動きと読める。

規模を示す数字もある。SACEMが著作者の権利を代表する作詞家、作曲家、音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくは22万4470。同団体は会員のため、約200の地域でストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくサービスから音楽使用料音楽使用料おんがくしようりょうMusic royalties音楽の利用に伴い、権利を持つ側へ支払われる対価。会場が利用許諾のために払うお金と、個々の作り手に分配される金額は、分けて捉える必要がある。用語集で詳しくを回収している。これはEMRAの回収実績ではない。現地の新しい管理団体が接続する相手に、どのような国際的基盤があるかを示す数字である。

UAEではさらに、SACEMが国際レコード産業連盟(IFPI)、英国のPPLと協力し、著作者の権利と著作隣接権著作隣接権ちょさくりんせつけんNeighboring rights歌唱や演奏を行う実演家、録音物を制作する者などに認められる権利。詞や曲の著作権とは別で、保護や対価の対象となる利用は国・地域によって異なる。用語集で詳しくの双方について、使用料回収のための独自の枠組みを設計しているという。楽曲を作る側の権利と、実演や録音に関わる側の権利。別の層に属する権利を、同じ地域の制度整備の中で扱おうとしている。

記事はまた、EMRAの非営利という性格に触れ、管理手数料は規律の下に置かれ、創作者向けのサービスへ再投資されるとしている。ただし、料率や運営費の具体的な内訳はない。非営利であることの意義は示される一方、運営の効率や分配の公平さは、今後の実務で確かめられる部分として残る。

次に問われるのは、契約から分配への距離

この時点から1〜3年を見渡すなら、注目点は契約の数より、回収と分配がどこまで機能するかにある。国内で使われた音楽の対価と、国外で使われた現地の音楽の対価。その双方を扱う仕組みが動けば、地域の創作活動を支える収入経路が増える可能性がある。ただし、記事には収入増を見積もれる数字はない。

著作者の権利と著作隣接権著作隣接権ちょさくりんせつけんNeighboring rights歌唱や演奏を行う実演家、録音物を制作する者などに認められる権利。詞や曲の著作権とは別で、保護や対価の対象となる利用は国・地域によって異なる。用語集で詳しくを並行して扱う枠組みも、広がりを考える手掛かりになる。異なる権利者や組織の協力を、地域の実情に合わせて設計する試みだからだ。ほかの国への導入や共通制度への発展が決まったわけではない。まずUAEで、国際的な回収網と現地組織がどう役割を分けるのか。その運用が、同様の課題を持つ地域の参考になる可能性がある。

日本からは、作品の移動と対価の移動を分けて見る

日本からこのニュースを読む際、国内制度との成熟度の比較は慎重でありたい。出典は日本の状況を扱っておらず、回収効率の優劣も比べられない。明確なのは、UAEで「初の集中管理集中管理しゅうちゅうかんりCollective rights management多数の権利者に代わり、管理団体が作品の利用許諾や使用料の回収・分配をまとめて行う仕組み。権利者と利用者の個別交渉の負担を減らす役割を持つ。用語集で詳しく団体」を軸に、国内外の権利処理を接続する段階が報じられたことだ。国ごとに、音楽を届ける環境と対価を戻す制度の整備は、同じ速度で進むとは限らない。

海外の音楽シーンを見る視点にも、もう一つの層が加わる。作品が国境を越えて聴かれることと、その利用が収入として創作者へ戻ることは別の問題である。今回見えるのは、文化拠点という構想の内側に、回収、分配、管理費という地味な実務を置く動きだ。地域の音楽の広がりを、発信力だけでなく、創作を支える制度から捉える手掛かりである。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年2月24日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Digital Music News2026-02-25

    SACEM Signs Agreement with the EMRAdigitalmusicnews.com ↗

    “Creators in the UAE will now, for the first time, benefit from a collective rights management system that ensures royalties are fairly collected and distributed, both locally and internationally.”

    UAEの創作者は今回初めて、国内外で使用料を公正に回収・分配する集中管理の仕組みを利用できるようになる。

    確認日 2026-10-18