1–3 YEARS · シーンと言説の潮流カタログ・ゴールドラッシュ音楽の金融化
発行額だけでは見えない再編
音楽印税の証券化、発行減予測の背後で進む権利の集約
音楽印税を裏づけにした債券は、発行額が減れば市場も縮むのだろうか。2026年5月中旬、格付け会社KBRAは年間発行額の約25%減を予測した。主因に挙げたのは収益の悪化ではなく、発行企業の統合だ。楽曲の収益力と、その権利をどこで保有し、どう資金に変えるか。その違いが見え始めている。

発行減の理由は、権利の移動にある
音楽の権利が金融資産になる。その動きを測る数字に、読み方の変化が生じている。2026年5月14日公表の報告書で、格付け会社KBRAは、音楽印税を裏づけとする資産担保証券資産担保証券しさんたんぽしょうけんAsset-backed securities資産から生じる収入などを裏付けとして発行する証券。音楽分野では権利収益に関わる資金調達で登場するが、株式の発行や権利そのものの売却とは仕組みが異なる。用語集で詳しくの年間発行額が、2026年に約25%減ると予測した。過去2年はそれぞれ33億ドル超。予測は25億ドル強である。
主因とされたのは、発行企業の統合だ。権利が買収され、大きな企業の内側へ移れば、同じ楽曲が収益を生み続けていても、独立した証券化案件として市場に現れるとは限らない。発行額の減少と、音楽の価値の低下は、分けて読む必要がある。
兆しは、権利の売買だけではない。誰が権利を持つかによって、その収益を資金に変える経路も変わることだ。音楽の金融化を追う視点が、取引の大きさから、保有主体と資金調達資金調達しきんちょうたつFinancing事業を運営し、発展させるために必要な資金を確保すること。融資、出資、助成などでは返済義務や契約条件が異なるため、方法を区別して読む必要がある。用語集で詳しくの仕組みへ広がっている。
129億ドルの蓄積と、統合の波
資産担保証券資産担保証券しさんたんぽしょうけんAsset-backed securities資産から生じる収入などを裏付けとして発行する証券。音楽分野では権利収益に関わる資金調達で登場するが、株式の発行や権利そのものの売却とは仕組みが異なる。用語集で詳しくは、将来の収入を返済原資として投資家から資金を集める仕組みだ。音楽の場合は印税などの収入が裏づけになる。KBRAが2020年以降に格付けした音楽印税担保債券は、累計129億ドル超。2023年時点の40億ドル超から、3倍以上に増えている。ただし、これは同社の格付け対象の累計であり、音楽権利市場全体の規模ではない。
その蓄積の先で、発行企業の組み替えが進む。BMGとConcordは4月28日に合併を発表した。Concordは2025年7月、17億6500万ドルの証券化取引を完了している。Primary Wave Musicも3月、Kobaltの買収で最終合意したと発表。完了予定は2026年第3四半期であり、この時点では成立済みではない。
より直接的なのが、Sony Music Publishing音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくによるRecognition Music Groupの全カタログ取得カタログ取得カタログシュトクCatalogue acquisitionすでに発表された楽曲などの作品群について、権利や事業上の持ち分を取得する取引。何を取得するかは契約ごとに異なり、作品に関わるすべての権利を得るとは限らない。用語集で詳しくの合意だ。5月11日に発表された。売り手のBlackstoneは、その資産を裏づけに計18億4200万ドルの証券化取引を実施していた。出典記事は、権利がSony傘下に入れば、その発行分は実質的に音楽の証券化市場から移ると説明する。楽曲が消えるのではない。資金調達資金調達しきんちょうたつFinancing事業を運営し、発展させるために必要な資金を確保すること。融資、出資、助成などでは返済義務や契約条件が異なるため、方法を区別して読む必要がある。用語集で詳しく上の居場所が変わるのである。
KBRAは、統合によって担保となる楽曲群の分散や管理規模の拡大が進む可能性も指摘する。発行件数や金額には下押しでも、保有資産の構成や管理には別の作用があり得る。統合の影響は一方向ではない。
裾野は広がる。収益の点検も続く
発行減の予測と並行して、参加企業は増えている。KBRAの格付け対象となる発行主体は、2023年の9から2026年には18へ倍増した。同社は、少数の企業による繰り返しの発行への依存が薄まり、より安定した案件の流れを支えていると評価する。既存企業の統合と、新規参入による裾野の拡大が同時に起きている。
ただし、参加者の増加だけで収益の安全性は決まらない。返済に対してどれほど収入の余裕があるかを示す債務返済余裕率債務返済余裕率さいむへんさいよゆうりつDebt service coverage ratio返済に使える収入が、元本と利息の支払いをどの程度上回るかを示す指標。音楽の証券化では、印税収入による返済余力を見る手がかりになる。用語集で詳しくは、全体として比較的安定している一方、一部の取引や楽曲群では想定を下回る動きもある。平均値は、主に借り換え条件や発行時点の水準を背景に低下傾向だという。格付けは概ね安定しているが、個別の点検は残る。
この時点から数年を見渡すなら、焦点は発行額が再び増えるかだけではない。権利が大きな企業に集まる一方、新しい発行主体が証券化を利用する構図が、どこまで続くかである。発行企業の統合と新規参入の釣り合いによって、市場に表れる金額は変わり得る。KBRAの予測も、音楽収益そのものの一律な後退を示したものではない。
日本から見ると、権利と資金を分けて読む
日本からこの動きを読む際、比較の限界はある。出典には日本国内の証券化規模や発行主体の統計がなく、同じ仕組みが同じ速度で広がっているとは確認できない。海外の発行額を、そのまま日本の音楽市場の見通しへ置き換えることはできない。
それでも見えるのは、カタログ取得カタログ取得カタログシュトクCatalogue acquisitionすでに発表された楽曲などの作品群について、権利や事業上の持ち分を取得する取引。何を取得するかは契約ごとに異なり、作品に関わるすべての権利を得るとは限らない。用語集で詳しくの意味が買値だけでは決まらないことだ。取得後に誰が収益を管理し、どの経路で資金を調達するかによって、同じ権利の金融上の姿は変わる。2026年5月中旬にあったのは、発行減という数字の背後で、音楽権利の保有と資金調達資金調達しきんちょうたつFinancing事業を運営し、発展させるために必要な資金を確保すること。融資、出資、助成などでは返済義務や契約条件が異なるため、方法を区別して読む必要がある。用語集で詳しくが組み替わっていく兆しである。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年5月18日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-05-19
“Although annual issuance volumes have remained somewhat volatile, the sector has demonstrated increasing consistency as a broader issuer base has reduced reliance on a small number of repeat issuers and supported a steadier transaction pipeline”
年間発行額にはなお多少の変動があるものの、発行主体の裾野が広がり、少数の反復的な発行企業への依存が減り、より安定した案件の流れを支えることで、この分野は一貫性を増している。
確認日 2026-10-18


