1–3 YEARS · シーンと言説の潮流カタログ・ゴールドラッシュ著作権の再発明
古い契約の境界線が揺れている
米楽曲の権利回収、海外分を巡り大手出版社が最高裁へ
米国の作詞・作曲家が古い契約から権利を取り戻すとき、その範囲は海外にも及ぶのか。大手音楽出版社が、作者側を支持した判決の見直しを最高裁に求めた。2026年6月18日時点で見えたのは、長年の業界慣行を問い直し、海外収入を巡る交渉力を作者へ戻そうとする動きである。ただし、最高裁が審理するかは未定だ。

取り戻す権利が、国境を越える
古い契約から楽曲の権利を取り戻せても、海外の収入は出版社に残る。その長年の前提が、米国の裁判で問われている。2026年6月18日付のCMUによると、ソニー・ミュージックパブリッシング、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング、ワーナー・チャペルとBMGが、ヴェッター対レスニック事件の判決を覆すよう米最高裁に申し立てた。
争点は、作者が譲渡した権利を一定期間後に回収できる「移転終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しく」の地理的な範囲だ。ルイジアナ州の連邦地裁と第5巡回区控訴裁判所は、ヴェッター側の、世界全体の権利を回収できるという主張を認めた。米国内だけとされてきた回収の範囲を広げる判断である。
ここにある兆しは、過去の契約を巡る紛争が、海外収入の帰属を組み替える問題へ広がっていることだ。大手各社は、上訴を主導するため、対象曲『Double Shot (Of My Baby’s Love)』についてレスニックが保有するとされた持ち分を取得した。個別の曲を超えた影響を、出版社側も見込んでいる。
35年後の出口と、外国法の境界
CMUの説明では、米国法は作者が音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの契約で譲渡した権利を35年後に回収できると定める。1978年より前の作品では56年だ。制度の背景には、100年を超えることもある長期契約から作者を守りつつ、出版社にも投資を回収する期間を認めるという議会の意図がある。
ただし、法律には「外国法に基づいて生じる権利」には移転終了が及ばないという制限がある。そこで鍵になるのがベルヌ条約ベルヌ条約Berne Convention著作物を国境を越えて保護するための国際条約。各国の著作権制度をつなぐ一方、米国での契約終了が海外の権利にどう及ぶかは、本件で争われた論点である。用語集で詳しくだ。各国の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく制度をつなぎ、国外でも作品の保護を受けられるようにする枠組みを、どう捉えるかが争われている。
出版社側は、同じ曲でも各国の法律に基づく別々の権利が存在するため、米国での回収は外国の権利に届かないと主張する。対してヴェッター側は、米国法から生じた単一の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくを国外でも行使できるのだと主張した。これは当事者が争う法解釈であり、世界の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくの仕組みが一つに確定したという話ではない。
大手各社は判決が古い契約に「混乱」を招くと訴える。一方、ヴェッター側の弁護士ティム・カッペルは、その主張は曖昧で裏付けがないと反論した。契約の安定性を重く見る側と、作者に再交渉の余地を戻そうとする側。その対立が、条文の読み方を通じて表に出ている。
海外収入が、再交渉の焦点になる
この時点から数年を見渡すと、焦点は最高裁が審理を受け入れるか、そして下級審の判断がどう扱われるかにある。提出されたのは審理を求める申立てであり、最高裁の判断が出たわけではない。世界全体の権利回収が、すべての作者に一律に確定したともいえない。
それでも、判決が維持されれば、回収対象となる曲について出版社が見込んでいた海外収入にも影響し得る。古い楽曲群の価値を考える際、どの地域の収入が、いつまで契約に残るかという条件の重みが増す可能性がある。新しい収益源の登場ではなく、既存の収入を誰が受け取るかの見直しだ。
米国外の作者への影響も未整理である。出版社側は、単一の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくという考え方では、外国の作者が米国内の権利だけを回収する道が損なわれると主張する。カッペルは、その道はなお残ると反論した。米国の作者の海外権利と、外国の作者の米国権利。似て見える二つの問題を、同じ結論で処理できるかも問われている。
日本から見る、契約と収入の地図
日本から読む際には、米国法に由来する回収の仕組みと、日本で結んだ契約を分けて考える必要がある。出典が扱うのは米国の制度とその国際的な射程であり、日本の作者にも同じ年数で同じ回収が認められると示したものではない。外国の作者を巡る問題自体、当事者の見解が分かれている。
一方、読み取れる変化は明確だ。世界で利用される楽曲でも、契約上の権利を国ごとに捉えるか、一つにつながるものと捉えるかで、作者の交渉余地は変わる。米国だけの出口と考えられてきた制度が、海外分を含む契約を問い直す入口になっている。2026年6月時点の光は、その境界が実際に争われ始めていることにある。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年6月18日(木))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次CMU(Complete Music Update)2026-06-18
US Supreme Court needs to stop termination rights “chaos”, say majorscompletemusicupdate.com ↗
“However, music industry convention says they can only reclaim rights within the US, meaning all non-US rights stay with the publisher.”
しかし音楽業界の慣行では、回収できるのは米国内の権利だけであり、米国外の権利はすべて出版社に残るとされている。
確認日 2026-10-18


