1–3 YEARS · シーンと言説の潮流K-POP以後

歌と振付の先にある音の接点

Kポップの硬質化、アリーナからクラブへ接点を広げる

KATSEYEやBLACKPINKの楽曲に、硬質なダンスビートが入り込んでいる。Chartmetricの記事が捉えたのは、音色の流行だけではない。海外公演での高揚感、短い動画での注意の獲得、クラブの作り手との協働が重なる場所で、Kポップの観客と電子音楽の接点が試されている。再生数と現場の動きから、その輪郭を読む。

夜の大規模公演会場の後方通路で、青白い光と薄い煙に包まれた客席を、後ろ姿の二人が見渡している。

アリーナに入り込む硬いビート

Kポップの変化が、歌声よりもビートに現れている。Chartmetricが報じたKATSEYEKATSEYESpotify で探すApple Musicのロンドン公演では、「PINKY UP」と、レイヴ風に再構成された「Gnarly」が演奏された。Kポップに着想を得たグローバル・ガールグループの公演に、硬質な電子音楽が入り込む。その接点は、楽曲の配信だけでなく、大きな会場で身体を動かす経験にある。

同記事はBLACKPINKBLACKPINKSpotify で探すApple Musicの「JUMP」、LE SSERAFIMLE SSERAFIMSpotify で探すApple Musicの「CELEBRATION」、ILLITILLITSpotify で探すApple Musicの「It’s Me」、IVEIVESpotify で探すApple Musicの「BANG BANG」も並べる。ただし、すべてを同じジャンルとみなすのは早い。記事にはハードテクノテクノTechnoデトロイトで生まれ、ベルリンなどへ広がった電子ダンス音楽。ドイツのクラブ文化を語る中心的な存在だが、その受容の歴史と発祥地の歴史は区別して捉えられる。用語集で詳しく、ハードスタイル、ガバという異なる呼び名が登場する。共通するのは、従来の華やかなダンス・ポップから、より硬く、荒い質感へ向かう動きだ。

ここで見える兆しは、Kポップがクラブ音楽に置き換わることではない。振付や視覚表現を軸にした制作の仕組みが、別の音楽圏の強度を取り込み始めたこと。輸出されるのが完成した楽曲やグループだけでなく、異なる観客をつなぐライブの形式へ広がる可能性がある。

再生数と海外公演が重なる場所

なぜ、この音なのか。LE SSERAFIMLE SSERAFIMSpotify で探すApple Musicらの広報を担当するDavid Limは、ダンスを重視してきたKポップの音作りに飽和感があると説明する。硬いビートと攻撃的なリズムは、鋭く強度の高い振付を見せやすいという。音の変化は、パフォーマンスの設計とも結びついている。

Limは背景として、Charli xcxCharli xcxSpotify で探すApple Musicの「Brat」や周辺のアーティストによる硬質なサウンドの広がりを挙げ、2024年を転機と見る。同時に重視するのが、パンデミック後に増えたKポップの海外公演だ。フェスティバルやスタジアムでは、観客が一斉に跳ねる瞬間をつくる曲が意味を持つ。これは関係者の見立てであり、記事は因果関係を検証した調査を示してはいない。

数字は、その接点の大きさを示す。記事が記す9月下旬時点で、「PINKY UP」のSpotify再生数は2億3570万回、TikTokでの視聴数は18億8000万回。「It’s Me」はSpotifyで1億6200万回に達し、収録EPのほかの曲の10倍超だった。ただし、ストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくの再生回数と動画の視聴数は別の指標であり、聴き手の人数でもない。音の硬さだけが伸びを生んだとも断定できない。

借りた音から、作り手同士の往来へ

この先1〜3年を見るうえで、音色の模倣以上に手がかりとなるのは協働だ。記事は、horsegiirLhorsegiirLSpotify で探すApple Musicの出演するアフターパーティーにBLACKPINKBLACKPINKSpotify で探すApple MusicのJENNIEJENNIESpotify で探すApple Musicが登場したこと、Sara LandrySara LandrySpotify で探すApple Musicが「CELEBRATION」をリミックスしたことを紹介する。クラブの作り手がKポップの曲を扱い、アイドルがクラブ側の場に現れる。往来はすでに具体的な形を取り始めている。

一方、規模には差がある。記事中の10月7日時点で、LandryのリミックスはTikTokで140万回視聴、Spotifyで53万6100回再生とされる。ヒット曲の数字と、そのまま同列には置けない。接点が生まれたことと、双方の観客が継続的に行き来することは別だ。

今後は、こうしたハイブリッド・ジャンルハイブリッド・ジャンルHybrid genres異なる音楽的伝統や制作技法の組み合わせから形になるジャンル。元の要素を残しつつ、新たな音のまとまりや聴き手のつながりを生む点に着目する呼び方。用語集で詳しくが一度きりの話題にとどまるのか、共演やリミックスを重ねる関係になるのかが焦点となる。Limも、企業主導の組み合わせに見える協働と、参加するアーティストに自然な協働を区別している。記事の結びでは、世界的なチャートでの成功はなお未知数とされる。見えているのは勝ち筋ではなく、新しい入口だ。

日本からは、ジャンル名より接点を見る

日本との違いとして記事から確認できるのは、観測の舞台がロンドンのアリーナや海外のフェスティバル周辺に置かれている点だ。日本の公演や聴取動向を比較するデータはなく、同じ変化が国内でも進んでいるとは言えない。また、若い観客にとってテクノテクノTechnoデトロイトで生まれ、ベルリンなどへ広がった電子ダンス音楽。ドイツのクラブ文化を語る中心的な存在だが、その受容の歴史と発祥地の歴史は区別して捉えられる。用語集で詳しくへの入口になるという指摘も、現段階ではLimの見方である。

それでも、日本からKポップの次の輸出モデルを考える際、読むべき変化はある。育成されたグループを海外へ届けるだけでなく、その土地や別のシーンの作り手と接続し、公演の体験を組み替える動きだ。硬いビートは、その接続を担う一つの素材になっている。Kポップの境界が消えたのではない。境界を越えて出会う場が増えつつある。

EVIDENCE出典

  1. 一次Chartmetric(How Music Charts)Wed, 07 Oc

    Inside K-Pop's Turn Toward Electronic Dance Musichmc.chartmetric.com ↗

    “The real hook here is seeing the kind of doors it might open for them on the global dance music stage.”

    ここで本当に興味深いのは、世界のダンス音楽の舞台で、彼らにどんな扉が開かれる可能性があるかを見ることだ。

    確認日 2026-10-18

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