1–3 YEARS · シーンと言説の潮流音楽×ゲーム著作権の再発明

遊びを届ける経路にも音楽の権利

ゲーム収録とは別の音楽権利、英国PRSがSteam提訴

ゲームに楽曲を収録する許可と、そのゲームをダウンロードで届ける許可は同じではない。英国の音楽著作権管理団体PRSがSteamを提訴した背景には、権利を分けて管理する英国の仕組みがある。2026年3月の報道に見えるのは、ゲーム配信基盤にも音楽利用の責任を問う動きだ。

ゲームを象徴するコントローラーと音符を、別々の経路でつなぐ抽象的な平面イラスト。クリーム色の背景に青と赤の線が重なる。

ゲームに入れる許可、その先の許可

ゲームのために音楽の使用許可を得ても、そのゲームを届ける段階の権利まで処理できているとは限らない。2026年3月10日付のCMUが報じた英国PRSによるSteamへの提訴は、この境界を争点としている。対象はゲーム内の楽曲選びではなく、音楽を含むゲームを配信する基盤だ。

PRSは、米Valve Corporationが運営するSteamについて、会員の楽曲を含むゲームを提供するために必要なライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくを取得していないと主張する。法的書面によれば、PRSは長年にわたり許諾に向けて働きかけたが、Valveから適切な対応を得られなかったという。著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくが確定したという報道ではなく、管理団体側が訴えを起こした段階の話である。

ここにある兆しは、ゲーム会社による楽曲の使用許諾だけでは、配信経路全体の権利処理を説明できないという問題の表面化だ。作品をつくる契約と、作品を利用者へ届ける契約。その間にある役割分担が問われている。

英国の権利分担と、巨大な売り場

CMUの説明では、英国で作詞家や作曲家がPRSに加入すると、演奏や公衆への伝達、利用可能化に関する権利を同団体へ譲渡する。その後に音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくと契約する場合、出版社が扱うのは複製や頒布、翻案など、別の権利である。PRSは演奏権管理団体演奏権管理団体えんそうけんかんりだんたいPerformance Rights Organization楽曲の演奏や放送などに関わる権利を管理し、利用者から使用料を徴収して権利者へ分配する団体。PROと略され、扱う権利や利用の範囲は制度や団体によって異なる。用語集で詳しくだが、その管理範囲は会場で音楽を演奏する場面だけではない。

音楽をゲームに組み込む行為は、映像作品への使用と同様にシンクシンクSync映画や広告などの映像に音楽を合わせて使用すること。楽曲が物語や場面と結びつき、発売時とは異なる観客へ届く接点になり得る。使用には関係する権利の確認が伴う。用語集で詳しくとして扱われる。ゲーム会社が音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくと結ぶこの契約では、楽曲を複製して収録する許可を得る。一方、完成したゲームをダウンロードやストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくで提供する際には、別の「利用可能化」の権利が関わる。記事によれば、この部分は出版社ではなくPRSが管理している。

つまり、収録時に料金を支払ったことと、配信時に必要な権利が許諾されていることは別問題だ。CMUは『EA SPORTS FC』『Forza Horizon』『Grand Theft Auto』を説明の例に挙げている。ただし、記事には個々の契約条件や請求額は示されておらず、すべてのゲームについて同じ契約上の欠落が確認されたとまでは読めない。

この区別が大きな意味を持つのは、Steamの規模ゆえでもある。CMUはPCゲームの流通・販売市場で約75%を占め、月間アクティブユーザーが1億4700万人いると記す。利用者はゲームを購入して端末へダウンロードするほか、別の機器へのストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくやプレイのライブ配信ライブ配信Livestream公演などの映像と音声を、進行に合わせてインターネットで届ける方式。後日の見逃し視聴や映像の保存は別の条件であり、生中継だけでは保証されない。用語集で詳しくもできる。PRSは、2003年のサービス開始以来、Valveは同団体が管理する権利の許諾を得ていないと主張している。

配信基盤との交渉はどこへ広がる

この時点から先の1〜3年を見るうえで焦点になるのは、ゲーム制作時の音楽契約と、配信サービス側の許諾をどう接続するかだ。PRSは過去分と今後の利用の双方を対象に必要な許諾を求め、Valveが前向きに協議して取得しない限り、訴訟を進めるとしている。争点は将来の配信だけでなく、すでに行われた利用にも及んでいる。

協議や訴訟を通じて配信側の負担範囲が具体化すれば、他のゲーム配信サービスでも契約の分担を確認する材料になる可能性がある。ただし、出典は合意や判決を伝えていない。新たな料金体系ができるとも、ゲーム会社の負担が一律に増えるとも、現段階では言えない。見えているのは、配信基盤も音楽の許諾交渉の相手となる動きだ。

日本から見る、国境と契約のずれ

日本から読む際に重要なのは、配信サービスの本拠地と、利用される地域の権利制度を分けることだ。CMUは、Valveが拠点を置く米国では、少なくとも音声ダウンロードの権利上の扱いが英国と異なり、音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの裁量も大きいと説明する。それでも、英国で提供されるサービスとPRS管理楽曲には、米国の仕組みをそのまま当てはめられないとしている。

出典は日本の制度や契約実務との比較までは示していないため、日本でも同じ許諾が必要だとは結論づけられない。読み取れるのは、世界共通に見えるゲームの売り場にも、地域ごとの権利管理が重なるということだ。音楽とゲームの接点は作品の中だけにない。その作品が届く経路にも、作り手への対価をめぐる交渉の場所がある。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月9日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次CMU(Complete Music Update)2026-03-10

    PRS sues gaming platform giant Steam for copyright infringementcompletemusicupdate.com ↗

    “However, when a game is made available to download or stream, that exploits the separate ‘making available’ element of the copyright.”

    しかし、ゲームをダウンロードやストリーミングで提供するときには、著作権のうち別の要素である「利用可能化」の権利を利用することになる。

    確認日 2026-10-18