1–3 YEARS · シーンと言説の潮流ポスト・アルゴリズム
つながりは、見せる成果の外に
MySpace再始動の予告に浮かぶ、音楽を自分で選ぶ居場所
MySpaceの再始動計画が、かつての利用者の記憶を呼び起こしている。日程も製品の詳細も未発表だが、寄せられる期待には、音楽や個人ページを自分で選び、人とつながりたいという願いがある。2026年8月9日時点の報道から見えるのは、昔のサービスへの郷愁と、いまのフィードへの違和感が重なる場所だ。

戻ってほしいのは、サイトよりも感覚
MySpaceの再始動が予告されている。所有者のティムとクリス・ヴァンダーフック兄弟は計画を語っているが、日程も製品の詳細も公表していない。2026年8月9日付のBBC記事に対し、所有企業Viantの広報担当者は、現時点で共有できる更新情報はないと回答した。復活はまだ、利用できるサービスではなく約束の段階にある。
それでも反応が生まれている。アトランタで不動産業に従事する31歳のモンティカ・ホーキンスが覚えているのは、加工していない写真を載せても、とがめられない場所だ。TikTokで90万人を超えるフォロワーを持つメリッサ・クリスティンは、かつての個人ページを「インターネットの自分だけの片隅」と振り返る。
ここで望まれているのは、昔の画面をそのまま取り戻すことだけではない。クリスティンは、アルゴリズムや支払いによって露出が左右される仕組みを避け、成果を見せることより個人的なつながりを重視してほしいと語る。人に評価されるための発信と、人に会うための発信。その違いが、再始動への期待を通じて言葉になっている。
音楽のある個人ページ、その強さと負担
2003年に始まったMySpaceは、音楽と自己表現が交わる場所だった。アークティック・モンキーズアークティック・モンキーズ Arctic MonkeysSpotify で探すApple Music、アデルアデル AdeleSpotify で探すApple Music、ニッキー・ミナージュニッキー・ミナージュ Nicki MinajSpotify で探すApple Musicが初期の聴き手を見つける助けにもなった。プロフィールで流す曲は、単なる背景音ではない。自分は何を聴く人なのかを、訪れた相手に伝える選択でもあった。
一方、高度に装飾されたページ、自動再生の音楽、情報の多い配置は、使いづらさにもつながった。より簡潔な設計のFacebookへ利用者が移り、MySpaceは改修と所有者の交代を経て、主流の利用から遠ざかった。音楽や創造性が強みだったという記憶と、その表現を支える操作が負担だったという歴史は、切り離せない。
マーケティング研究者のアレクサ・フォックスは、音楽、創造性、個人的な表現にはなお訴求力があり得る一方、コードを書く手間を減らした、使いやすい設計が必要だと見る。ソーシャルメディア戦略家のアレックス・ミルズは、アルゴリズムのないフィードへの郷愁そのものに留保を付ける。人々はフィードを不要としているのではなく、怒りを誘う投稿に最適化されたものより、よいフィードを求めているという指摘だ。
大きさより、選べる余地を残せるか
この時点から先の1〜3年を考えるうえで、注目点は大手への対抗規模だけではない。記事に登場するマーケティング担当者のケビン・マクラリーは、特定の層に向けた小さなサービスでも持続可能になり得ると述べる。プロフィールの曲、2000年代をテーマにしたフェスティバルや商品は、その構想として挙げられたもので、実施が決まった企画ではない。
若い世代が古いデジタルカメラやMP3プレーヤーに関心を示しているという彼の観察は、元利用者以外にも届く可能性を示す。ただし、それがMySpaceへの登録や継続利用につながる証拠は、記事にはない。過去の見た目を好むことと、その場所で人間関係を築くことは別の行為である。
音楽の発見にも同じ区別がある。レコメンドレコメンドRecommendation利用者の関心に合うと判断した投稿や楽曲を、サービス側が選んで提示する仕組み。何を手掛かりに選び、本人がどこまで調整できるかが、体験を左右する。用語集で詳しくをなくすだけで、人が選ぶ音楽が広がるとは限らない。友人のプロフィールに置かれた曲のように、誰かの選択と、その人への関心が結びつく導線を作れるか。個人の選曲を見せ合うキュレーションキュレーションCuration作品を選び、調査し、配置や解説を通じて観客との関係をつくる実践。美術館では、何をどの視点から伝えるかという判断と、その責任も含んでいる。用語集で詳しくの余地が、再び意味を持つ可能性がある。フォックスが、ショート動画ショート動画Short-form video短い時間で視聴できる動画形式。音源や映像を組み合わせた投稿が楽曲との接点になる一方、動画の再生と楽曲そのものの聴取は異なる行動である。用語集で詳しくなど既存サービスの得意な形式を中心に据えないよう論じるのも、違いをどこに置くかという問題だ。
日本から見ると、復活と願望は別にある
日本から読む際には、まず語られている経験の場所を確かめたい。この記事の中心は、米国の元利用者と専門家の声だ。日本の利用者数や音楽発見の方法を比較するデータはなく、同じ郷愁や需要があるとは言えない。MySpaceの再始動が、日本の聴取行動を変えると結論づける材料もない。
それでも、サービスの復活と、そこに託される願望を分けると読み取れるものがある。細かな製品仕様が示される前から語られているのは、自分の場所を持ち、好きな音楽を置き、反応の大きさだけによらず人とつながる感覚だ。人が選ぶ音楽の復権は、まだ起きた事実ではない。そのための居場所を求める声が、再始動の予告によって見える形になっている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年8月9日(日))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次BBC Sound of2026-08-09
Raw images, no filters: Why MySpace fans want it back as relaunch hintedbbc.co.uk ↗
“Its owners, brothers Tim and Chris Vanderhook, say they plan to relaunch the platform, though no date or product details have been announced.”
所有者であるティムとクリス・ヴァンダーフック兄弟は、このプラットフォームを再始動する計画だと述べている。ただし、日程や製品の詳細は発表されていない。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- アークティック・モンキーズSpotify で探すApple Music
- アデルSpotify で探すApple Music
- ニッキー・ミナージュSpotify で探すApple Music


