NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動ストリーミング2.0フィジカル回帰
聴く量と、手元に置く価値の分岐
英国の音楽再生は伸び鈍化、レコード販売は18年連続増
英国の2025年の音楽ストリーミングは2103億回に達したが、伸び率は前年の半分に落ちた。一方、レコード販売は13.3%増。2026年初めに示された数字には、再生の量が拡大し続ける市場と、作品を所有する需要が並走する姿がある。ただし、消費量の記録と売上高の成長は、分けて読む必要がある。

再生の最高記録、その内側の減速
英国の音楽は、かつてないほど再生されている。ただし、その増え方は緩やかになった。2026年初めに報じられた英国の音楽業界団体BPIの年間集計によると、2025年の音楽ストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくは2103億回。初めて2000億回を超えた一方、前年比の伸び率は5.5%だった。
前年の伸び率は11.0%。増加した再生回数で見ても、2024年の200億回から2025年は107億回へ縮小した。再生が減ったわけではない。大きくなった市場が、以前と同じ速度では膨らまなくなっている。ここにある兆しは、利用の後退ではなく、量の成長が鈍るなかで音楽の価値をどこに見いだすかという問いだ。
同じ集計では、レコード販売が13.3%増の760万枚となり、18年連続で増加した。圧倒的な規模の配信と、伸び続ける所有の需要。片方がもう片方を置き換えるというより、異なる関わり方が並走している。
89.3%という比率の読み方
BPIによると、英国の音楽消費に占めるストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくの割合は過去最高の89.3%だった。ただし、これは再生回数と販売枚数をそのまま足した比率ではない。異なる形式を共通の単位に置き換える「アルバム換算売上アルバム換算売上アルバムかんざんうりあげAlbum Equivalent Sales楽曲の再生や単曲購入を、一定の基準でアルバムの販売枚数に換算する指標。異なる消費形式を比較できるが、実際の販売枚数や売上金額とは異なる。用語集で詳しく」に基づく数字である。
有料サービスでは楽曲1000回の再生、広告付きの無料サービスでは6000回の再生を、アルバム1枚相当とする。同じアルバムに収録された楽曲の販売・ダウンロードは10曲で1枚相当だ。有料と無料で換算率が異なるため、総再生回数だけではこの比率を再現できない。聴かれた量と、商業的な価値を意識した換算とは別の指標なのだ。
さらに、この集計の対象は2025年12月25日までの52週間であり、年間の音楽消費を示すものだ。BPIは2025年の録音音楽の売上高を2026年前半に公表する予定としていた。したがって、再生の伸びが鈍ったことから、そのまま収入の伸びも鈍ったとは言えない。価格や有料・無料の構成による影響は、この記事の数字だけでは切り分けられない。
モノの販売も一様ではない。フィジカルフィジカルPhysical releaseレコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。用語集で詳しく全体の販売増は1.4%にとどまり、CDは7.6%減の970万枚だった。レコードの好調を、あらゆる物理媒体への回帰と読むことはできない。どの形式を、どの作品のために選ぶのか。その違いが表れている。
懐かしさだけでは説明できない所有
レコード需要を支えるのは、過去の名作だけではない。2025年の英国レコード販売上位10作のうち6作は、直前の2年間に発売された作品だった。首位のテイラー・スウィフトテイラー・スウィフト Taylor SwiftSpotify で探すApple Music『The Life of a Showgirl』は14万7000枚超を販売した。新しい作品を、配信で聴くだけでなく手元に置く需要も存在する。
音楽の物理媒体の製造を手がけるKey Production Groupのニール・ギボンズは、アルバム全体を聴くことや、複数の形式を集めることを通じて、ファンがアーティストとの関係を深めていると説明する。製造側からの見方ではあるが、所有を単なる再生手段とは異なる行為として捉える言葉だ。ただし、この集計は個々の購入動機まで証明するものではない。
この年初から数年先を見るなら、注目点は配信とレコードの勝ち負けではなく、同じ作品に異なる価値の入り口が生まれる余地だ。再生の伸びが鈍るなかでも、新作を所有する需要が続けば、聴く接点と買う接点を組み合わせる動きが広がる可能性がある。一方、この記事は値上げや新料金プランの効果を示していない。配信の次の成長源が何かは、まだこの数字からは決まらない。
日本からは、媒体より測り方を見る
日本から読む際、まず違いとして意識したいのは、この数字が英国の市場構成とBPIの換算方法に基づく点だ。出典には日本の比較データがなく、日本でも同じ段階にあるとは判断できない。とりわけ89.3%という数字を、そのまま日本の聴取行動や売上構成に重ねることはできない。
それでも読み取れるのは、再生の増加率、媒体別の販売、作品の新しさを分けて見る意味である。英国では配信が消費の大半を占めながら、新作レコードにも買い手がいた。量の伸びが落ち着くことと、作品への関わりが薄くなることは同義ではない。2026年初めの数字が照らしていたのは、聴く規模と所有する価値が、別々の速度で動く市場だった。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月5日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-01-06
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
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