引き算の建築とは、壁や屋根を付け加える方法とは逆に、物質を取り除くことで空間や機能を生む捉え方である。ここでは確立した単一の様式名ではなく、出典が述べる採石場の「減算的な論理」を説明する言葉として用いている。
カン・テラの大きな空洞は、もともと建築家が住まいのために設計したものではない。石材を切り出した作業の結果である。転用に際しては、その空洞を生かしつつ、岩をさらに削って流しやシャワーの受け皿がつくられた。
この考え方の要点は、単に設備や装飾を減らすこととは異なる。すでにある物質と空間の成り立ちを読み、新しい用途につなぐ点にある。日本の改修や展示空間を考える際にも、形の簡素さと、既存の構造を生かす設計とは分けて捉えられる。