NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動カタログ・ゴールドラッシュショート動画ヒット工学
懐かしさの外で、曲が動き出す
マドンナの旧譜が「年代」から「気分」で選ばれる曲へ
マドンナの旧譜が、発売当時を知らない層に届いている。Chartmetricが2026年の動向として報じたデータでは、公式の選曲が過去の年代を強調する一方、利用者の選曲は気分や用途を軸に広がる。ショート動画の再流行だけでは捉えきれない、古い曲の居場所の変化が見えてくる。

「いつの曲か」より「何に使うか」
マドンナマドンナ MadonnaSpotify で探すApple Musicの再浮上を、懐かしさだけで説明するのは難しい。Chartmetricが2026年の動向として紹介したデータには、過去のヒット曲が、発売年代とは別の棚へ移されている様子が表れている。踊るため、気分を上げるため、声を張って歌うため。旧譜が現在の生活の用途に組み込まれている。
違いが鮮明なのはSpotifyの選曲だ。同記事によれば、公式が編成するエディトリアル・プレイリストエディトリアル・プレイリストEditorial Playlist配信サービスの編集担当者が選曲・編成するプレイリスト。年代、ジャンル、気分などの切り口で作品への入口をつくるが、掲載は聴取そのものとは異なる。用語集で詳しくでは、マドンナマドンナ MadonnaSpotify で探すApple Musicの旧譜への到達規模の83%を年代別の選曲が占める。一方、利用者や独立した選曲者によるユーザー生成プレイリストユーザー生成プレイリストUser-generated Playlist配信サービスの利用者がつくる選曲リスト。個人の好みや活動、気分に沿って曲を並べるため、公式の年代別・ジャンル別分類とは異なる接点が生まれる。用語集で詳しくでは、気分や活動を軸にした分類が目立つという。
ここにある兆しは、古い曲が新しい曲に置き換わることではない。同じ曲に付く文脈が変わることだ。「80年代の代表曲」として出会う場合と、今日の自分に合う曲として出会う場合では、聴取の入口が異なる。作品の蓄積であるカタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しくが、年代の枠を越えて使われ直している。
急増の前から、聴かれる土台があった
記事は、Spotifyの月間リスナー月間リスナーげっかんりすなーMonthly listeners月単位でアーティストを聴いた人の規模を示す指標。Spotifyでは熱心に繰り返し聴く人も、一曲だけ接した人も含まれ、来場や購入の意思を直接示す数字ではない。用語集で詳しくが2月から8月にかけて約33%増え、5560万人に達したと報告する。4月のコーチェラでのサブリナ・カーペンターサブリナ・カーペンター Sabrina CarpenterSpotify で探すApple Musicとの共演や、新曲の発売時期に再生が伸びたという。大きな舞台は入口になった。ただし、それだけで成長が始まったわけではない。
マドンナマドンナ MadonnaSpotify で探すApple Musicの曲を含むSpotifyのプレイリストは約127万件。記事が示すプレイリスト経由の到達規模では、公式側が43%、利用者側が残る57%のほぼすべてを占める。利用者による広がりは前年から続き、懐古的な選曲に限られなかったという。なお、この到達規模は月間リスナー月間リスナーげっかんりすなーMonthly listeners月単位でアーティストを聴いた人の規模を示す指標。Spotifyでは熱心に繰り返し聴く人も、一曲だけ接した人も含まれ、来場や購入の意思を直接示す数字ではない。用語集で詳しくとは別の指標で、重複を除いた聴取者数としては扱えない。
ショート動画も接点を増やした。記事によると「Like a Prayer」を使ったTikTok動画は56万4774本で、過去1年の増加率は319%。共演後には使用が数日で約3倍となり、夏を通じてその水準を保ったという。ただ、動画の使用本数は、曲全体を聴いた人数でも、新たなファンの人数でもない。接触の増加と、継続して聴くことは分けて見る必要がある。
広がるのは、世代よりも選び方
若年層への浸透にも手がかりがある。Chartmetricのオーディエンスデータでは、約66%が「Vogue」の発売された1990年より後に生まれている。ただし記事自身が、集計元のソーシャルプラットフォームは若い層に偏りやすいと断っている。この比率を、そのままSpotifyの全聴取者の年齢構成と読むことはできない。
地域の広がりも一様ではない。記事ではブラジルが第2の市場、メキシコが第4の市場で、中南米は全体の約28%を占める。スペイン語を一部に含む「La Isla Bonita」は、Spotifyで累計7億7800万回再生され、TikTokでの使用動画は直近3カ月で約112%増えたという。言語や曲調が、発売年とは別の接点をつくっている可能性がある。
今後1〜5年で広がり得るのは、過去のスター全員の復活というより、旧譜を用途別に見つけ直す経路だろう。今回の人気曲には、80年代の曲だけでなく、2005年の「Hung Up」も入る。記事が共通点として挙げるのは、軽快なダンス曲であること。年代よりも音の性格が選曲をつなぐなら、複数の時代にまたがるカタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しくにも入口が増える可能性がある。
ただし、再生の増加がどれほど続くか、収益や権利の評価額にどう結びつくかは、この記事では確認できない。また、記事後半はAI生成物への疲れや真正性への希求を背景に挙げるが、その因果関係を示す調査は提示していない。数字から見えるのは、まず選曲と接触の変化である。
日本から見る、旧譜の別の入口
日本の聴取者や楽曲について、同じ比較を行うデータは出典にない。中南米での広がりや若年層の比率を、日本にもそのまま当てはめることはできない。今回見えるのは、英語圏のスターの旧譜が、英米だけではない市場と、年代に縛られない選曲の中で届いているという構図だ。
日本から海外の動きを読む際にも、「誰が再評価されたか」と「どんな場面で曲が選ばれたか」は別の問いになる。今回の報告では、大きな共演が注目を集める一方、その前から利用者の選曲が積み重なっていた。短い動画による発見と、日々のプレイリストに残ること。その二つが接する場所に、旧譜の新しい居場所が見えている。
EVIDENCE出典
- 一次Chartmetric(How Music Charts)Mon, 24 Au
How Madonna Became a Gen Z icon in 2026.hmc.chartmetric.com ↗
“That user-generated growth isn't confined to eighties or throwback playlists; it spans moods and activities of all kinds, and it's been climbing steadily since last year.”
利用者が生み出すその成長は、80年代や懐古的なプレイリストに限られない。さまざまな気分や活動に広がり、前年から着実に伸び続けている。
確認日 2026-10-17
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- マドンナSpotify で探すApple Music
- サブリナ・カーペンターSpotify で探すApple Music


