和解では閉じなかった競争の議論
米33州が続けた独占訴訟、再び問われるライブ・ネイション分割
米司法省が和解しても、ライブ・ネイションとチケットマスターの独占を問う訴訟は終わらなかった。手続きを続けた33州と陪審の判断を背景に、議会では事業分割を求める声が上がった。2026年5月19日時点で見えていたのは、チケット問題を販売方法だけでなく、興行と販売を束ねる企業構造から捉える動きである。

和解の先に残った、企業分割という論点
チケットの売り方を変えるだけで、競争は回復するのか。2026年5月18日の米議会の会合で浮かび上がったのは、販売ルールより深い層にある問いだった。ライブ・ネイションと、その傘下のチケットマスターを分割する要求が、改めて示されたのである。
CMUの翌19日の報道によれば、米司法省は同年3月、裁判が始まった段階で同社と和解した。だが、訴訟に参加していた33州は手続きを継続。陪審は、両社が違法な独占を営んでいると認定した。連邦政府の和解と、州が求める責任追及は、同じ終着点には至らなかった。
この時点で、裁判所による制裁経済制裁けいざいせいさいEconomic Sanctions特定の国や個人・組織との取引などを制限する措置。文化事業への適用は、対象者、資金、提供するサービス、関係する法域などによって判断が分かれる。用語集で詳しくの内容はまだ決まっていない。議会で上がった分割要求も、決定済みの措置ではない。兆しはむしろ、和解で議論を閉じず、企業の構造そのものを競争政策の対象として問い直す動きにある。
約2億8000万ドルと、変わらない争点
司法省が2024年に起こした反トラスト法反トラスト法はんとらすとほうAntitrust Law企業間の競争を不当に制限する合意や独占行為などを規制する米国の法律の総称。本件では、出版社による共同交渉や削除通知の実施方法が問題とされている。用語集で詳しく訴訟は、反競争的な行為を問題とし、ライブ・ネイションの会場・コンサート事業とチケットマスターの切り離しを求めていた。両社が一体になったのは2010年の合併による。今回の争点は、個別の販売行為だけではなく、その組み合わせにまで及んでいる。
ところが司法省との和解では、競争上の懸念に対応する運営変更と、約2億8000万ドルの損害賠償損害賠償そんがいばいしょうDamages契約違反などによって生じた損害を金銭で補うこと。本件の争点は、請求できるかだけでなく、将来収入や残るメンバーの活動を金額にどう反映するかにある。用語集で詳しく金の支払いが合意された。CMUは変更を限定的なものと評している。金銭の支払いと運営の修正で足りるのか、それとも事業を分ける必要があるのか。議会での批判は、その隔たりを可視化した。
下院議員ジェイミー・ラスキンは、企業構造が反競争的行為を事実上保証するなら、事業売却や分割を含む構造的措置構造的措置こうぞうてきそちStructural remedies競争上の問題を是正するため、事業売却や企業分割などで所有関係や事業構成を変える措置。行為の禁止や運営ルールの修正とは、介入する対象が異なる。用語集で詳しくを検討対象に置く必要があると述べた。構造的措置構造的措置こうぞうてきそちStructural remedies競争上の問題を是正するため、事業売却や企業分割などで所有関係や事業構成を変える措置。行為の禁止や運営ルールの修正とは、介入する対象が異なる。用語集で詳しくとは、行為の禁止にとどまらず、事業の所有関係や組み合わせに手を入れる対応である。ただし、その必要性を訴える議員の発言と、裁判所の判断は区別して読む必要がある。
和解に至る過程も争点になった。CMUは、同社がトランプ大統領に近い人物をロビー活動ロビー活動Lobbying企業や団体が、政策や行政判断に自らの意見を反映させようと働きかける活動。活動の存在だけで違法とはいえず、手段や手続きの検証とは区別が必要。用語集で詳しくに起用した後に和解が成立したと報じている。カリフォルニア州司法長官ロブ・ボンタは、裁判が近づくと司法省側との連絡が突然途絶え、その後に和解を知らされたと証言した。元司法省職員ロジャー・アルフォードも政治的圧力を批判したが、その因果関係は証言者の主張として扱うべきものだ。
販売のルールから、競争の土台へ
議会の会合には、独立系会場独立系会場どくりつけいかいじょうIndependent venue大手興行企業などから独立した運営主体を持つライブ会場を指す呼称。小規模会場と重なる場合もあるが、独立性と収容人数の大小は別の尺度である。用語集で詳しくの運営者や音楽家も参加した。これは、チケット問題が購入者と販売会社だけの関係に収まらないことを示す場でもあった。会場や公演に関わる側から、興行と販売が一体になった仕組みをどう捉えるか。その視点が、独占をめぐる法的議論と接続している。
5月19日から先の1〜3年を考えるうえで、まず注目されるのは裁判所が選ぶ措置である。事業分割が命じられるのか、別の対応になるのかは、この出典からは分からない。ただ、運営ルールの変更と企業構造への介入が、異なる選択肢として並んだことは確かだ。今後の競争をめぐる議論でも、違反の認定だけでなく、何を変えれば競争が回復するのかが問われる可能性がある。
もう一つは、州による訴訟継続の意味だ。連邦政府が和解しても、33州が手続きを続けたことで、陪審の認定と制裁経済制裁けいざいせいさいEconomic Sanctions特定の国や個人・組織との取引などを制限する措置。文化事業への適用は、対象者、資金、提供するサービス、関係する法域などによって判断が分かれる。用語集で詳しくをめぐる判断の機会が残った。規制を単一の政府判断としてではなく、異なる行政主体と裁判所が関わる過程として見る必要があることを、この事例は示している。
日本から見ると、価格の手前にある問い
日本から読む際、米国の違法独占の認定を、そのまま国内の企業や取引関係に当てはめることはできない。出典は日本市場との比較を示しておらず、同じ構造や法的条件があるとも確認できない。ここで読み取れるのは、チケットをめぐる不満と、競争を妨げる仕組みの認定を分けて考える視点である。
価格や手数料の議論だけでなく、会場・公演・販売がどのような関係で結ばれているかを見る。米議会で再浮上した分割要求は、その関係自体を変える選択肢だった。実施の行方は未定でも、チケット問題を企業構造まで遡って語る動きは、2026年5月の時点ですでに表に出ていた。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年5月19日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次CMU(Complete Music Update)2026-05-19
“Despite the DoJ’s settlement, 33 US states who were also involved in the litigation ploughed on with the case, with a jury ultimately concluding that Live Nation and Ticketmaster do indeed operate an illegal monopoly.”
司法省の和解にもかかわらず、訴訟に参加していた米国の33州は手続きを続け、陪審は最終的に、ライブ・ネイションとチケットマスターが実際に違法な独占を営んでいると結論づけた。
確認日 2026-10-18


