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買う前に決まるチケットの行き先
ライブ・ネイション裁判、会場の販売先を導く非開示報酬
米ライブ・ネイションの反トラスト法裁判で、会場運営会社OVGがチケットマスターへの顧客誘導に報酬を受け、顧客には開示していなかったと認めた。一方、被告側は大物アーティストをめぐる競争の存在を強調する。2026年3月28日時点の証言から、会場と出演者で異なる「選択肢」の輪郭を読む。

購入画面より前にある選択
チケットの競争は、観客が購入サイトを開くより前から始まっている。2026年3月25日、米ライブ・ネイションの反トラスト法反トラスト法はんとらすとほうAntitrust Law企業間の競争を不当に制限する合意や独占行為などを規制する米国の法律の総称。本件では、出版社による共同交渉や削除通知の実施方法が問題とされている。用語集で詳しく裁判で、会場運営会社Oak View Group(OVG)のCEO、クリス・グレンジャーが証言した。OVGは会場にチケットマスターを独占的な一次販売一次販売いちじはんばいPrimary ticketingイベントの主催者や、その委託を受けた販売会社が、購入者にチケットを最初に販売する段階。購入後の再販売を扱う二次流通とは区別される。用語集で詳しく事業者として選ぶよう勧め、その対価を受け取っていた。契約規模は2,000万ドル。顧客である会場には、この報酬の仕組みを開示していなかったという。
Billboardによれば、この取り決め自体が違法というわけではない。州側が主張するのは、非開示の報酬がライブ・ネイションの反競争的な優位を支えたという点だ。販売サービスの性能だけでなく、誰が、どのような報酬を受けて会場に推薦したのか。裁判は、観客からは見えにくい契約の経路を照らしている。
ただし、報酬がなければ別の事業者を推薦した、とグレンジャーが認めたわけではない。彼は、チケットマスターには大きなデータベースと高い知名度があり、報酬の有無にかかわらず推薦すると証言した。推薦の根拠と、推薦に伴う利害。その両方が、同じ証言の中に現れた。
2,000万ドルと、異なる二つの市場
OVGは、この訴訟の初期から焦点の一つだった。司法省は2024年の訴状で、同社がチケットマスターの独占契約を守る役割を担ったと主張していた。今回の証言は、OVG創業者ティム・ライウィキをめぐる別の刑事事件で結ばれた不訴追合意の条件に基づくものだ。別件の合意を通じて確認された取引が、会場の販売先をめぐる争いにも持ち込まれた形である。
翌26日、被告側の最初の証人として登場したツアー部門責任者オマール・アルジュラニは、別の競争を語った。コールドプレイコールドプレイ ColdplaySpotify で探すApple Music、ケンドリック・ラマーケンドリック・ラマー Kendrick LamarSpotify で探すApple Music、ドレイクドレイク DrakeSpotify で探すApple Musicらとは長期契約を結んでおらず、公演を手がけるたびに、プロモータープロモーターPromoter公演やクラブイベントを企画し、開催へつなぐ個人や組織。出演交渉、会場との調整、告知、販売などに関わるが、具体的な担当範囲は契約によって異なる。用語集で詳しくとして選ばれる必要があるという。モーガン・ウォレンモーガン・ウォレン Morgan WallenSpotify で探すやブルース・スプリングスティーンブルース・スプリングスティーン Bruce SpringsteenSpotify で探すの仕事を獲得できなかった例も挙げた。
ここで見えてくるのは、競争を測る場所の違いだ。大物アーティストが興行の依頼先を選べることと、会場がチケット販売会社を選ぶ条件は、同じではない。前者に選択肢があるという証言だけで、後者の疑問が解けるわけではない。一方、OVGの報酬契約だけから、興行全体に競争がないとも言い切れない。両者をどのように評価するかが争われている。
分社化と、契約慣行の見直しのあいだ
3月28日時点で、裁判を主導するのは州側である。司法省は審理開始から1週間でライブ・ネイションと和解した。その内容には、反競争的とされる一部の慣行を抑える措置が含まれるが、チケットマスターの切り離しは要求されていない。対してニューヨーク州やカリフォルニア州などは、両社の分離を引き続き目指している。
この先1〜3年を見るうえでは、企業の分離と個々の契約慣行の変更を分けて追う必要がある。少なくともこの時点では、連邦と州で求める対応が異なる。非開示の紹介報酬や独占契約がどのように扱われるかによっては、会社の形が変わらなくても、会場が販売先を選ぶ条件が変わる可能性がある。
もっとも、報酬の開示だけで競争が広がるとは限らない。グレンジャーが強調した顧客基盤と知名度は、サービスを選ぶ理由としてなお残る。今後の焦点になり得るのは、契約上の誘導と、サービスそのものへの評価を切り分けられるかどうかだ。それが観客の価格や購入体験をどう変えるかは、この記事の証言だけでは判断できない。
日本から見ると、誰の選択肢なのか
日本の状況と比べる際、まず区別したいのは制度の前提である。ここで報じられているのは、司法省の和解後も州が分離を求めて続ける米国の訴訟だ。出典には日本の契約実態や比較データはなく、同じ構造があるとは言えない。販売画面が似ていても、その背後の取引まで同じとは限らない。
それでも、読み取れる問いはある。観客に複数の購入先が見えるかという話と、会場やアーティストが取引先を選べるかという話は別である。今回の裁判では、会場への推薦に付いた非開示報酬と、大物アーティストを獲得する競争が並んで語られた。「選択肢がある」という言葉を、誰の、どの段階の選択肢なのかに分けて見る。そのための具体的な材料が、法廷に現れている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月28日(土))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Billboard(Business)2026-03-28
Live Nation Trial Recap: OVG CEO, 'Competitive'billboard.com ↗
“It still has the biggest database [and] it has the best name recognition, so when you’re trying to sell tickets, it has a bit of a marketing halo,”
依然として最大のデータベースがあり、知名度も最も高い。だからチケットを売ろうとするとき、マーケティング面で一種の後光がある。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- コールドプレイSpotify で探すApple Music
- ケンドリック・ラマーSpotify で探すApple Music
- ドレイクSpotify で探すApple Music
- モーガン・ウォレンSpotify で探す
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