1–3 YEARS · シーンと言説の潮流チケット戦争ライブ・ブーム
一枚の価格から、市場のつながりへ
英ライブ市場、チケット販売から興行全体へ広がる監視
英国の競争・市場庁が、ライブ音楽業界の関係者との面談に向けて動き始めた。2026年7月の報道が示すのは、チケットの売り方だけでなく、興行・会場・販売を横断する企業の位置を検証しようとする兆しだ。正式調査は未決定であり、ライブ・ネイションは議会委員会の指摘に反論している。

売り方の問題から、市場の構造へ
英国で、ライブ音楽をめぐる監視の焦点が広がりつつある。2026年7月、競争・市場庁(CMA)が業界関係者に接触し、面談の調整を始めたと報じられた。対象にはライブ・ネイションに批判的な関係者も含まれる。Music Business Worldwideが、英紙The Timesの報道として伝えている。
ただし、正式調査の開始が決まったわけではない。CMAは、この分野で市場に関する検証を行うことを「積極的かつ慎重に検討している」と説明している。面談の準備を調査に進む兆候と見る業界関係者がいる一方、全面的な調査には至らない可能性も報じられている。
ここで見えるのは、一枚のチケットの販売方法から、ライブ市場を支える事業のつながりへの視線の移動だ。世界最大のコンサート興行会社であり、チケットマスターを傘下に持つライブ・ネイション。その興行、会場、チケット販売にまたがる位置が、競争法競争法きょうそうほうCompetition law事業者の行為や市場の構造が、公正な競争を妨げていないかを扱う法分野。この記事では、歌手への違約金請求が他社への移籍も阻むという申立ての枠組み。用語集で詳しくの観点から検証される可能性が浮かんでいる。
23会場と26フェス、数字の読み方
背景には、英国下院のビジネス・貿易委員会が5月に公表した報告書がある。委員会はCMAに対し、2026年末までにライブ音楽分野の全面的な市場調査市場調査しじょうちょうさMarket investigationここでは消費者の好みを調べる調査ではなく、競争当局が市場の構造や取引慣行を検討する手続き。議会からの実施要求と、当局による開始決定は異なる。用語集で詳しくを始めるよう求めた。調査では匿名で証拠を提出した関係者もおり、委員会は業界に「恐怖の風土」があると指摘した。これは委員会の評価であり、企業側が認めた事実ではない。
The Timesによれば、ライブ・ネイションは英国の23会場と26フェスティバルに持ち分を持つ。一方、同社は英国のフェスティバルで自社が支配する割合は5%未満だと説明する。持ち分の保有と支配は同義ではなく、件数と比率もそのまま比較できない。数字の大きさだけでなく、どの事業にどの程度の影響力があるのかが論点になる。
同社は委員会の結論を否定し、不正確なデータと裏付けのない結論に基づく報告書だと反論した。ツアー、会場、アーティストをめぐって日々競争しているとも述べている。調査を求める側の懸念と、競争は機能しているという企業側の主張。その隔たりを、証拠によって確かめる段階が近づいている可能性がある。
米国での動きも背景にある。4月にはニューヨークの連邦陪審が、ライブ・ネイションとチケットマスターによる違法な独占を認定し、主要会場のチケットで消費者に一枚当たり1.72ドルを過大請求したと判断した。同社は争う意向を表明している。米国の判断が、そのまま英国市場の結論になるわけではない。
今後の焦点は、調査の射程
CMAによる検証には前段がある。2025年7月には、オアシスオアシス OasisSpotify で探すApple Music再結成公演のチケット販売について、表示や価格区分がファンを誤認させたとして、チケットマスターへの法的措置を警告した。個々の販売行為を問うことと、市場全体の競争条件を問うことは、異なる射程を持つ。
2025年6月の議会証言では、CMAの消費者保護部門の幹部が、市場調査市場調査しじょうちょうさMarket investigationここでは消費者の好みを調べる調査ではなく、競争当局が市場の構造や取引慣行を検討する手続き。議会からの実施要求と、当局による開始決定は異なる。用語集で詳しくについて18〜24カ月という時間枠に言及していた。調査は、企業の分割を含む命令の可能性を開くとも説明した。企業の組織や事業の持ち方に働きかける構造的措置構造的措置こうぞうてきそちStructural remedies競争上の問題を是正するため、事業売却や企業分割などで所有関係や事業構成を変える措置。行為の禁止や運営ルールの修正とは、介入する対象が異なる。用語集で詳しくまで、制度上は視野に入るということだ。
ただし、この発言は分割方針の決定ではない。今後数年の広がりを見るうえでは、正式調査に進むか、進むなら何を対象にするかが分岐点となる。販売時の表示にとどまるのか、興行と会場と販売の関係まで扱うのか。調査の範囲によって、問われる取引や企業活動も変わり得る。
日本から見ると、価格の先にあるもの
日本から読む際には、英国の数字を日本市場の姿に重ねないことが重要になる。今回の報道は、日本の会場保有や販売網との比較を示していない。同じ企業名や販売サービスがあっても、契約や競争条件まで同じだとは、この資料からは言えない。
それでも、読み取れる視点はある。チケットの価格や買いやすさを考えるとき、その販売画面だけでなく、公演を組み、会場を押さえ、券を売る事業の関係にも目を向けることだ。2026年7月の英国で見えたのは、その関係を公的な検証の対象にしようとする動きである。結論ではなく、問いの範囲が広がる兆しだ。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年7月20日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-07-21
“The regulator could still stop short of a full investigation, The Times reported, but sector sources cited by the paper said the meetings now being scheduled pointed to the CMA preparing to proceed.”
当局が全面的な調査に踏み込まない可能性はなおあるとThe Timesは報じたが、同紙が引用した業界関係者は、調整中の面談はCMAが調査に進む準備をしていることを示すと述べた。
確認日 2026-10-18


