1–3 YEARS · シーンと言説の潮流チケット戦争ライブ・ブーム

埋まらない席にも時間がある

空席の画像から販売の時間軸へ、ライブ公演を測る視点

空席を示す青い点だけで、公演の成否は読めるのか。世界で10万件超の開催予定を掲載するJamBaseは、中止や会場変更に加え、チケット価格の推移を追う取り組みを強めている。2026年7月初めの取材から見えるのは、販売画面の一瞬ではなく、公演までの時間と会場規模を合わせてライブ市場を捉え直す動きだ。

クリーム色の背景に、青い座席の点が並ぶ半円と、時間に沿って緩やかに曲がる赤い線を重ねた抽象イラスト。

青い点を、失敗の証拠にしない

座席図に残る、売れていない席を示す青い点。その画像が拡散され、ツアーの不振を語る材料になる。「ブルードット・フィーバーブルードット・フィーバーBlue dot feverチケット販売画面で購入可能な座席を示す青い点が多く残ることへの不安を表す業界の言葉。この記事では、人気と実際の集客の隔たりを考える入口になっている。用語集で詳しく」と呼ばれる現象だ。2026年7月初めに公開されたChartmetricの取材で、JamBaseの最高技術責任者デイヴィッド・オニグマンは、この光景を別の方法で読み解こうとしていた。

同社が注視するのは、中止、延期、会場変更の相対的な多さ。そして、時間とともに変わるチケット価格である。青い点が多いという一場面から離れ、どんな会場を選び、どの価格で売り、開催までに販売がどう進むのかを捉える。空席を見つけることから、その理由を調べることへの移行だ。

ただし、JamBaseがすでに不振の原因を解明したわけではない。オニグマンは、開催前の最後の2週間に販売が伸びるツアーもあると説明する。同じ空席数でも、いつの時点で見たのかによって意味は変わる。画像の印象と、公演がたどる経過を分ける試みである。

10万件の背後にある、データの入口

JamBaseが掲載する開催予定は、世界で10万件を超える。通常、日々追加・削除されるイベントは2,000〜3,000件。発表が集まりやすい週前半には流入する情報の確認が増え、公演の多い週後半には開催済み情報の削除が進む。公演一覧は、固定された名簿ではなく、日々入れ替わる記録である。

主な情報源は数十社のチケット販売会社だ。それに、アーティストや会場が自ら情報を修正する管理機能、利用者からの投稿、編集部による登録が重なる。販売会社との接続を持たない小さな会場の公演も、別の入口から補える。発表直後に作った公演記録へ、後から複数の販売リンクを結びつける仕組みもある。

ここで重要なのは、掲載数の増加が、そのまま公演市場の拡大を意味するわけではない点だ。オニグマン自身、パンデミック後に情報が充実した理由として、提携する販売会社の増加も挙げる。見える公演が増えたのか、公演そのものが増えたのか。データの入口を確かめないと、両者は混ざってしまう。

会場規模にも同じ注意が要る。パンデミック中には、大きな施設を使いながら定員を300人に抑えた例があったという。施設名だけをもとに平均規模を計算すれば、実態より大きく見える。ライブの成長を測るには、件数だけでなく、その公演が開かれた条件も必要になる。

値段と会場を、一緒に読み解く

価格の記録が重要になる背景には、一次販売一次販売いちじはんばいPrimary ticketingイベントの主催者や、その委託を受けた販売会社が、購入者にチケットを最初に販売する段階。購入後の再販売を扱う二次流通とは区別される。用語集で詳しくでも価格が変動するようになったことがある。需要などに応じて販売価格を動かすダイナミックプライシングダイナミックプライシングDynamic pricing需要や販売状況などに応じて価格を変える方式。公演チケットでは、席種ごとに異なる固定価格や転売価格とは区別され、変動の有無や条件の説明が論点になる。用語集で詳しくだ。オニグマンによれば、変化は転売市場だけのものではなくなり、JamBaseも以前より詳しく価格の推移を追っている。

すると、販売不振という言葉の中身も分けて考えられる。価格が合っていないのか、会場が大きすぎるのか、都市を巡るツアー・ルーティングツアー・ルーティングTour routingツアーで訪れる地域、会場、日程や移動経路を組み立てること。記事では、配信の人気だけでなく、販売実績や価格、演出費用を踏まえた会場選びとして語られる。用語集で詳しくに無理があったのか。それとも、販売が伸びる時期がまだ来ていないのか。取材で示されたのは結論ではなく、こうした問いを提携先と検討する方向性だ。

今後の広がりとして考えられるのは、公演情報のサービスが、行き先を探す場所に加えて、会場や価格の設定を検討するための基盤にもなる可能性である。ただし、掲載された情報だけで購入者の行動すべてを説明できるわけではない。今回の記事にも、価格変更の効果や中止率を比較する分析結果は示されていない。追跡の強化と、成果の確認は別の段階にある。

日本から見ると、まず見える範囲を問う

日本からこの動きを読むとき、海外の数字をそのまま国内公演に重ねることはできない。JamBaseが掲載に強い市場として挙げたのは、米国、英国、ドイツ、フランス、カナダ、スペインだ。日本の収録範囲や販売慣行との違いは、この記事では説明されていない。

それでも読み取れるのは、公演を評価する視点の変化である。空席画像にも、掲載件数の増加にも、それぞれ見えていない条件がある。いつ観測した数字か、どの販売会社とつながっているか、実際に何人を入れられたか。ライブ市場の姿を照らすのは、大きな数字だけではない。その数字が生まれた経路を残す動きも、そこにある。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年7月1日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 一次Chartmetric(How Music Charts)2026-07-02

    Figures In Music: JamBase CTO David Onigmanhmc.chartmetric.com ↗

    “We're tracking ticket pricing over time more closely than we ever have. It used to be that when a concert was announced at $35, it was $35.”

    私たちはこれまで以上に詳しく、時間の経過に沿ってチケット価格を追っています。以前は、公演が35ドルと発表されたら、価格は35ドルでした。

    確認日 2026-10-18