1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明

公式ページの入口を守る仕組み

AIなりすまし対策が、配信後の削除から公開前の確認へ

公式アーティストページに、本人の知らないAI生成曲が並ぶ。そんな事例を背景に、Spotifyは公開前に投稿を確認できる任意機能を試している。2026年3月末に見えていたのは、偽物を見つけて消す対応に加え、掲載の入口を管理し、検出技術を他社とも共有する動きだ。作品の出所をどう確かめるかが問われている。

クリーム色の背景に、青いレコードを囲む入口と確認用の小さな丸を配置した、音源の公開前確認を象徴する平面的な抽象イラスト。

公式ページに並ぶ、本人ではない曲

新曲の断片を公開したら、その成功に便乗する偽物が現れる。英国のアーティスト、ベネディクト・コークベネディクト・コーク Benedict CorkSpotify で探すは、自分が演奏する動画をSNSに投稿してから1週間もたたないうちに、AIによる偽物が出回り始めたとTIMEに語った。Digital Music Newsが2026年3月末に伝えたのは、制作技術への驚きが、作品の出所をめぐる問題へ変わる場面である。

問題は、似た曲が増えることだけではない。記事によれば、1989年に亡くなったブレイズ・フォーリーブレイズ・フォーリー Blaze FoleySpotify で探すの認証済みSpotifyアーティストページに、前年7月、「Together」というAI生成曲が掲載された。その数日後には、TotoTotoSpotify で探すApple Musicの公式ページでも同様の事例が発覚した。公式の表示場所と、本人が制作・承認したという事実が、必ずしも一致していなかった。

兆しは、そのずれを配信後の削除だけで扱わない仕組みにある。Spotifyは、アーティストが自分のプロフィールに掲載される前に投稿を確認できる任意機能「Artist Profile ProtectionArtist Profile ProtectionArtist Profile ProtectionSpotifyが発表したアーティスト向けの保護機能。本人が承認しない新しいリリースが、自分のプロフィール上で公開されるのを防ぐ仕組みとして説明されている。用語集で詳しく」をベータ版で試している。偽物を追いかける対応に、公開前の確認という入口の管理が加わりつつある。

大量削除と、聴き手へ届く経路

Digital Music Newsは、Spotifyが前年9月、過去1年間に7500万曲超のAIスロップAIスロップAI slopAIで大量に作られた、質や関連性に乏しいコンテンツを批判する呼称。統一された技術的な分類ではなく、何を含めるかは発言者や文脈によって異なる。用語集で詳しくを削除したと発表したことを紹介している。ただし記事だけでは、そのすべてがアーティストのなりすましだったとは確認できない。低品質・大量生成コンテンツへの対応と、特定の人物を装う行為への対応は、重なる部分があっても同じ問題ではない。

一方、Sony Musicは同月、所属アーティストになりすました不正行為者による13万5000曲超について、各ストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくサービスに削除を要請したと明らかにした。ここにはAIによるディープフェイクディープフェイクDeepfakeAIで人物の声や姿を本物らしく生成・加工した音声や映像。本人の発言や行動と誤認されることで、同意や誤情報をめぐる問題が生じる。用語集で詳しくも含まれる。これは削除要請の件数であり、実際に削除された件数や、失われた収入の額を示す数字ではない。

配信の仕組みも、偽物を聴き手へ運び得る。前年12月、Spotifyから楽曲を引き揚げたキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードを装う音源が現れ、同社の「Release Radar」でもレコメンドレコメンドRecommendation利用者の関心に合うと判断した投稿や楽曲を、サービス側が選んで提示する仕組み。何を手掛かりに選び、本人がどこまで調整できるかが、体験を左右する。用語集で詳しくされた。Spotifyは当時、規約違反として削除し、発生した再生への使用料は支払われていないと説明した。掲載を許すかどうかだけでなく、誰の新作として薦めるかも、対策の対象になっている。

検出技術が、一社の外へ出ていく

対応は複数の層に分かれている。Spotifyは投稿時にAIの使用を申告するための仕組みも発表した。AIを使ったかどうかの情報と、その音源が本当に当該アーティストのものかという確認は、別の役割を持つ。AI使用の表示だけで、なりすましを防げるわけではない。

もう一つの動きが、DeezerによるAI検出技術の外部提供だ。記事では、同社が他企業や団体へのライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく提供を始め、ハンガリーの権利管理団体権利管理団体けんりかんりだんたいCollective management organization多数の権利者に代わり、音楽などの利用に伴う使用料の徴収や分配を担う組織。扱う権利や地域は団体ごとに異なり、海外団体との協定が回収経路になる。用語集で詳しくEJIも利用先に含まれるとされる。検出が一つの配信サービス内の機能にとどまらず、権利を管理する側でも使う技術になり始めている。

この時点から先の1〜3年を見るなら、公開前の確認、投稿時の申告、音源の検出がどう組み合わされるかが焦点になり得る。ただし、試験中の機能がどこまで普及するか、検出の精度や異議申し立てがどう扱われるかは、この記事からは分からない。大量に消せることと、正しい作品だけを通せることの間には、まだ検証すべき距離がある。

日本から見る、表示と本人確認の距離

日本から読む際には、海外の被害件数をそのまま国内の規模に置き換えられない点に留意したい。出典は日本での発生件数や、国内事業者の対応を示していない。ここで読み取れるのは国ごとの被害差ではなく、公式ページへの掲載と、本人による承認を分けて考える必要が生じていることだ。

日本の聴き手にとっても、配信サービス上の公式ページや推薦欄は、作品に出会う接点となる。今回の事例は、その接点の信頼が音源の内容だけでは支えられないことを示す。誰の名義で届き、誰が掲載を確認したのか。2026年3月末に見えていたのは、AI作品を一括して排除する話ではなく、作品と名義を結び直す仕組みを試す動きである。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月29日(日))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Digital Music News2026-03-30

    Artists Fight Back Against AI Slop, But Are DSPs Doing Enough?digitalmusicnews.com ↗

    “The streamer is also testing Artist Profile Protection, which is now in beta, an optional feature allowing artists to review their uploads before they appear on their profiles.”

    同サービスは、アーティストがプロフィールに表示される前に投稿を確認できる任意機能「Artist Profile Protection」も、現在ベータ版で試験している。

    確認日 2026-10-18

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