1–3 YEARS · シーンと言説の潮流国境なきヒット

聴かれる先に、集まれる場所を

非英語圏のツアーが3割、国境越えを支える会場投資

Live Nationの上位50ツアーに占める非英語圏アーティストの割合が、パンデミック前の8%から30%へ上がった。一方、同社が挙げる米国外の主要75市場のうち47市場では、近代的なアリーナが不足するという。国境を越えた人気を公演へつなぐ、会場という条件が見えてきた。

点在する小さな円と、屋根を開いたアリーナの輪郭を青い線で結んだ抽象イラスト。クリーム色の背景に赤い点が並ぶ。

英語圏の外から、上位ツアーへ

国境を越えて聴かれる音楽が、国境を越えて観客を集める。その変化が、大手興行会社のツアー構成にも表れている。Live Nationの上位50ツアーに占める非英語圏アーティストの割合は、パンデミック前の8%から30%へ上昇した。社長兼最高財務責任者のジョー・バーチトールドが、2026年9月9日の投資家向け会議で示した数字である。

これは世界の全ツアーを集計した比率ではない。また、歌詞の言語別に楽曲を数えた数字でもない。同社の上位ツアーを担うアーティストの構成だ。それでも、英米の英語圏アーティストを中心としてきた興行の地図に、別の重心が育っていることを示す。

バーチトールドは、パンデミック後の代表例として、各地のスタジアムを満員にするバッド・バニーバッド・バニー Bad BunnySpotify で探すを挙げた。K-popやラテン音楽にも言及している。ただし、その人気を支えるのは配信だけではない。聴き手がいる街に、公演を開ける建物があるか。その条件が次の焦点になっている。

需要の先にある、47市場の会場不足

同社の説明では、米国外の主要75市場のうち47市場で、十分な近代的アリーナ設備が不足する。例に挙がったのはローマ、イスタンブール、ソウル、東京、マニラ、サンパウロなどだ。会場が一つもないという意味ではない。大規模公演を受け入れる設備の量や水準が、同社の想定する成長に足りないという見立てである。

背景には、すでに進んだ観客の国際化がある。2025年の同社公演への来場者は過去最多の1億5900万人。同社史上初めて、米国外の来場者数が米国内を上回った。2026年は発言時点で1億5500万枚超のチケットを販売し、前年同期比12%増だったという。

会場投資もそれに続く。同社が運営するアリーナは10年前の5施設から25施設に増え、そこで迎える観客の85%は米国外にいる。2025年11月に示した大型会場の整備計画は48施設、資本コストは約52億ドル。そのうち28施設が米国外である。非英語圏の人気の拡大と、興行インフラ興行インフラこうぎょういんふらLive event infrastructure公演の開催を支える会場や設備、搬入・運営の基盤。建物の整備はその一部であり、出演契約や集客、継続開催の仕組みまで自動的に整うことを意味しない。用語集で詳しくへの投資が並行している。

発見の国境と、公演の国境は違う

なぜ、この組み合わせが生まれているのか。バーチトールドは、交流型のプラットフォームとストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくによって、アーティストが各地のファンへ届きやすくなったと説明する。ロサンゼルスなら、特定ジャンルの演者が必要とする共同体は人口の0.1%でも成り立つ、という例も挙げた。友人を公演に誘うファンまで含め、点在する関心が集まりやすくなったという見方だ。

ただし、画面上の発見は、それだけでは公演にならない。都市ごとの観客をつなぎ、移動日程と会場を組み合わせるツアー・ルーティングツアー・ルーティングTour routingツアーで訪れる地域、会場、日程や移動経路を組み立てること。記事では、配信の人気だけでなく、販売実績や価格、演出費用を踏まえた会場選びとして語られる。用語集で詳しくには、物理的な制約が残る。近代的なアリーナの整備は、その制約を緩める可能性がある。非英語圏の作品が届くことと、その演者が訪れることの間にある距離を縮める試み、と読める。

今後1〜3年を見る手掛かりは、すでにある計画だ。サンパウロでは2万1000人収容のアリーナが2028年開業予定。リマでも1万8500人収容の屋内会場の計画が提出されている。計画どおりに進めば、公演を受け入れる選択肢は増え得る。ただし、新会場で誰が何公演を行うかまでは、この資料から分からない。

日本も「不足する市場」に含まれる

日本から読むと、東京が設備不足の例に含まれる点が目を引く。国内に会場があることと、国際的な興行会社が十分な受け入れ能力を見込めることは同じではない。バーチトールドは、日本の人口当たりの活動水準を米国の40%と説明した。ただし、活動水準の詳しい算出方法は記事に示されておらず、日本のライブ市場全体の規模を直接比較する数字としては扱えない。

Ticketmasterは年末ごろに日本でチケット販売を始める予定とも報じられた。ここに見えるのは、海外の人気を日本へ運ぶだけの話ではない。非英語圏の演者が各地を巡る際、日本の会場や販売網がどのようにつながるのかという論点である。音楽が言語の境界を越えた先で、人が集まれる場所の配置が問われている。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年9月14日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-09-15

    Non-Englishmusicbusinessworldwide.com ↗

    “He told the Goldman Sachs conference that 47 of the top 75 markets outside the US lack sufficient modern arena infrastructure.”

    彼はゴールドマン・サックスの会議で、米国外の主要75市場のうち47市場では、近代的なアリーナのインフラが十分に整っていないと述べた。

    確認日 2026-10-18

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