NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動著作権の再発明

似た響きと、保護される表現の間

サム・スミスらの楽曲訴訟、フックの類似性から立証の条件へ

サム・スミスとノーマニの「Dancing With a Stranger」をめぐる著作権訴訟で、被告側が再び正式審理を経ずに判断するよう求めた。先行曲へのアクセスをめぐる主張が取り下げられ、争点は際立った類似性と、原告楽曲に含まれるとされる無許諾サンプルへ。似ているという印象を、何によって侵害の証拠に変えるのかが問われている。

クリーム色の背景に、よく似た二本の音の波形と、その一方を構成する小さな断片を配置した抽象イラスト

「似ている」の先で、何を証明するのか

楽曲のフックが似ている。それだけで、どこまで著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくを立証できるのか。サム・スミスサム・スミス Sam SmithSpotify で探すApple Musicとノーマニノーマニ NormaniSpotify で探すApple Musicの2019年の楽曲「Dancing With a Stranger」をめぐる訴訟は、聴感上の近さから、コピーを認定するための条件へと焦点を移している。

7月7日、両者や共同制作者、関係企業の代理人は、連邦裁判所にサマリー・ジャッジメントを求めた。正式な事実審理を経ずに裁判所の判断を得る手続きである。一度は退けられ、控訴審で復活した訴えに対し、被告側が再び終結を求めた形だ。

兆しは、楽曲同士を比べるだけでは訴訟の行方が見えなくなっていることにある。先行曲を知る機会はあったのか。共通する音や言葉は保護される表現なのか。原告が権利を主張する曲は、何を素材として作られたのか。今回の申立てでは、これらが重なり合っている。ただし、申立ての内容は被告側の主張であり、裁判所が認めた事実とは区別する必要がある。

2022年の提訴から、絞られてきた争点

訴えを起こしたのはSound and Colorである。2022年の提訴では、2015年に共同制作された「Dancing With Strangers」のフックを、スミスらの楽曲がコピーしたと主張した。カリフォルニア州の連邦地裁は翌年に訴えを退けたが、第9巡回区控訴裁判所が2025年に事件を差し戻した。両曲のフックの類似性を陪審が判断すべきだとしたためだ。これは、侵害が確定したという意味ではない。

その後の証拠開示証拠開示しょうこかいじDiscovery訴訟に関係する資料や情報を当事者間で取得・提示する手続き。米国の民事訴訟では、相手方が保有する記録や証言を得て、争点を検証する重要な過程となる。用語集で詳しくでは、被告側が実際に先行曲をコピーしたのかが焦点となった。出典記事によると、原告は複数の主張を取り下げ、その中には、被告側に先行曲への合理的なアクセスがあったという主張も含まれる。そこで重みを増したのが「際立った類似性際立った類似性きわだったるいじせいStriking similarity米国の著作権訴訟で、偶然や独立した創作では説明しにくいほどの類似から、コピーを推認しようとする法理。通常の「似ている」という評価とは区別される。用語集で詳しく」である。単に似ているという指摘よりも、コピーを推認できるほどの類似をどう示すかが問われる。

被告側は「dancing with a stranger」という句が、原告曲より前の15曲超に登場すると指摘する。共通部分には保護対象にならない音高やリズムが含まれる、という反論だ。ただし、同じ句が過去に使われたという事実だけで、旋律やリズムの組み合わせ全体の評価が済むわけではない。原告側も専門家による反論を示しており、限られた音が重なることと、具体的な表現の類似をどう扱うかで対立している。

比較対象は、曲を作った素材にも広がる

もう一つの争点はサンプリングサンプリングSampling既存の録音の一部を取り出し、別の楽曲の素材として使う制作手法。元の音楽への関心を生むこともあるが、利用条件や権利の確認とは区別して考える必要がある。用語集で詳しくだ。被告側は、原告の先行曲に無許諾のサンプルが2つ含まれると主張し、それを使って作られた曲の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく保護に異議を唱えている。だが、記事はその主張が認められたとは伝えていない。サンプルの使用許諾の有無と、それが原告の権利主張に及ぼす範囲は、分けて読む必要がある。

今後数年を考えるうえで、この事件が示すのは、楽曲比較に加えて、制作素材の来歴も争点になり得るということだ。どの部分が作り手自身の表現で、どの部分が既存の素材なのか。権利を主張する側の制作過程も検討対象となれば、訴訟は完成した2曲の聴き比べだけでは収まらない可能性がある。

もっとも、この申立てだけから、音楽訴訟全体の基準が変わるとは言えない。記事が伝える次の節目は、8月14日にロサンゼルスで予定される申立ての審理だ。正式な事実審理へ進むかどうかを含め、裁判所の判断はまだ示されていない。見えているのは新しい結論ではなく、似た曲をめぐる争いを成立させる条件の精査である。

日本から見ると――結論より手続きの違い

日本からこの報道を読む際には、米国の陪審による判断と、そこへ進む前のサマリー・ジャッジメントという手続きが背景にある点を切り離せない。今回の申立てを、そのまま日本での侵害判断に当てはめることはできない。また、出典は日本の訴訟との比較をしておらず、日米の判断の厳しさの違いまで示す材料はない。

それでも読み取れる区別はある。「似て聞こえること」「相手の曲をコピーしたこと」「保護される表現を侵害したこと」は同じではないという点だ。さらに今回は、先行曲自身の素材にも争いが及んだ。耳で感じる近さと、法廷で積み上げる証拠。その間にある複数の段階が、この訴訟では表に出ている。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年7月12日(日))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Digital Music News2026-07-13

    Sam Smith and Normani ‘Dancing With a Stranger’ Lawsuit Still Ondigitalmusicnews.com ↗

    “In the process, Sound and Color dropped many of its claims, including that the songwriters had reasonable access to the earlier track.”

    その過程でSound and Colorは、ソングライターたちに先行曲への合理的なアクセスがあったという主張を含め、多くの主張を取り下げた。

    確認日 2026-10-18

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