1–3 YEARS · シーンと言説の潮流音楽の金融化著作権の再発明

古い契約の先にある海外収入

米控訴審が認めた、作曲家への世界的な著作権返還

米国で古い音楽出版契約を終了させた作曲家は、海外の権利も取り戻せるのか。『Double Shot』をめぐる訴訟で、米控訴審は世界的な権利返還を認めた判断を支持した。一曲の利用許諾から始まった争いに、長年の契約が支える海外収入と、創作者の交渉力を問い直す兆しが見える。

クリーム色の背景に、青いレコードと地球を示す円を重ね、権利の返還を表す赤い折り返し矢印を配した抽象イラスト。

一曲の使用許諾が、国境の外へ

発端は、世界各地で放送される番組で一曲を使うための許諾だった。テレビ会社ABCが求めたのは、シリル・E・ヴェターシリル・E・ヴェター Cyril E VetterSpotify で探すの楽曲『Double Shot』のシンクシンクSync映画や広告などの映像に音楽を合わせて使用すること。楽曲が物語や場面と結びつき、発売時とは異なる観客へ届く接点になり得る。使用には関係する権利の確認が伴う。用語集で詳しく。映像と音楽を組み合わせる利用である。その窓口を誰が担えるかという争いが、古い音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく契約の効力を国境の外まで問い直す訴訟になった。

2026年1月のCMUの報道によると、米第5巡回区控訴裁判所は、ヴェターが同曲の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくを世界的に保有するとした下級審の判断を支持した。米国法上の権利回復は米国内だけに及び、海外の権利は出版社に残る。音楽業界が長く前提としてきた扱いに、裁判所が異なる読み方を示したのである。

ここにある兆しは、単に作曲家が一件の訴訟で勝ったことではない。契約から長い時間がたった楽曲について、海外収入を誰が受け取り、世界向けの利用許諾を誰が出すのか。その配分と交渉の出発点が、改めて争点になっている。

1963年の譲渡と、56年後の権利回復

ヴェターと共作者のドン・スミスドン・スミス Don SmithSpotify で探すApple Musicは、1963年に音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくWindsongへ『Double Shot』の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくを譲渡した。Resnik Music Groupがその権利を取得したのは2019年。ただし、その時点でヴェターは、過去の譲渡を終了させて権利を取り戻す終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しくを行使していた。取得される資産である一方、創作者に戻り得る権利でもあった。

CMUの説明では、米国の終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しくは、1978年以降に創作された作品では35年、同年より前の作品では56年が経過した後の権利回復を可能にする。『Double Shot』は後者に当たる。争われたのは回復そのものではなく、その地理的な範囲だった。Resnikは米国外の利用には自社の許諾が必要だと主張し、ヴェター側は世界向けの許諾も自ら出せると反論した。

法的な分岐点は、ベルヌ条約ベルヌ条約Berne Convention著作物を国境を越えて保護するための国際条約。各国の著作権制度をつなぐ一方、米国での契約終了が海外の権利にどう及ぶかは、本件で争われた論点である。用語集で詳しくなどを通じた国際的な著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく保護の捉え方にある。米国法は、終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しくが外国法に基づく権利には影響しないと定める。Resnik側は、各国で別個の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくが生じる以上、海外の権利は残ると論じた。対して下級審は、この事件では米国に由来する一つの著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくが各国で保護され、その譲渡が終了すれば世界的な支配も作者に戻るという立場を認めた。

控訴審も、ヴェターによる世界的な権利保有という結論は、法律の文言、文脈、目的に支えられるとした。ただし、これを国際著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく全般について決着がついたと読むことはできない。報道時点では、控訴審でのさらなる審理や、米最高裁への上訴の可能性が残っていた。

海外収入を残すという前提の揺らぎ

今後1〜3年という時間幅で注目されるのは、この判断が維持された場合に、古い出版契約の評価へどう波及するかだ。CMUは、長年の契約に由来する楽曲の権利を持つ米国の音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく全般に影響し得ると指摘する。終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しくの行使後も海外の権利と収入の一部を保持できるという前提が、問われるためである。

これは楽曲の価値が失われるという話ではない。同じ楽曲が収入を生んでも、それを管理し、受け取る主体が変わり得るという話だ。権利の取得や長期保有を考える際にも、過去の契約がいつ、どの範囲で終了し得るのかが、より重要な検討材料になる可能性がある。

創作者側にとっては、国内分だけを取り戻す場合と、世界向けの許諾を担える場合とでは、交渉の位置が異なる。ABCへの許諾を出版社抜きで出せるかという具体的な問いが、その違いを示している。もっとも、あらゆる楽曲の権利が自動的に戻ると認められたわけではなく、報道時点で判断はなお争われ得る段階にあった。

日本から見る、許諾の窓口という論点

日本から読む際の違いは、ここで使われた仕組みが米国法上の終了権移転終了権いてんしゅうりょうけんCopyright termination right著作権の移転を一定の条件で終了させる米国法上の権利。本件では、期間の経過に加え、本人が権利を保有し移転したかどうかが判断の中心となった。用語集で詳しくだという点にある。日本の創作者にも同じ年数や条件で権利が戻ることを示す報道ではない。一方、米国の楽曲を日本で利用する場面を考えると、海外の権利を誰が持つかという争いは、遠い国内訴訟だけではなくなる。

読み取れるのは、権利を取り戻す制度と、国境を越える利用許諾が別々の話ではないということだ。米国内の契約終了が、日本を含む海外での許諾窓口にも関わる可能性が示された。一曲の古い契約をたどると、音楽を資産として保有する側と、創作した側とのあいだで、世界の収入をどう分けるかという輪郭が見えてくる。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月14日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次CMU(Complete Music Update)2026-01-15

    Songwriter groups hail “unequivocal win for creator rights” as US appeals court upholds landmark termination rights rulingcompletemusicupdate.com ↗

    “The Fifth Circuit ruling is an unequivocal win for creator rights, handed down by a unanimous panel of judges from across the ideological spectrum”

    第5巡回区の判決は、思想的立場の異なる裁判官たちが全員一致で下した、創作者の権利にとって明白な勝利である。

    確認日 2026-10-18

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