NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動音楽の金融化

旧来の割引を支える根拠の変化

豪州のラジオ録音使用料が約38%増、宣伝価値を再評価

豪州の著作権審判所が、ラジオ放送による録音物の使用料率を業界総収入の0.4%から0.55%へ引き上げた。理由の一つは、放送が音楽の売上を直接押し上げるという従来の説明の弱まりである。2026年1月の報道に見えるのは、音楽の宣伝価値と利用対価を切り分け直す動きだ。

クリーム色の背景に、コバルトブルーのレコードと、珊瑚色の大小二つの円を載せた天秤を配した平面的な抽象イラスト。

「宣伝になる」という割引の再点検

ラジオで曲が流れることは、音楽の権利者にどれだけの利益をもたらすのか。豪州の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく審判所は、放送の宣伝効果が以前ほど売上に直結しないことを、録音物の音楽使用料音楽使用料おんがくしようりょうMusic royalties音楽の利用に伴い、権利を持つ側へ支払われる対価。会場が利用許諾のために払うお金と、個々の作り手に分配される金額は、分けて捉える必要がある。用語集で詳しく率を引き上げる理由の一つに挙げた。2026年1月16日付のMusic Business Worldwideが報じている。

料率は放送ラジオ業界の総収入の0.4%から0.55%へ。上昇幅は約38%で、2023年7月にさかのぼって適用される。対象は楽曲の作詞・作曲に対する支払いではなく、録音物の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくを持つ側への対価だ。同じ一曲でも、どの権利の収入を論じているのかを分けて読む必要がある。

兆しは、増額そのものだけにない。かつてレコード会社が低い料率を受け入れる根拠だった「放送が販売を促す」という交換関係が、裁定の中で問い直された点にある。露出の機会と、録音物を利用する対価。その二つをどこまで相殺できるのかが、収入を決める論点になっている。

売上への近道が細くなった

審判所は、ストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しくやソーシャルメディアの登場によって、ラジオの宣伝価値と新しい音楽の発見における役割が低下したと述べた。以前なら放送を聴いた人がレコードなどを購入し、直接の売上につながった。いまはその人が後から曲を再生しても、権利者全体の収入総額が増えるのは、ごく限られた場合だという説明である。

これは、放送後の再生に価値がないという判断ではない。宣伝と売上の間に、従来と同じ直接の相関を置けなくなったということだ。個別の曲が聴かれる機会と、権利者収入権利者収入けんりしゃしゅうにゅうRightsholder revenue音源や楽曲の権利を持つ側に入る収入。利用者が支払う総額とは集計範囲が異なり、そこから個々のアーティストが受け取る金額とも必ずしも一致しない。用語集で詳しくの総額が増えることは同義ではない。音楽の届け方が変わり、割引を支えてきた説明も再点検されている。

金額で見ると、従来の0.4%では2023年の録音物の権利者向け収入は約400万豪ドルだった。同年に0.55%を当てはめれば約550万豪ドルとなる。これは新料率による実際の年間受取額の報告ではなく、同じ年の収入に新料率を適用した比較だ。率の変更が継続収入の規模にどう響くかを示している。

交渉の土台も長く据え置かれていた。録音業界団体PPCAと放送業界団体Commercial Radio & Audioの前の合意は1999年に結ばれ、2003年に期限を迎えた。その後は月単位で延長され、PPCAは2022年、2023年6月をもって終了すると通知した。今回の裁定は、約四半世紀ぶりの新たな取り決めとなる。

料率の先に残る、算定方法と上限

PPCAが求めた方式がすべて認められたわけではない。同団体は、放送内容に占める音楽の割合に応じて料率を変え、音楽が45%を超える局には総収入の1%を適用する案を提示した。審判所はこれを退け、業界全体の収入に一定率を掛ける仕組みを維持した。利用の多寡を各局の負担へどう結び付けるかは、別の争点として残った。

さらに豪州法には1%の上限がある。PPCAは1月14日の声明で、この上限が他市場に匹敵する録音物の放送使用料を受け取るうえで制約になったと主張した。新料率が上限未満でも、上限の存在自体が裁定の判断を狭めたという見方だ。これはPPCAの評価であり、上限撤廃が決まったわけではない。

この時点から先の1〜5年で注目されるのは、料率だけでなく、ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくの算定根拠まで交渉の対象になる可能性である。PPCAは上限撤廃を求め続けるとしている。ただし、今回の裁定は局別の段階料率を採用していない。宣伝効果の評価が変わっても、支払いの仕組み全体が直ちに変わるわけではないことも示された。

日本から見る、権利収入の足場

審判所は豪州の料率を国際的に低い側と評価し、さらに低い国として日本と米国を挙げた。ただし、記事が日本について示すのはこの比較までである。米国の地上波放送では楽曲の権利者には支払う一方、録音物の使用についてレーベルやアーティストには支払わないと説明されているが、その仕組みを日本にも当てはめることはできない。

日本から読み取れるのは、音楽の継続収入を評価するとき、聴かれる回数だけでは足りないという点だ。料率、算定対象となる収入、法定上限、宣伝効果への評価。豪州の事例では、その組み合わせが受取額を左右している。音楽を収益を生む資産として見る際にも、その価値の足場は利用許諾の制度と交渉にある。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月15日(木))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-01-16

    Australia’s recorded music royalty rates for radio play to rise by 38% after tribunal rulingmusicbusinessworldwide.com ↗

    “It is clear that promotional value and new music discovery have diminished with the advent of streaming and social media”

    ストリーミングとソーシャルメディアの登場によって、宣伝価値と新しい音楽の発見における役割が低下したことは明らかである。

    確認日 2026-10-18