1–3 YEARS · シーンと言説の潮流音楽の金融化

強気の内側にある、選別の目線

音楽権利を資産として測る、投資家125人の意識調査

音楽権利への投資を、取引額だけでなく資金を出す側の意識から測る調査が登場した。2026年3月に公表された結果では、回答者の86%が投資配分の拡大を予定する。ただし、対象は北米に偏り、運用資産の総額も音楽への投資額ではない。見えてくるのは、市場の成長とともに運営主体を選別する視線である。

クリーム色の背景に、黒いレコードとコバルトブルーの天秤を配し、片側にコーラル色の円を重ねた抽象イラスト。

取引額の向こうに、投資家の意識を置く

音楽権利の売買を追うとき、目を引くのは取引の金額だ。だが、次の資金を動かす人々は何を期待し、何をためらうのか。2026年3月10日にDigital Music Newsが伝えた調査は、その判断の手前を測ろうとしている。金融・企業広報を手がけるFourth Pillarによる、初回の「Music Investment Barometer」である。

対象は、五大陸の音楽投資に関わる意思決定者や上級アドバイザー125人。回答者の99%が、録音物や音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくのカタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しく、権利収入などの音楽IPIPアイピーIntellectual Property知的財産のこと。エンターテインメントでは、作品やキャラクターなど、権利に支えられて商品化や他分野への展開の核となるものを指す場合がある。用語集で詳しくは、正式な資産クラス資産クラスAsset Class収益やリスクなどに共通した特徴がある投資対象の分類。音楽権利をこう捉えることは、他の資産と比較し、資金配分を検討する対象に位置づけることを意味する。用語集で詳しくとして認識され、扱われていると答えた。86%は今後12カ月で音楽権利への投資配分を増やす予定だという。

兆しは、強気の回答が多いことだけではない。音楽を投資対象とする人々の期待や不安そのものが、継続して観測する対象になったことだ。個々の大型取引とは別に、資金の出し手の判断を比較する物差しが用意され始めた。

強気の数字と、調査が映さない範囲

調査は2025年第4四半期の4週間に実施された。回答者の72%はマネージング・ディレクター以上の職位にあり、合計の運用資産は3兆2400億ドル超に上る。ただし、これは回答者が管理する資産全体の規模だ。音楽に投じられた金額でも、今後流入する資金の約束でもない。

回答者の66%は、取引機会の件数が前年より増えたとした。平均取引額は8700万ドル。76%が評価額を取引可能な水準と捉え、今後の取引規模については34%が横ばい、51%が拡大を見込む。音楽投資の中長期的な見通しに楽観的な回答は92%だった。機会の増加と価格への受容が、同時に示されている。

一方、収益以外で資金配分を左右する主な要因には、過去の実績と経営陣の評判が挙がった。音楽なら何でも買うという姿ではない。どの権利かに加え、誰が事業を動かすのかも見られている。強い投資意欲と、運営主体への選別は両立している。

調査の射程にも注意が要る。回答者の地域構成は北米が74.4%、欧州が21.6%で、アジアは2.4%にとどまる。職域も音楽投資プラットフォーム、投資運用会社、非公開資本の投資会社、レーベルや音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく、投資銀行、法律事務所にまたがる。世界の音楽家や権利者の意識ではなく、投資に関与する層の見取り図である。

次に問われるのは、期待が資金になる過程

この時点から先の1〜3年を考えるなら、注目点は投資意向と実際の資金配分の距離だ。音楽業界への資金配分総額が増えると予想した回答者は78%だった。ただし、予想や計画は取引の成立を意味しない。初回調査が今後も重ねられるなら、強気の意識が維持されるのか、価格や取引機会にどう表れるのかを比較できる可能性がある。

AIへの見方にも、単純な楽観・悲観では収まらない幅がある。42%が今後12カ月の最大の懸念として業界へのAIの影響を挙げた。一方、音楽資産の価値に悪影響を及ぼすことについては、中立が33%、やや懸念していないが21%、まったく懸念していないが4%だった。

業界全体への影響を警戒することと、保有する資産の価値下落を見込むことは、同じではない。この調査だけでは、その差を生む理由までは分からない。それでも、音楽投資の議論が成長期待だけでなく、リスクをどこに置くかへ広がっている様子は読み取れる。

日本から見ると、まず分母が見えてくる

日本から読む際、北米中心の回答を国内市場の温度と重ねることはできない。出典には日本単独の集計も、日本の権利取引との比較もない。99%という高い一致は、音楽が誰にとっても同じ資産になったという意味ではなく、今回の回答者の間で資産としての認識が共有されていることを示す。

その範囲で見えるのは、作品への評価とは別に、音楽権利の価値を測る言葉が整えられつつあることだ。カタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しくの価格、取引機会、運営の実績、経営陣への信頼。音楽の金融化は権利売買だけでなく、資金の出し手が何を根拠に選ぶかを可視化する段階にも及んでいる。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月10日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Digital Music News2026-03-10

    First Study of Investor Sentiment on Musicdigitalmusicnews.com ↗

    “86% plan to increase their allocations to music rights in the next 12 months, with 66% saying the number of deals available increased year on year.”

    86%が今後12カ月で音楽権利への投資配分を増やす予定であり、66%が取引機会の件数は前年より増えたと答えた。

    確認日 2026-10-18