3–5 YEARS · 業界の構造変化AIと作家性著作権の再発明
似ている音と、貢献のあいだ
ソニーのAI音楽研究、楽曲の影響を測る技術と分配への距離
生成AIが作った音楽に、どの学習曲が影響したのか。ソニーの研究は、その関係を測る手法を示した。ただし、曲ごとの影響度を測ることと、収益を公平に分けることは同じではない。2026年2月の報道から見えるのは、AIへの利用許諾が進むなか、分配の根拠となるデータと共通ルールが問われ始めた兆しだ。

「何を学んだか」から「どう分けるか」へ
生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの音楽をめぐる問いが、学習への許諾だけでなく、収入を誰にどう分けるかへ伸びている。2026年2月18日付のCMUが取り上げたのは、ソニーの研究開発部門に属するSony AIの研究だ。生成された音楽に、学習用のどの楽曲が影響したかを測ろうとする。
兆しは、無断利用を探す技術と、許諾後の分配を支える技術が重なり始めたことにある。AI企業と音楽企業のライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約が進むと、受け取った収入を個々の録音や楽曲へ割り振り、アーティストや作曲家へ分ける仕組みが必要になる。利用の可否だけでは、その先の会計は決まらない。
ただし、研究が示したのは完成済みの分配システムではない。CMUは、日経の報道を受けて広がった「アーティスト別の貢献率を算出できる」という説明と、論文が実際に示した内容との隔たりを指摘する。測れる対象と、支払える根拠。その間には、まだ複数の段階がある。
11万5000曲から影響をたどる
研究は、NeurIPS 2025で発表された。中心となるのは、AIが学んだ内容を選択的に忘れさせる「機械的忘却機械的忘却きかいてきぼうきゃくMachine UnlearningAIが学習した内容の影響を、モデルの調整によって選択的に弱める技術。元データを消すだけの操作とは異なり、何をどこまで忘れたと判断するかの検証も重要になる。用語集で詳しく」だ。ただし、学習曲を一つずつ忘れさせ、生成結果への影響を確かめるのではない。11万5000曲の実験用データでも、それを繰り返す計算量は現実的ではないという。
そこで向きを逆にする。生成された曲をモデルが作りにくくなるよう、内部の数値を変更する。その前後で、モデルが学習曲をどれほど正確に再構成できるかを比較する。生成曲を忘れさせたときに大きく影響を受ける学習曲を、その出力との関わりが強いものとして捉える仕組みだ。
これは、生成結果への寄与を推定するアトリビューションアトリビューションAttributionAIの生成物と、それに影響した学習データを結びつける考え方。音楽では、どの作品の何が出力に寄与したかを調べ、クレジットや報酬分配の根拠にする試みを指す。用語集で詳しくの一種である。得られるのは学習曲ごとのスコアスコアScore映画やゲームの場面、物語、空間のために作曲される音楽。ここでは楽譜ではなく劇伴を指し、既存曲の採用や主題歌とは役割が異なる。作品の体験を支える音楽を捉える言葉だ。用語集で詳しくであり、アーティスト別の割合ではない。スコアスコアScore映画やゲームの場面、物語、空間のために作曲される音楽。ここでは楽譜ではなく劇伴を指し、既存曲の採用や主題歌とは役割が異なる。作品の体験を支える音楽を捉える言葉だ。用語集で詳しくをどうまとめ、どの要素を重く評価するかは別の問題だ。技術上の影響度が、そのまま契約上の分配率や著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくの判断になるわけではない。
費用も小さくない。実験では、生成曲1曲の分析に高性能なH100 GPUを8基使い、約5時間を要した。CMUはクラウド利用なら約250ドルと試算する。これは研究条件に基づく目安だが、日々大量の曲を生成するサービスで、すべての出力を分析する難しさを示している。
分配の基盤には、計算以外の条件もある
もう一つの条件は、AI企業の協力である。モデル内部にアクセスできる場合と、生成音楽を外から比較する場合では、使える情報が異なる。論文でも、内部を参照する方法と、内部を見られない方法とでは、どの学習曲が影響したかについて大きく異なる答えが出たという。
つまり、音が似ていることと、モデルの内部で生成に関わったことは、同じ測定ではない。外からの比較にも用途はあり得るが、それだけで学習の経路を確定できるとは限らない。無断利用の調査に必要な証拠と、許諾済みの利用に対する収入配分の資料も、区別して考える必要がある。
この時点から3〜5年を見渡すと、試されるのは分析精度だけではない。数百万曲規模でも扱える計算費用、AI企業が共有するデータの範囲、スコアスコアScore映画やゲームの場面、物語、空間のために作曲される音楽。ここでは楽譜ではなく劇伴を指し、既存曲の採用や主題歌とは役割が異なる。作品の体験を支える音楽を捉える言葉だ。用語集で詳しくを金額へ換算する合意。これらがそろえば、アトリビューションアトリビューションAttributionAIの生成物と、それに影響した学習データを結びつける考え方。音楽では、どの作品の何が出力に寄与したかを調べ、クレジットや報酬分配の根拠にする試みを指す。用語集で詳しくが分配を支える資料となる可能性がある。ただし、研究段階の結果だけで実用化の時期は読めない。
CMUによれば、同様の課題に取り組む企業は複数ある。一つの方式が広く使われるのか、異なる方式の結果を照合する共通基準が必要になるのかも未定だ。何を貢献と数え、その計算を誰が検証できるのか。分配技術の開発は、業界が合意するルールの設計にもつながっている。
日本から見る、研究と支払いの距離
日本から見ると、国内企業の研究が海外の音楽産業における分配の議論と結びついている点が目を引く。一方、日経の説明を広く伝えた報道に対し、CMUは研究条件と実用上の制約に立ち戻った。国ごとの普及度を比べる材料ではないが、同じ研究でも、成果の見せ方と検証の焦点には差がある。
同じソニーグループでも、研究成果がそのまま音楽事業の採用を意味するわけではないとCMUは記す。ここで見えるのは、技術を持つことと、権利者が納得する支払いの仕組みを持つことの違いだ。生成音楽の収入を分ける試みは、音の由来を測る研究と、その測定を信頼できる条件づくりの両方にまたがっている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年2月17日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次CMU(Complete Music Update)2026-02-18
“It’s also worth noting that the method produces per-track attribution scores, not per-artist percentages.”
この手法が出すのは楽曲ごとの寄与スコアであって、アーティストごとの割合ではない点にも注意が必要だ。
確認日 2026-10-18


