1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AIと作家性著作権の再発明
創作の道具と、許諾の境界線
BMGがAnthropic提訴、歌詞の学習と入手経路を問う
BMGが、対話型AI「Claude」を手がけるAnthropicを著作権侵害で提訴した。対象は493曲。2026年3月18日時点で見えていたのは、生成された歌詞だけでなく、学習資料の入手経路や権利情報の扱いまでを問う動きだ。生成AIの利用を一律に退けず、許諾と対価を条件に据える姿勢も示されている。

歌詞の出力だけではない訴訟
2026年3月17日、BMG Rights ManagementがAnthropicを米カリフォルニア北部地区の連邦地裁に提訴した。47ページの訴状が挙げるのは、著作権を侵害されたとする493曲。「What a Wonderful World」「Uptown Funk」などが含まれる。翌18日のBMGの説明と訴状から、対話型AI「Claude」をめぐる争点の広がりが見える。
BMGは、Claudeが管理楽曲の歌詞を出力しただけでなく、学習のために歌詞を複製し、違法なオンライン書庫から楽曲を含む書籍を入手したと主張する。さらに、学習前の処理で著作権を識別する情報を除去したとも訴えている。問いは、AIが何を返したかにとどまらない。何を、どこから、どのような状態で取り込んだかに及ぶ。
ただし、これらはBMG側の主張であり、侵害が認定されたわけではない。記事によればAnthropicは提訴についてまだ公にコメントしていない。ここで捉えられる兆しは、生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの是非への一括した賛否ではなく、開発工程を分けて権利上の責任を問う動きである。
493曲と、企業評価額の距離
BMGは訴状で、約400万の楽曲の権利を管理していると説明する。今回の請求は、学習と出力による直接侵害、トレントトレントTorrentファイルを参加者同士で分割して受け渡す配布方式で使われる情報や、その配布単位を指す言葉。技術自体は合法・違法のどちらの用途にも使われる。用語集で詳しくによる直接侵害、寄与侵害寄与侵害きよしんがいContributory infringement他人の著作権侵害への関与を理由に、第三者にも責任を問う米国法上の考え方。今回の判決では、侵害の認識だけでなく、誘発や侵害に特化したサービス提供が焦点になった。用語集で詳しく、代位侵害、著作権管理情報の除去・改変の五つ。トレントトレントTorrentファイルを参加者同士で分割して受け渡す配布方式で使われる情報や、その配布単位を指す言葉。技術自体は合法・違法のどちらの用途にも使われる。用語集で詳しくはファイルを分散して共有する仕組みで、それ自体が違法なのではない。訴状は、海賊版書籍をその仕組みで取得したと主張している。
BMGによれば、取得対象には歌集や楽譜も含まれた。さらに、抽出ツールで権利を識別する情報を取り除いたという。歌詞が画面に再現されたかという出力の問題と、学習資料の取得や前処理の問題を並べる構成だ。仮に出力の再現を抑えられても、それだけでは答えが出ない論点を含んでいる。
背景には、開発企業の規模と権利者への対価を対置する構図がある。訴状は、2026年2月の300億ドルの資金調達資金調達しきんちょうたつFinancing事業を運営し、発展させるために必要な資金を確保すること。融資、出資、助成などでは返済義務や契約条件が異なるため、方法を区別して読む必要がある。用語集で詳しく後に示されたAnthropicの評価額3,800億ドルと、売上高の年換算値140億ドルに言及する。一方、BMGや作詞・作曲家への支払いはないと主張する。これらの企業の数字は侵害を証明するものではないが、AIの成長を支える作品にどう対価を配分するかという訴えの背景になっている。
音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく側の訴訟は今回が初めてではない。Universal Music Publishing音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく Group、Concord、ABKCOは2023年10月に提訴し、2026年1月には対象を2万曲超に広げた別の訴訟を起こした。後者の法定損害賠償法定損害賠償ほうていそんがいばいしょうStatutory damages実際の損害額の立証とは別に、法律で定めた枠組みに基づいて求める損害賠償。訴状に示された可能額は、裁判所が認めた支払額や和解金とは異なる。用語集で詳しくは最大で30億ドルを超え得ると報じられている。これは支払いが決まった額ではなく、請求が認められた場合に生じ得る規模である。
許諾を条件に、創作の道具を残す
BMGの立場は、生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくを一律に拒むものではない。3月18日の声明では、適切な許諾があれば、生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくは創造性を置き換えるのではなく高める道具になり得ると説明した。そのうえで、著作権保護と公正な報酬は譲れないとする。技術の用途と、その開発に作品を使う条件とを切り分ける姿勢だ。
この時点から先の1〜3年を考えると、注目点は訴訟の勝敗だけではない。ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくの協議で、利用する作品の範囲に加え、取得元や権利情報の保持までが確認事項になる可能性がある。BMGが問題にした工程は、そのような交渉で何を説明する必要があるのかを浮かび上がらせる。ただし、記事は合意条件や共通基準の成立を報じてはいない。
日本から見る、音源ではない権利
日本からこの訴訟を読む際にも、対象の違いは重要だ。今回の中心は録音された音源そのものではなく、歌詞を含む楽曲の権利である。音楽を生成するサービスに限らず、文章で応答するAIでも音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの権利が争点になる。楽曲が歌集や楽譜という形で学習資料に含まれる点も、音楽と出版をまたぐ問題を示している。
一方、出典は日本の制度や契約実務との比較を扱っていない。米国の請求や賠償の規模を、そのまま日本に当てはめることはできない。読み取れるのは、創作を支援する用途への期待と、学習への無許諾利用への異議が両立していることだ。AIを使うか否かだけでなく、どの工程に許諾と対価を置くか。その境界が具体的な争点になっている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月18日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-03-19
“We believe that, with appropriate permissions, generative AI can serve as a tool to enhance creativity rather than replace it, and that different segments of the music industry may benefit from it in different ways.”
適切な許諾があれば、生成AIは創造性を置き換えるのではなく高める道具となり、音楽業界のさまざまな分野が、それぞれ異なる形で恩恵を受けられると私たちは考えている。
確認日 2026-10-18


