1–3 YEARS · シーンと言説の潮流レーベル2.0

売上の先にある、権利をつなぐ仕事

世界の録音音楽収入が拡大、レーベルはAIの許諾設計へ

2025年の世界の録音音楽収入は前年比6.4%増。2026年3月に公表されたIFPIの報告は、その成長と並べて、AI向けの許諾モデルづくりと配信不正への対応を掲げた。業界団体としての主張を含む資料から、作品への投資に加え、利用条件と収益の流れを整えるレーベルの役割を読み取る。

クリーム色の背景に、黒いレコードから伸びた青い線が枝分かれし、赤い輪と小さな円へつながる抽象的な平面イラスト。

成長の報告に並んだ、二つの仕事

2026年3月18日、レコード産業を代表する国際団体IFPIは、2025年の世界の録音音楽収入が前年比6.4%増の317億米ドルに達したと発表した。成長は11年連続。すべての地域で収入が増えた。ただ、この発表で目を留めたいのは、市場規模だけではない。

IFPIは成長の説明と並べて、レコード会社によるAI向けライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくのモデル開発と、ストリーミング不正ストリーミング不正Streaming fraud実際の聴取ではない再生を人為的に生み出すなど、音楽配信サービスを操作して収益を得る行為。正当な再生に基づく収益分配や、サービスへの信頼を損なう。用語集で詳しくへの対応を掲げた。前者は新しい利用から収入を生む仕組みづくり。後者は、人工的な再生によって既存の収入が奪われることへの対処である。収入の入口を広げる仕事と、その流れを守る仕事が、一つの報告の中に置かれている。

ここに見えるのは、作品を世に送り出すだけでは捉えきれないレーベルの役割だ。音楽をどの条件で技術に使わせるか。再生を通じて生まれた収入を、どう正当な権利者につなぐか。利用条件と分配の前提を整える働きが、投資やアーティストとの協業に並ぶ論点として示されている。

配信が大きくなるほど、分配の前提が問われる

背景には、有料配信の規模がある。2025年の有料ストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しく収入は8.8%増え、世界の録音音楽収入の52.4%を占めた。有料契約アカウントの利用者は8億3700万人。広告型なども含むストリーミングストリーミングMusic streamingネットワーク経由で音源を受信しながら再生する提供方式。音楽市場では有料契約や広告などに支えられるが、市場収入と個々のアーティストの受取額は同じ指標ではない。用語集で詳しく全体では、収入が220億米ドルを超え、構成比は69.6%に達した。

この規模の収入源に対して、不正な再生は分配の信頼性に関わる。IFPIは、操作されたコンテンツや偽のコンテンツの再生を人工的に発生させ、アーティストらに回る収入を抜き取る行為として問題を説明する。そのうえで、配信サービスだけでなく、音源を集約・供給する事業者にも、予防、検知、対応を求めている。レコード会社だけで完結する対策ではない。

AIについても、発表は単なる技術導入の話にとどまらない。IFPIは、創作者の権利を尊重する開発企業との提携を挙げ、アーティストの収益機会につながる許諾モデルを開発していると説明する。ただし、この発表文には個別の契約条件や分配率、実際に生まれた収入額はない。示されているのは取り組みの方向であり、成果の検証ではない。

資料の性格にも留意したい。数値は世界のレコード会社から提供されたデータに基づき、発表主体はその業界を代表する団体である。成長がアーティストへの還元や再投資につながるという説明はIFPIの見解だ。総収入の増加だけから、個々のアーティストの手取りや契約条件まで改善したとは読み取れない。

許諾と不正対策は、新しい役割になるか

この時点から先の1〜3年で注目されるのは、こうした取り組みがレーベルとアーティストの関係の中で、どこまで具体的な機能になるかである。AI向けの許諾が収益機会につながれば、レーベルには作品への投資に加え、新しい利用先との条件交渉を担う役割が広がる可能性がある。ただし、本資料だけでは、どの規模の会社やアーティストまで恩恵が及ぶかは分からない。

不正対策も同様だ。IFPIの呼びかけは、データや対応能力を持つ複数の事業者の協力を前提としている。ここからは、レーベルの価値が販売実績だけでなく、外部の事業者と連携して収益の流れを守れるかという点でも語られる可能性が見える。もっとも、新たなサービス契約や料金体系が成立したとする記述はない。役割の拡張という兆しと、契約の変化という事実は分けておきたい。

日本から見る、配信だけではない成長

日本は2025年に8.9%増となり、成長に戻った。世界第2位の市場という位置も維持している。一方、アジア全体は世界のフィジカルフィジカルPhysical releaseレコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。用語集で詳しく収入の45.1%を占めた。これは地域の数字であり、そのまま日本の構成比を示すものではない。世界全体でもフィジカルフィジカルPhysical releaseレコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。用語集で詳しく収入は8.0%増えており、今回の成長を配信への移行だけで説明することはできない。

配信が収入の97.5%を占める中東・北アフリカと、フィジカルフィジカルPhysical releaseレコードやCDなど、物理的な媒体で発売される音楽商品を指す言葉。音源に加えて装丁や手に取る体験を持ち、店頭販売や収集とも関わる。用語集で詳しくの大きな市場であるアジアでは、事業の前提が異なる。それでも、音楽の利用先を増やす許諾と、収入を守る仕組みは並行して問われる。日本から読み取れるのは、海外の成長モデルを一つにまとめることではなく、複数の販売形態を支えながら、技術との接点を設計するレーベル像である。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月18日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 一次IFPI2026-03-18

    GLOBAL MUSIC REPORT 2026: GLOBAL RECORDED MUSIC REVENUES GROW 6.4% AS RECORD COMPANIES DRIVE INNOVATIONifpi.org ↗

    “The report details their active engagement in the development of music licensing models to generate revenue opportunities for artists – aiming to build an ecosystem where AI and human artistry thrive together.”

    報告書は、アーティストの収益機会を生む音楽の許諾モデルの開発に各社が積極的に関わり、AIと人間の芸術性がともに発展する環境の構築を目指していることを詳述している。

    確認日 2026-10-18

PUBLISHED 2026.03.18 · 著者 Andown · 引用元 IFPI