1–3 YEARS · シーンと言説の潮流レーベル2.0国境なきヒット

ライブで育てた関係を録音へ

南アジアの現場と大手をつなぐ、ロンドンの新レーベル

南アジアの文化プラットフォーム、Dialled Inが、英大手のIsland-EMI傘下部門とレーベルを立ち上げた。ライブやアーティスト育成で築いた基盤に、録音作品の制作・流通を接続する試みだ。2026年4月初めに見えていたのは、地域の文化を内側から支える組織が、世界への窓口も担おうとする動きである。

クリーム色の背景に、コバルトブルーのレコードと複数の小さな円を線で結び、地域をまたぐ音楽の流通を表した抽象イラスト。

文化の現場が、レーベルを持つ

2026年4月初め、ロンドンでDialled In Recordsの設立が報じられた。南アジアの文化プラットフォーム、Dialled Inと、Universal Music Group UKのIsland-EMIに属するThe CollectiveコレクティブCollective共通の関心や活動方針のもとで、DJや制作者、企画者などが協働する集団。法人や固定メンバーの団体とは限らず、選曲や催しの運営を共同で担う場合もある。用語集で詳しくとの提携である。対象は南アジアと、その出身者が各地に築くディアスポラディアスポラDiaspora故郷や祖先の土地を離れて各地に暮らす人々と、そのつながりを指す概念。美術では、移動先と出自の双方から歴史や帰属を捉える視点として用いられる。用語集で詳しくのアーティスト。現地だけでなく、移住先で生まれる音楽も視野に入れる。

兆しは、大手が地域に特化したレーベルを増やしたことだけではない。南アジア系の起業家や音楽関係者らが5年前に始めたDialled Inは、ライブ、国際ツアー、アーティスト開発アーティスト開発Artist development才能の発掘から活動の方向づけ、観客との関係づくりまで、アーティストのキャリアを継続して育てる仕事。今回の買収では、地域に蓄積された専門性として重視されている。用語集で詳しく、国境を越えた協働へと活動を広げてきた。その蓄積に録音作品と国際的なディストリビューションディストリビューションDistributionレーベルなどの音源や商品を、配信サービスや販売店へ届ける流通業務。契約によっては、宣伝や販売促進、技術面の支援まで含むことがある。用語集で詳しくを加える。文化の現場を持つ側が、作品を世界へ送り出す窓口にもなる構図だ。

始動時の契約アーティストは2組。パキスタンのカラチ生まれのプロデューサー兼DJで、共同創設者でもあるAhadadreamAhadadreamSpotify で探すApple Musicと、ニューデリーとムンバイを拠点にするExcise DeptExcise DeptSpotify で探すApple Musicである。最初のリリースは、Raf SaperraRaf SaperraSpotify で探すApple MusicとSkrillexSkrillexSpotify で探すApple Musicが参加するAhadadreamAhadadreamSpotify で探すApple Musicの「Bass Dhol」。一方のExcise DeptExcise DeptSpotify で探すApple Musicは、実験的な電子音楽と南アジアのアイデンティティを結び、複数の地域言語でラップし、歌う。単一の言語や音楽像に収まらない出発点だ。

投資の関心と、現場にある規模

提携先のThe CollectiveコレクティブCollective共通の関心や活動方針のもとで、DJや制作者、企画者などが協働する集団。法人や固定メンバーの団体とは限らず、選曲や催しの運営を共同で担う場合もある。用語集で詳しくは、起業家的なA&RA&RエーアンドアールArtists and Repertoireアーティストの発掘や育成、楽曲・制作方針の検討などを担うレーベルの機能。広告や宣伝を中心とするマーケティングとは区別されるが、活動を支えるうえで連動する。用語集で詳しくを掲げる部門だ。才能の発掘や育成を担う大手の機能と、文化の内側で築かれた関係が接続される。ただし記事には、権利の帰属や収益配分、契約期間の詳細はない。新しい契約モデルが成立したとまでは言えず、確認できるのは組織の組み合わせである。

背景には、南アジア系の才能への業界の関心がある。前年4月にはWarner Music Groupが、米国を拠点とする南アジア系アーティストの発掘・育成を目的に5 Junctionを設立。UMGも2024年、英国の南アジア音楽レーベルOriental Star Agenciesの全録音カタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しくと、同社が保有する範囲の音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく権を取得した。新しい才能の育成と、過去の録音資産への投資が並行している。

Dialled Inには、すでに人が集まる場所もある。5月30日に予定された5周年フェスティバルは、ロンドンのダルストン地区の8会場にまたがり、収容規模は3,000人。これは予定された容量であり、動員実績ではない。それでも、レーベルが録音作品だけから出発するのではなく、ライブの接点を伴っていることが分かる。

広がりを測るのは、音と言語の幅

この時点から先の1〜3年を見るなら、焦点は「南アジア音楽」という括りの中で、どれだけ異なる表現を扱えるかにある。複数の地域言語で歌うExcise DeptExcise DeptSpotify で探すApple Musicと、国際的な電子音楽の接点を持つAhadadreamAhadadreamSpotify で探すApple Music。最初の2組の違い自体が、映画音楽や一つのジャンルだけでは捉えきれない範囲を示している。

ライブで出会い、育成し、録音し、国外へ届ける。その経路を同じ文化基盤からつなぐことで、作品を継続的に紹介できる可能性がある。共同創設者のDhruva Balramは、契約アーティストが自分たちの物語、音、アイデンティティを自らの条件で形づくると説明する。ただし、これは設立側の方針だ。実際の制作判断や継続的なリリースにどう表れるかは、この時点ではまだ分からない。

また、国際流通の経路ができることと、国外で聴かれることは同じではない。記事には聴取数や国外売上の数字がない。見えているのは世界的ヒットの実績ではなく、地域言語や実験的な音を、そのまま国外へ運ぶための仕組みを組み立てる動きである。

日本から見る、国境以外のつながり

日本からこの動きを読むとき、活動拠点と文化的な背景を分けて見ることが手がかりになる。ロンドン発のレーベルに、カラチ生まれの音楽家とインドの都市で活動する集団が並ぶ。これは一国の音楽を海外へ輸出する図式とは異なる。出身地、移住先、使用言語をまたぐ関係が、レーベルの土台になっている。

出典には日本市場の比較データがなく、国内との優劣は論じられない。ただ、「海外の音楽」を国別に整理するだけでは、この接続は見えにくい。Dialled Inの設立が示すのは、文化を紹介してきた組織が、作品の育成と流通まで担う役割の広がりだ。大手の規模と現場の関係を結ぶ試みが、ここにある。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年4月2日(木))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-04-03

    Dialled In Records launches in London focused on South Asian music in partnership with The Collective, part of Universal Music UK’s Island-EMImusicbusinessworldwide.com ↗

    “Dialled In has always been about building the infrastructure that South Asian artists deserve but have not always had.”

    Dialled Inが一貫して取り組んできたのは、南アジアのアーティストが享受してしかるべきでありながら、必ずしも手にできてこなかった基盤を築くことだ。

    確認日 2026-10-18

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