NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動ビエンナーレ以後

選ばれた表現が届くまでの距離

南アフリカのヴェネツィア館が空館に、独立選考と大臣判断の隔たり

独立委員会が全会一致で選んだ展示が、大臣による中止と司法判断を経て、国の不参加に至った。南アフリカ文化省は2026年2月20日、ヴェネツィア・ビエンナーレの自国館を空のままにすると発表。選ぶ権限と実現を支える権限の隔たりが表れた経緯を、同日時点の報道から読む。

クリーム色の背景に、内部が空いた青い展示館の輪郭と、入口へ届く直前で途切れた赤い線を配した抽象イラスト。

代表は選ばれた。それでも館は空になる

2026年2月20日、南アフリカ文化省は、同年のヴェネツィア・ビエンナーレビエンナーレBiennale原義は「2年ごと」。現代アートでは隔年開催の国際展を指すことが多く、作品の発表に加え、選考や運営の制度も表現の条件に関わる。用語集で詳しくに国を代表する作家を派遣せず、自国の国別館国別館くにべつかんNational Pavilion国や地域の参加単位として設けられる展示の枠組み。建物だけでなく、代表作家の選考、企画、運営を含み、担当主体や権限は参加者ごとに異なる。用語集で詳しくを空のままにすると発表した。Artforumによれば、同国は2011年以来、毎回作家を送り出してきた。続いていた参加が、今回は展示のない館へと変わる。

出展予定だったのは、ガブリエル・ゴリアスである。前年12月、独立委員会が全会一致で選んだ。しかし、スポーツ・芸術・文化相ゲイトン・マッケンジーが展示を中止。ゴリアスは復活を求めて裁判に訴えたが、北ハウテン高等裁判所はその申し立てを退けた。

ここで見えるのは、代表作家を選ぶ仕組みがあっても、その選択が展示の実現を保証するとは限らないという隔たりだ。選考の独立性と、選ばれた表現を会場まで届ける権限。国際展の入口で、この二つが別々に存在することが露わになった。

作品の変更要求と、締め切りの圧力

ゴリアスが発表する予定だったのは、2015年に始めた《Elegy》の新たな展開である。パフォーマンスと映像によるこの連作は、南アフリカにおける女性殺害やトランスジェンダー、同性愛者への殺害、現在のナミビアでドイツ植民地軍が行ったヘレロ人とナマ人の虐殺を扱う。新作では、2023年10月にイスラエルの空爆で亡くなったパレスチナの詩人ヒバ・アブ・ナダを追悼する予定だった。

マッケンジーは作品を「著しく分断を招く」と評し、複数の変更を要求した。ゴリアスが拒否すると、各国の提案提出期限である1月10日の8日前に、国別館国別館くにべつかんNational Pavilion国や地域の参加単位として設けられる展示の枠組み。建物だけでなく、代表作家の選考、企画、運営を含み、担当主体や権限は参加者ごとに異なる。用語集で詳しくの展示を中止した。作品内容への政治側の異議が、出展手続きの最終局面で参加そのものを左右した形だ。

ゴリアスとキュレーターのイングリッド・マソンドは、大臣には展示を打ち切る契約上の権限がなく、中止は憲法上の表現の自由表現の自由ひょうげんのじゆうFreedom of Expression意見や思想、芸術表現を外に示す自由。公的機関による展示中止との関係は、適用される法制度や契約、判断の具体的な理由によって検討される。用語集で詳しくを侵害すると主張した。ただし、これは両者の主張であり、裁判所が認めた事実ではない。争点には作品の評価だけでなく、誰が中止を決められるのかという契約上の権限も含まれていた。

2月11日の審理後、マモコロ・クブシ判事は理由を説明せずに判断を示し、大臣ら相手方への訴訟費用の支払いも命じた。Artforumが引用するArtnewsの報道では、判断はビエンナーレビエンナーレBiennale原義は「2年ごと」。現代アートでは隔年開催の国際展を指すことが多く、作品の発表に加え、選考や運営の制度も表現の条件に関わる。用語集で詳しくの提出期限の数時間前だったという。記事には1月10日の期限も記されているが、二つの期限の関係は説明されていない。少なくとも、報道から判断理由や手続きの全体像を確定することはできない。

次に問われるのは、選考後の保障

ゴリアスは控訴する意向を示している。本人とチームは判断への深い失望を表明し、異議を唱える自由を含む表現の自由表現の自由ひょうげんのじゆうFreedom of Expression意見や思想、芸術表現を外に示す自由。公的機関による展示中止との関係は、適用される法制度や契約、判断の具体的な理由によって検討される。用語集で詳しくを危うくする先例だと批判した。この評価と、判決の法的な射程は分けて読む必要がある。理由が示されていない段階では、同種の展示が今後どう扱われるかまで断定できない。

それでも、今後数年の国際展を考える論点は見える。独立委員会による選考と、政府による出展の実施判断を、どのような契約や手続きで接続するのか。今回の経緯が参照されれば、選考方法だけでなく、選考後の変更要求や中止権限、その際の異議申し立ての扱いも検討対象になる可能性がある。

別会場での発表や国の枠外での展示へ広がるかは、この報道には示されていない。確認できるのは、独立した選考が行われても国の出展が途絶え得ること、そして作家がその決定を司法の場で争っていることだ。国別館国別館くにべつかんNational Pavilion国や地域の参加単位として設けられる展示の枠組み。建物だけでなく、代表作家の選考、企画、運営を含み、担当主体や権限は参加者ごとに異なる。用語集で詳しくの次の形を考える材料は、展示空間の形式だけでなく、実現を支える制度にもある。

日本から見る、空館までの過程

日本から国際展を見るときも、代表作家の名前や完成した展示だけでは捉えられない部分がある。今回報じられたのは、南アフリカの大臣、独立委員会、作家、裁判所の間で生じた具体的な衝突であり、日本の制度にそのまま重ねることはできない。

読み取れるのは、国を代表することと、国の判断から独立して表現することが、必ずしも同じ仕組みで支えられてはいないという点だ。2月20日時点で空館は文化省の決定として発表され、作家は控訴の意向を示していた。作品が届かなかった経路そのものが、国際展の制度を照らしている。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年2月20日(金))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 論評Artforum2026-02-20

    South African Presence at Venice Biennale Uncertain after Court Rulingartforum.com ↗

    “The South African culture ministry announced on February 20 that no artist will represent the nation at the Venice Biennale and that nation’s pavilion would remain empty.”

    南アフリカ文化省は2月20日、ヴェネツィア・ビエンナーレに国を代表する作家は参加せず、同国のパビリオンは空のままになると発表した。

    確認日 2026-10-18

PUBLISHED 2026.02.20 · 著者 Andown · 引用元 Artforum