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順位だけでは見えない育ち方
データと専門家が並べる、規模の異なる新進音楽家5組
路上演奏から月間リスナー220万人へ。発表曲が3曲の段階で、レコードが完売したバンドもいる。2026年3月のChartmetricの選出には、異なる規模と経路の音楽家が並んだ。データと専門家の知見を重ねる選び方から、ひとつの順位だけでは捉えにくい、音楽の届き方と活動の育ち方を読む。

「新進」を、ひとつの順位に閉じない
2026年3月20日、Chartmetricの月例企画「Tomorrow's Five」は5組の音楽家を紹介した。選出に用いるのは、自社のデータと音楽の専門家の知見。その顔ぶれを見ると、同じ「新進」という枠の内側に、規模も活動歴も違う音楽家がいることがわかる。
掲載されたChartmetricの順位は、Naomi SharonNaomi SharonSpotify で探すApple Musicの4,817位からTruthpasteTruthpasteSpotify で探すApple Musicの267,544位まで開く。一方には配信サービスの主要な選曲枠で存在感を増す歌手。他方には発表曲がまだ3曲のバンド。同記事は順位の算出方法を示しておらず、この差を人気や将来性の差とそのまま読み替えることはできない。
ここにある兆しは、順位を捨てることではない。順位とともに、路上演奏、レコードの完売、制作参加、多言語の歌唱といった活動の文脈を置くことだ。数値の大小とは別に、「どこで、どう届いているか」を読む余地がつくられている。
220万人と3曲、それぞれの手応え
ベルリンを拠点とする南アフリカ出身のAlice Phoebe LouAlice Phoebe LouSpotify で探すApple Musicは、Spotifyの月間リスナー月間リスナーげっかんりすなーMonthly listeners月単位でアーティストを聴いた人の規模を示す指標。Spotifyでは熱心に繰り返し聴く人も、一曲だけ接した人も含まれ、来場や購入の意思を直接示す数字ではない。用語集で詳しくが220万人に達する独立系アーティストだ。路上演奏で認知を得て、2016年に初のフルアルバムを発表。2025年10月には『Oblivion』を出し、記事公開時点では米国、カナダ、欧州を巡っていた。独立した活動と大きな聴取規模が、ここでは同居している。
対照的に、マンチェスターの大学で出会った友人たちによる5人組TruthpasteTruthpasteSpotify で探すApple Musicは、発表曲が3曲という段階にある。それでもレコード作品2作が完売し、Green Man Festivalにも出演した。ただし、プレス枚数や売上額は記されていない。大規模な成功の証明ではなく、作品を買う人と公演を受け止める場が、早い段階から存在するという手応えだ。
Naomi SharonNaomi SharonSpotify で探すApple Musicには別の経路がある。自主的なシングル発表を経てOVO Soundに所属し、Spotifyの「Chilled R&B」「R&B Right Now」といったエディトリアル・プレイリストエディトリアル・プレイリストEditorial Playlist配信サービスの編集担当者が選曲・編成するプレイリスト。年代、ジャンル、気分などの切り口で作品への入口をつくるが、掲載は聴取そのものとは異なる。用語集で詳しくで楽曲が好調だという。配信側の選曲は、この5組の世界から排除されていない。独立系の動きを読むことと、プラットフォーム上の支援を見ることは、対立する作業ではない。
作品の外側にも、広がる経路がある
選出は、本人名義の楽曲がどれだけ聴かれるかにも閉じていない。ニューヨークを拠点とするEartheaterEartheaterSpotify で探すApple Musicは、実験的な電子音楽の活動に加え、FKA twigsFKA twigsSpotify で探すApple Musicの『EUSEXUA』でプロデューサーとしてクレジット制作クレジットせいさくくれじっとRecording credits楽曲や録音の制作に関わった人と、その役割を示す情報。歌い手だけでなく、演奏や録音などの担い手を知り、別の作品へ進む手がかりにもなる。用語集で詳しくされている。同作は2026年のグラミー賞で最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバムを受賞。3月に始まったFKA twigsFKA twigsSpotify で探すApple Musicのツアーでは、前座も務めている。
ロンドンのデュオKit SebastianKit SebastianSpotify で探すApple Musicは、英語、トルコ語、フランス語で歌う。記事によれば、ファン層の国別分布は比較的均等で、上位は米国、ドイツ、トルコ、英国、ポーランドだ。国別の比率や集計方法は示されていないものの、単一の出身国だけでは捉えにくい広がりが紹介されている。映像も自ら制作・監督し、クリエイティブ・コントロールクリエイティブ・コントロールCreative control作品の内容や表現について、制作者が判断できる権限。制作資金の提供や作品の所有権とは別の論点で、どこまで裁量を持てるかは契約によって異なる。用語集で詳しくを保っているという。
この時点から1〜3年先を見るなら、注目する余地があるのは、こうした複数の経路を併せて語る紹介の仕方だ。制作への参加、公演での接点、国をまたぐ聴取、作品を買う行動。それらを順位に添えることで、まだ規模の小さい活動も紹介の対象になり得る。ただし、この5例から、どの経路が成長につながるかまでは判断できない。
日本から読む、数字の余白
日本から見る際、この5組をそのまま「海外で次に売れる名前」の一覧として受け取ると、記事の面白さは薄れる。月間リスナー月間リスナーげっかんりすなーMonthly listeners月単位でアーティストを聴いた人の規模を示す指標。Spotifyでは熱心に繰り返し聴く人も、一曲だけ接した人も含まれ、来場や購入の意思を直接示す数字ではない。用語集で詳しくとレコード完売では、示している接点が違う。独立系という説明も、全員に同じ条件で当てはまるわけではない。所属、活動歴、作品の届け方を分けて読むと、それぞれの輪郭が見えてくる。
出典には日本の聴取者数や販売状況がなく、日本市場との規模の比較はできない。むしろ読み取れるのは、国や活動段階の異なる音楽家を、数値と専門家の言葉を重ねて紹介する方法である。データが発見を代行するのでも、人の耳がデータを退けるのでもない。両者を並べることで見える活動がある。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年3月20日(金))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 一次Chartmetric(How Music Charts)2026-03-20
“This monthly column highlights emerging artists using a combination of Chartmetric data and knowledge from music experts.”
この月例コラムは、Chartmetricのデータと音楽の専門家の知見を組み合わせ、新進アーティストを紹介する。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- Naomi SharonSpotify で探すApple Music
- TruthpasteSpotify で探すApple Music
- Alice Phoebe LouSpotify で探すApple Music
- EartheaterSpotify で探すApple Music
- FKA twigsSpotify で探すApple Music
- Kit SebastianSpotify で探すApple Music


