1–3 YEARS · シーンと言説の潮流著作権の再発明

削除通知と契約のあいだにある境界

Xが音楽出版社を提訴、楽曲許諾の共同交渉を独禁法で争う

2026年1月9日、Xは音楽出版社と業界団体を反トラスト法違反で提訴した。大量の削除通知は正当な権利行使なのか、それとも共同契約を迫る圧力なのか。1月11日時点の兆しとして見えるのは、投稿に含まれる楽曲の利用許諾だけでなく、権利者が共同で交渉する仕組み自体が争点になったことだ。

クリーム色の背景に、楽曲を表す円盤と青い契約書を配置し、その間を複数の赤い通知片が横切る抽象的な平面イラスト。

支払いの争いから、交渉の仕組みへ

音楽の利用料を払うかどうか。その対立が、誰と、どのように契約するかという争いへ移っている。Xは2026年1月9日、米テキサス州北部地区連邦地裁に、音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくと全米音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく協会(NMPA)を相手取る訴訟を起こした。1月11日時点でそこにあった兆しは、楽曲のライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくをまとめる仕組みそのものが、競争の観点から問われ始めたことだ。

訴状が被告として挙げるのは、音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく18社とその関連会社、そしてNMPA。ソニー、ユニバーサル、ワーナー・チャペルの各音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく会社に加え、BMGやコバルトなどが含まれる。Xは、各社が個別の取引を拒み、業界全体との契約を割高な条件で結ぶよう迫ったと主張する。これはX側の申し立てであり、違法な協調が認定されたわけではない。

焦点は、DMCADMCAディーエムシーエーDigital Millennium Copyright Act米国のデジタル著作権法。ネット上の侵害に対する削除通知や、一定の条件を満たすサービス提供者の責任制限を定め、本件の通知制度の背景となる。用語集で詳しくに基づく大量の削除通知だ。権利を守るための通知と、契約交渉の圧力。その境界をどう捉えるかで、両者の説明は分かれる。NMPAは、Xによる長年の著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくを主張し、今回の訴訟は出版社と作詞・作曲家の正当な権利行使から注意をそらすものだと反論している。

削除通知の量と、許諾を束ねる理由

Xの訴状によれば、NMPAからの削除通知は2021年12月からほぼ毎週届き、最初の1年間だけで20万件超の投稿が対象になった。大手出版社が加わったとされる2023年以降には、約50万件の投稿が通知で特定されたという。さらに、著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくの申し立てを受けて5万人超の利用者を停止したとしている。いずれも訴状上の数字である。

Xは、高校の表彰式で短時間流れた背景音楽など、正当な侵害主張の対象にならない投稿まで削除を求められたとも述べる。ただし、その利用が実際に侵害に当たるかは別の判断を要する。通知の規模だけで、その正当性や不当性が決まるわけではない。

一方、出典記事は、出版社とのライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約が他の主要な投稿サービスにも存在すると指摘する。利用者が多様な楽曲を持ち込む場では、許諾をまとめることが契約の効率につながり得る。X自身の訴状も、YouTube、Facebook、Instagramなどが出版社と契約し、その交渉にNMPAが関与した例を認めている。共同交渉には、競争を狭めるという見方と、権利処理を進めるという見方が重なる。

背景には、すでに続いていた著作権訴訟がある。出版社側は2023年6月、約1,700作品をめぐり、2億5,000万ドル超の損害賠償をXに求めた。2025年6月には和解交渉和解交渉わかいこうしょうSettlement negotiations訴訟などの紛争を、当事者間の合意によって解決するための話し合い。交渉の報道は合意成立を意味せず、条件次第で競争上の問題への対応も異なる。用語集で詳しくのため90日間の手続き停止が認められ、同年11月25日の裁判所への報告では大幅な進展が伝えられていた。今回の提訴は、その交渉と並んで、反トラスト法反トラスト法はんとらすとほうAntitrust Law企業間の競争を不当に制限する合意や独占行為などを規制する米国の法律の総称。本件では、出版社による共同交渉や削除通知の実施方法が問題とされている。用語集で詳しくという別の争点を持ち込んだものだ。

共同交渉を残し、境界を引き直す可能性

この時点から1〜3年を見るなら、注目点は単純な勝敗だけではない。削除通知の対象をどう選ぶか。業界団体の調整と、各出版社の独立した契約判断をどう区別するか。共同交渉の効率と競争への影響が争われることで、契約に至る手続きの説明が、より重要になる可能性がある。

出典記事には、対立が契約へ移った先例もある。Twitchは削除通知の集中後、2021年9月にNMPAとの合意を発表した。RobloxRobloxRobloxユーザーが制作したゲームや体験を公開し、他の利用者が遊べるプラットフォーム。音楽施策では、専用空間の制作と既存ゲームへの参加を区別して見ると理解しやすい。用語集で詳しくも同月、訴訟を和解し、対象となる出版社が任意参加できる交渉の枠組みを設けた。ただし、合意の存在だけで、Xでも同じ着地になるとは言えない。見えているのは、削除か放置かという二択の外側に、利用と対価を結び直す交渉の余地があることだ。

日本から見る、投稿の裏側の契約

日本から読む際には、争われている権利の対象にも注意が要る。本件の中心は、録音された音源そのものではなく、作詞・作曲に関わる楽曲の利用許諾である。動画に音楽が入っているという一つの出来事の裏側に、異なる権利と契約がある。出典は日本の契約状況を扱っておらず、米国の対立をそのまま国内の制度評価へ移すことはできない。

それでも読み取れるのは、投稿できることと、その利用を支える契約が成立していることは同じではないという構造だ。今回の争いでは、楽曲への対価だけでなく、多数の権利者と巨大なサービスをつなぐ方法までが表に出た。権利行使と共同交渉をどこで分けるのか。その境界が、音楽を含む日常の投稿を支える条件として見え始めている。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月11日(日))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-01-12

    Elon Musk’s X sues music publishers, alleges industry ‘collusion’musicbusinessworldwide.com ↗

    “X/Twitter is the only major social media company that does not license the songs on its platform.”

    X/Twitterは、自社のプラットフォーム上の楽曲について利用許諾を得ていない唯一の主要ソーシャルメディア企業だ。

    確認日 2026-10-18