NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動AI生成音楽声の権利
曲の外側で始まったルールの点検
AI音楽の管理が多層化、26万件超の削除要請と契約調査
ソニー・ミュージックによるAIなりすまし音源の削除要請が、9月末までに26万件を超えた。同じ週、イタリアではSunoの利用規約に調査が入り、米国ではストリーミング不正の実態調査が始まった。2026年10月9日までの動きから、声の保護だけでなく、契約と収益分配へ広がるAI音楽の管理を読む。

声を守る作業が、26万件を超えた
ソニー・ミュージックは9月末までに、所属アーティストになりすましたAI生成音源について、26万件を超える削除をデジタル配信サービスなどに求めた。対象にはハリー・スタイルズハリー・スタイルズ Harry StylesSpotify で探すApple Music、アデルアデル AdeleSpotify で探すApple Music、マイケル・ジャクソンマイケル・ジャクソン Michael JacksonSpotify で探すApple Musicが含まれる。これは削除が完了した件数ではなく、同社が要請した件数である。
声や歌い方を本人のものに見せかけるディープフェイクディープフェイクDeepfakeAIで人物の声や姿を本物らしく生成・加工した音声や映像。本人の発言や行動と誤認されることで、同意や誤情報をめぐる問題が生じる。用語集で詳しく。その管理は、個別の偽物を見つける作業だけでは捉えにくくなっている。3月末までの削除要請は13万5000件。9月末の数字はそのほぼ倍で、MBWは4〜9月の追加分を月平均2万件超と算出した。ただし、この数字だけから、流通する偽音源の総数や増加率までは分からない。
同じ週に表面化したのは、声の保護とは別の問題でもあった。イタリアではAI音楽サービスの利用規約が調査対象となり、米国では再生回数を不正に作る仕組みへの情報収集が始まった。2026年10月9日までに見えていた兆しは、AI音楽の点検が、生成された曲から契約と収益の流れへ広がっていることである。
利用者の契約と、再生の対価
イタリアの競争当局は10月6日、Sunoの利用規約に関する調査を公表した。当局が挙げた懸念は、価格変更、アカウントの停止・終了、米国での仲裁仲裁ちゅうさいArbitration裁判所の判決ではなく、当事者が判断を委ねた仲裁人によって紛争を解決する手続き。公開範囲や利用条件は、契約と適用される法制度によって異なる。用語集で詳しく、そして利用者に著作者人格権著作者人格権ちょさくしゃじんかくけんMoral rights作品と作者の人格的な結びつきを保護する権利。作者名の表示や作品の改変などに関わる。経済的な利用を認める権利とは異なり、制度や扱いは国によって違う。用語集で詳しくの放棄を求めるとするコンテンツの利用条件である。契約上の権利と義務に、消費者に不利な大きな不均衡が生じる可能性を調べる。違反が確定したという発表ではない。
ここで焦点になるのは、AIで何を作れるかだけではない。作ったものをサービス側がどこまで使えるのか。利用をやめるとき、どの条件が適用されるのか。AI音楽サービスの契約は、作品の権利処理と同時に、消費者保護の対象としても点検され始めている。
米国著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく局は翌7日、ストリーミング不正ストリーミング不正Streaming fraud実際の聴取ではない再生を人為的に生み出すなど、音楽配信サービスを操作して収益を得る行為。正当な再生に基づく収益分配や、サービスへの信頼を損なう。用語集で詳しくについて公開の情報募集を始めた。手口、経済的影響、AI生成音楽との関係が調査項目となる。意見の提出期限は11月23日、寄せられた意見への応答期限は12月21日。技術の是非を一括して問うのではなく、再生と支払いの仕組みで何が起きているかを集める段階だ。
その前日には、AI楽曲とボットを使った不正に関わるマイケル・スミスに、禁錮18か月の判決が出た。検察によれば、この仕組みが生んだ使用料は800万ドル超。ただし、判決と情報募集が日を接していたことと、後者が前者を直接の理由に始まったことは同じではない。出典から確認できるのは、刑事事件への対応と制度的な実態把握が並行していることまでである。
生成サービスは、ライブの入口にも向かう
一方、Sunoは事業の接点を広げている。Ticketmaster出身のマイケル・チュアを、ライブ事業を率いる幹部に迎えた。担当にはコンサート発見サービスのSongkickも含まれる。生成の画面の内側だけでなく、観客が公演を探す入口にも、AI音楽企業が関わる配置だ。
Sunoは2025年11月、ワーナー・ミュージック・グループとの著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく訴訟を解決するライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約の一環として、Songkickを取得していた。今回の人事は、そのライブ関連事業を担う責任者の就任である。AI生成曲の公演が始まる、あるいは既存のライブ市場が置き換わるという発表ではない。
この時点から先の数年を見るなら、確かめる対象は生成音源の品質だけではなくなる可能性がある。本人らしさの無断利用、契約条件、再生による収益、観客との接点。それぞれに異なる管理が必要になるためだ。ただし、削除要請がどれほど実行され、調査がどんな判断に結びつき、ライブ事業がどう具体化するかは、まだ示されていない。
日本から見ると、別々の権利が見えてくる
今回の出典には、日本の削除要請件数や利用規約をめぐる調査状況はない。国内との進み具合の比較はできない。そのうえで読み取れるのは、アーティストの声を守ること、サービス利用者の契約上の立場を守ること、正当な再生に対価を届けることが、同じ「AI音楽」の中にある別々の課題だという点である。
海外の動きを、AIへの賛否だけで読むと、この違いは見えにくい。削除要請を出す権利者、契約を調べる当局、不正の実態を集める機関は、それぞれ違う場所を見ている。生成技術の広がりとともに、その周囲の取引や流通も点検の対象になっている。そこに、今回の週報から拾える変化がある。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年10月9日(金))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-10-10
“By the end of September, Sony Music had asked digital platforms to take down more than 260,000 AI-generated tracks impersonating its artists.”
9月末までに、ソニー・ミュージックは所属アーティストになりすました26万件超のAI生成音源を削除するよう、デジタルプラットフォームに求めていた。
確認日 2026-10-18
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- ハリー・スタイルズSpotify で探すApple Music
- アデルSpotify で探すApple Music
- マイケル・ジャクソンSpotify で探すApple Music


