1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明
許諾の先に残る、学習の履歴
Sunoの新モデル訴訟、争点は「ユーザーデータ」の来歴
許諾された音楽を学ぶ新モデルでも、過去の学習との関係は切れるのか。UMGとSony MusicがSunoに起こした新たな訴訟は、旧モデルの出力や利用者の選好データに焦点を当てる。2026年9月21日の報道から見えるのは、素材の許諾だけでなく、学習の来歴をめぐる争いの広がりである。

新しいモデルに、過去は残る
音楽生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの学習素材にライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくが加わっても、それだけで過去との境界が引けるとは限らない。2026年9月21日、Music Allyは、Universal Music Group(UMG)とSony MusicがSunoに対し、著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくを訴える新たな訴状を提出したと報じた。両社による二度目の提訴である。焦点は、新しいv6モデルにも向けられている。
同媒体によれば、v6はWMGとBMGから許諾された音楽に加え、「ユーザーデータ」を含む新たな学習データ学習データがくしゅうデータTraining DataAIがパターンや特徴を学ぶために使うデータ。音楽では楽曲や音声などが対象になり得るが、個別サービスの収集内容や利用条件は、開示資料などによる確認が必要となる。用語集で詳しくで訓練された。原告側が着目したのは後者だ。利用者とのやり取りが、旧モデルの出力や、そこから得られる好みの情報を含むなら、新モデルも過去の学習に依存しているのではないか、という主張である。
兆しは、訴訟の対象がモデルの世代交代を追い始めたことにある。何を直接読み込ませたかだけではなく、以前のモデルが生んだものをどう引き継いだか。学習素材の一覧に加え、その素材が生まれた経路も争点として浮上している。
6万件の録音と、数に表れない経路
新たな訴状は、Sunoが過去の学習過程でコピーしたと原告側が考える録音を60,202件挙げている。原告側は、それでも侵害された自社作品の一部にすぎないと述べる。ただし、この数字は訴状に記された原告側の主張であり、裁判所が侵害を認定した件数ではない。
v6についても、報道が伝えるのは原告側の論理だ。訴状は、Sunoが旧モデルとの「ユーザーのやり取り」を学習に用いたと認めたとし、その中身を旧モデルの出力と選好データだと主張する。さらに、旧モデルの合成データ合成データごうせいデータSynthetic data実際に収集した素材の代わりや補助として、人工的に作る学習用データ。音楽AIでも利用が論点となり、既存音源をどれだけ必要とするかという交渉の前提に関わる。用語集で詳しくに当たる出力を学習したとも示唆している。両者は区別が必要だ。好みを示す情報と、生成された音そのものは同じ素材ではない。
原告側は、これらが無許諾での録音のコピーによって初めて存在した素材だと位置づける。一方、Sunoの最高製品責任者Jack Brodyは、Music Allyの先行インタビューで、この局面を同社の「新たな章」と表現していた。新しい出発という説明と、過去の利用の継続という訴え。その隔たりが今回の提訴に表れている。
許諾の有無から、継承の説明へ
この報道から見通せる今後の論点は、許諾された音楽と、それ以外の学習素材をどう説明し分けるかである。WMGとBMGの音楽を使うことへの許諾と、UMGやSony Musicが問題にする過去の利用は、別の関係にある。新しい契約の存在だけでは、旧モデル由来の素材をめぐる訴えへの答えにはならない、というのが原告側の立場だ。
今後1〜3年で同様の争点が広がるとすれば、モデルを更新する際のデータの来歴が焦点になる可能性がある。生成された音を次の学習に使ったのか。利用者の選択を、どのモデルから得たのか。モデル単体の説明に加え、世代間で何を引き継いだかを示す説明が問われると見られる。これは将来の論点であって、今回の訴えの結論ではない。
境界も残る。旧モデルの出力や選好データを使うことが、どの条件で侵害に当たるのかは、この記事では示されていない。報道時点で新訴状へのSunoの反論も紹介されておらず、Music Allyは今後の反論書面や声明を伝えるとしていた。原告側の比喩を、そのまま法的な結論として読むことはできない。
日本から見ると、名称よりも中身
日本からこの動きを読む際、まず違いとして押さえられるのは、米国のレーベルとSunoの具体的な紛争を扱う報道だという点である。出典は日本の契約や法制度との比較をしていない。そのため、日本でも同じ法的判断になるという見通しは、この材料からは立てられない。
それでも、「ユーザーデータ」という名称の内側に目を向ける視点は読み取れる。利用者が直接持ち込んだ素材なのか、AIが生成した音なのか、出力への好みなのか。同じ呼び名でも、原告側はその由来を分けて問うている。許諾済みの素材が増える局面で、なお残る学習の履歴。新モデルの説明をめぐる、もう一つの争点である。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年9月21日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Ally2026-09-21
UMG and Sony Music file new Suno complaint over v6 modelsmusically.com ↗
“The new complaint cites 60,202 sound recordings that the labels believe Suno has copied in its past training process, adding that “in reality they remain only a small portion of Plaintiff’s works that Suno infringed”.”
新たな訴状は、レーベル側がSunoによって過去の学習過程でコピーされたと考える60,202件の録音を挙げ、「実際には、それらもSunoが侵害した原告の作品のごく一部にとどまる」と付け加えている。
確認日 2026-10-18


