1–3 YEARS · シーンと言説の潮流K-POP以後レーベル2.0
育成の経験を、新しい器へ移す
HYBE、ガールズグループ専業の新レーベルABDを設立
HYBEがガールズグループ育成に特化したABDを設立した。PLEDISで経験を積んだ経営・制作の人材を配し、2026年後半の初グループのデビューを計画する。海外でも新たなグループの発掘が進むなか、制作の経験を別の組織へ移し、異なる個性につなげようとするレーベル設計が見える。

新しいグループより先に、育成の器をつくる
2026年5月8日、HYBEはガールズグループ育成に特化した新レーベル、ABDの設立を発表した。名称は「A Bold Dream」の略。最初のグループは同年後半のデビューを予定する。5月11日付のMusic Business Worldwideが伝えた段階では、メンバーや楽曲ではなく、誰が運営し、誰が制作を担うのかが示されている。
社長に就くのは、傘下のPLEDISでアーティスト企画責任者を務めたノ・ジウォン。経営全般と戦略を担う。一方、SEVENTEENSEVENTEENSpotify で探すApple Musicなどを手がけたプロデューサーでPLEDIS創業者のハン・ソンスハン・ソンス Sung Soo HanSpotify で探すが、音楽、コンセプト、パフォーマンスにまたがる制作全体を率いる。経営と制作の担当を分けた布陣だ。
兆しは、アーティスト開発アーティスト開発Artist development才能の発掘から活動の方向づけ、観客との関係づくりまで、アーティストのキャリアを継続して育てる仕事。今回の買収では、地域に蓄積された専門性として重視されている。用語集で詳しくの経験を、新しい専門組織へ移している点にある。既存レーベルで次のグループを送り出すだけでなく、ガールズグループに焦点を絞った別の器を設ける。ただし、ABDの育成方法や契約条件は記事では明かされていない。専業化が何を変えるかは、まだ制作体制の輪郭として見える段階である。
独立した判断と、グループの資源
HYBEはABDの設立を、複数のレーベルを傘下に置くマルチレーベルマルチレーベルMulti-label一つの企業グループが複数のレーベルを持つ体制。制作方針や担当アーティストを分けながら、資金や事業基盤を共有できるが、各社の裁量は組織によって異なる。用語集で詳しく戦略の一環と位置づける。狙いとして掲げるのは、他と異なる知的財産と芸術的な個性の創出だ。規模を一つの作風へ集約するのではなく、異なる制作単位を増やすという説明である。
その前提には、買収後も制作の判断を各レーベルに残すという考え方がある。HYBEは2020年にPLEDISの過半数株式を取得した。ハンは2024年の同媒体の取材で、PLEDISは創作の自由を持つ独立したレーベルとして活動し、HYBEの資源も活用していると説明していた。
2026年4月の取材でも、HYBE側はアーティスト固有の個性と独立した意思決定を尊重し、最終判断はレーベルにあると述べている。これは会社側が説明するクリエイティブ・コントロールクリエイティブ・コントロールCreative control作品の内容や表現について、制作者が判断できる権限。制作資金の提供や作品の所有権とは別の論点で、どこまで裁量を持てるかは契約によって異なる。用語集で詳しくのあり方であり、実際の権限配分を外部から検証した結果ではない。ABDの具体的な決裁権限まで公表されたわけでもない。
事業の規模も拡大している。HYBEの2026年第1四半期売上高は6983億ウォンで、前年同期比39.5%増。同社の第1四半期として過去最高となった。ただし、この数字だけで新レーベル設立の資金的背景や採算は判断できない。確認できるのは、売上拡大と制作組織の新設が同じ時期に進んでいることだ。
海外での発掘と、国内での専門化が並走する
同時期のHYBEは、K-POPの方法論を韓国外へ展開するため、海外でのオーディションも進めている。4月にはインドで新しいガールズグループを探す全国規模の募集を開始。Geffen Recordsとの提携では、KATSEYEKATSEYESpotify で探すApple Musicに続くグループの人材探しが前年に日本で始まっていた。ABDだけを見ていては捉えにくい、育成拠点と対象市場を広げる動きである。
その背景を示す例がKATSEYEKATSEYESpotify で探すApple Musicだ。記事によれば、Spotifyの月間リスナー月間リスナーげっかんりすなーMonthly listeners月単位でアーティストを聴いた人の規模を示す指標。Spotifyでは熱心に繰り返し聴く人も、一曲だけ接した人も含まれ、来場や購入の意思を直接示す数字ではない。用語集で詳しくは3200万人を超え、最初のEP2作品の合計販売枚数は100万枚に達した。ただし、聴取者数と販売枚数は異なる指標であり、この実績が別のグループにも再現されるとは限らない。海外展開への関心を支える一例として読むのが妥当だ。
今後1〜3年の見通しとして注目されるのは、制作経験の共有と、各グループの違いをどう両立させるかである。ABDの専門化と海外での発掘は並走しているが、ABD自体が海外拠点や現地育成を計画しているとは記事にない。両者を同じ事業とみなすことはできない。広がり得るのは、共通の資源を使いながら、制作の単位を分けるという組織の発想だ。
日本から見ると、輸出先だけではない
日本との接点は、完成したグループの受け入れにとどまらない。HYBEとGeffen Recordsによる次のグループの人材探しは、日本を起点に始まっていた。日本での動きが国境をまたぐ人材発掘であるのに対し、ABDで示されたのは、韓国で蓄積された経営・制作経験を新しい組織へ移す設計だ。
ここから日本の育成制度全体との優劣までは語れない。ただ、K-POPの海外展開を楽曲や出演者の移動だけで捉えると、レーベルという制作の器の変化を見落とす可能性がある。2026年5月時点で見えていたのは、経験を共有することと、別の個性をつくることを、組織の構造で両立させようとする動きだった。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年5月11日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-05-11
“Guided by a deep understanding of both artists and fans, the new label aims to pursue the intrinsic joy of music while exploring new possibilities and expanding the horizons of K-pop”
アーティストとファンの双方への深い理解を指針に、新レーベルは音楽そのものの喜びを追求しながら、新たな可能性を探り、K-POPの地平を広げることを目指す。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- SEVENTEENSpotify で探すApple Music
- ハン・ソンスSpotify で探す
- KATSEYESpotify で探すApple Music


