1–3 YEARS · シーンと言説の潮流K-POP以後レーベル2.0
輸出の先にある制作基盤の共有
SMが描くK-POPの越境、楽曲資産と現地協業を軸に
SM Entertainmentが示した「NEXT 3.0」は、海外にアーティストを送り出すだけの成長戦略ではない。楽曲の権利管理、AIによる選曲支援、地域ごとの協業を組み合わせ、制作の基盤そのものを広げる構想だ。2026年1月の発表から、K-POPの越境を支えるレーベルの役割を読む。

アーティストの輸出から、制作基盤の越境へ
K-POPの海外展開を、完成した楽曲やグループの輸出だけで捉えない。SM Entertainmentが2026年1月に示した「SM NEXT 3.0」には、そうした読み方ができる。共同CEOのDaniel JangとDmitry YJ Takらが発表したのは、制作体制、音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく、AI、現地企業との協業を束ねた成長構想である。
制作面では、従来の「SM 3.0」から「Multi-Creative」構造への移行を掲げた。固定された制作の階層ではなく、アーティストを中心に、企画ごとに適したクリエイティブチームを柔軟に組むという。ここで示されたのは、アーティストの変化に合わせて制作側の組み合わせも変える設計だ。創作上の意思決定をどこまで本人に委ねるかは、記事からは分からない。
同時に、音楽と関連産業でのM&AM&AエムアンドエーMergers and acquisitions企業の合併や買収を指す言葉。事業規模だけでなく、人材、専門知識、取引関係などを取り込む手段にもなる。今回の記事は買収を伝えるが、金額や取得比率は示していない。用語集で詳しくを過去3年より積極化し、成長に向けた資本投下を増やす方針も示した。兆しは、作品を生む体制と、それを支える権利・技術・提携先を一体で拡張しようとしている点にある。ただし、個別の買収先や投資額は明らかにされていない。
7,000曲超の資産を、次の選曲につなぐ
この構想の具体的な足場が、音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく子会社Kreation Music Rights(KMR)だ。発表によると、KMRは2025年に韓国と欧州から米国へ事業を広げた。世界の370人超の作曲家と専属またはサブパブリッシング契約を結び、7,000曲超の主要なK-POP楽曲からなるカタログカタログMusic catalogアーティストなどが持つ楽曲群や、それに関わる権利のまとまり。投資の文脈では、作品の知名度だけでなく、将来どれだけ収入を生むかという観点から取引される。用語集で詳しくを管理している。SMは、この基盤から5年以内にアジア最大かつ最も尊敬される音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくを目指すとした。これは到達済みの地位ではなく、会社が掲げた目標である。
AIの用途として示されたのも、まずは蓄積した楽曲を生かす仕組みだった。A&RA&RエーアンドアールArtists and Repertoireアーティストの発掘や育成、楽曲・制作方針の検討などを担うレーベルの機能。広告や宣伝を中心とするマーケティングとは区別されるが、活動を支えるうえで連動する。用語集で詳しくを統括するChris Leeは、SMの30年にわたる数万曲を分析し、各アーティストに適した楽曲を推薦する使い方を説明した。ファンそれぞれの好みに合う音楽の発見を助ける可能性にも触れている。KMRの管理曲数と、この分析対象の規模は、同じ集計として示された数字ではない。
つまり、今回の説明の中心は、AIが新曲を自動で作ることではない。既存の楽曲とアーティスト、聴き手との接点を探す支援である。Jangは、主要株主KakaoのAI技術を活用できる点を強みとした。ただし、導入時期や選曲精度、分析に用いる権利の範囲までは報じられていない。
投資拡大の背景には、直近の業績もある。2025年第3四半期の営業利益は前年同期比261.6%増の482億ウォン。記事は、ヒットアルバム、コンサート収入の増加、ファン向けサービスを運営するDearUの成長を要因に挙げる。音源以外の接点も収益を支えるなかで、SMは公演体験や生活用品への商品展開も戦略に含めている。
現地に合わせる範囲が、次の焦点になる
地域展開では、中国のTencent Music Entertainment、タイのTrueとの協業が示され、日本では複数の相手と協議中だとされた。狙いは、SMの創作上の個性を保ちながら、各地域で共感される知的財産を生むことにある。作品を同じ形で届けるだけでなく、現地のパートナーと何を作るかが戦略に入っている。
発表時点からの1〜3年で注目されるのは、柔軟な制作チーム、楽曲の蓄積、地域の協業先が、どこまで一つの制作工程として結びつくかだ。AIによる推薦が制作候補の選定を支え、現地企業の知見が企画に反映される可能性はある。一方で、地域に合わせる判断とSMらしさを保つ判断をどう両立するかは、まだ構想の段階にある。
音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの5年目標は、それより長い時間軸だ。管理する楽曲が増えることと、新しい地域で作品が支持されることは同義ではない。買収や契約の規模だけでなく、蓄積された楽曲を誰の表現につなぐのか。その接続の仕方に、レーベルの役割が広がる余地が見える。
日本から見ると、協議中という余白
日本について読み取れる事実は、提携先も企画内容も、まだ発表されていないことだ。中国とタイでは相手企業が明示されたのに対し、日本は複数社との協議段階にある。この出典だけでは日本側の制作体制との優劣や、日本向け事業の形までは比較できない。
それでも、日本を単なる販売先ではなく、現地に響く作品を作る協業先として見ていることは分かる。K-POP以後の輸出モデルとしてここに見えるのは、完成品の流通に加え、選曲、権利管理、制作チームの編成までを国境の向こうへ接続する試みだ。日本でその接続がどの形を取るかは、発表時点では開かれている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月20日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-01-21
“We will pursue M&A opportunities within music and related industries more actively than in the past three years, and increase capital investment to accelerate growth”
音楽と関連産業でのM&Aの機会を過去3年より積極的に追求し、成長を加速させるため資本投下を増やす。
確認日 2026-10-18


