届く音と、届く対価のあいだ
隣接権の国際徴収網、サウンドエクスチェンジが拡張
サウンドエクスチェンジは、海外の著作権等管理団体との新たな17件の契約を発表した。利用可能な世界の著作隣接権市場の91%超をカバーするという同団体の説明から見えるのは、楽曲の流通だけでなく、国境を越えて対価を回収する経路の拡張だ。ただし、この数字は徴収額の市場シェアではない。

聴かれた先に、回収の経路をつくる
2026年2月の発表で、サウンドエクスチェンジは海外の著作権等管理団体権利管理団体けんりかんりだんたいCollective management organization多数の権利者に代わり、音楽などの利用に伴う使用料の徴収や分配を担う組織。扱う権利や地域は団体ごとに異なり、海外団体との協定が回収経路になる。用語集で詳しく(CMO権利管理団体けんりかんりだんたいCollective management organization多数の権利者に代わり、音楽などの利用に伴う使用料の徴収や分配を担う組織。扱う権利や地域は団体ごとに異なり、海外団体との協定が回収経路になる。用語集で詳しく)との契約を新たに17件追加したと明らかにした。契約総数は90件超。同団体の説明では、利用可能な世界の著作隣接権著作隣接権ちょさくりんせつけんNeighboring rights歌唱や演奏を行う実演家、録音物を制作する者などに認められる権利。詞や曲の著作権とは別で、保護や対価の対象となる利用は国・地域によって異なる。用語集で詳しく市場の91%超をカバーする規模になった。これは徴収網の対象範囲についての数字であり、徴収額の91%を同団体が占めるという意味ではない。
ここで扱われる著作隣接権著作隣接権ちょさくりんせつけんNeighboring rights歌唱や演奏を行う実演家、録音物を制作する者などに認められる権利。詞や曲の著作権とは別で、保護や対価の対象となる利用は国・地域によって異なる。用語集で詳しくは、詞や曲そのものの著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくとは区別される、実演や録音物に関わる権利だ。音源が海外で利用されても、そこで生じる対価が権利者に届くまでには別の経路が要る。今回広がったのは、音楽を届ける配信網ではなく、その利用に伴う音楽使用料音楽使用料おんがくしようりょうMusic royalties音楽の利用に伴い、権利を持つ側へ支払われる対価。会場が利用許諾のために払うお金と、個々の作り手に分配される金額は、分けて捉える必要がある。用語集で詳しくを国境の向こうから回収するための契約網である。
兆しは、権利を持つことと、対価を受け取れることの間にある実務が、改めて可視化されている点にある。海外での利用を収入につなぐには、相手国の管理団体との接続が必要になる。新しい利用方法を認める契約ではなく、すでにある権利を行使する経路の整備だ。
91%の背後にある、地域ごとの接続
記事によれば、新規契約の大半は2025年に締結された。後半にはバルバドス、パラグアイ、ケニアの団体との権利者向け契約が加わり、2026年にもケニアとノルウェーの団体との契約が成立したという。発表された一覧には、インドやパナマ、エルサルバドル、複数の欧州地域の団体も並ぶ。単一の地域だけを厚くするのではない広がりが見える。
サウンドエクスチェンジは非営利団体で、国際的な音楽使用料音楽使用料おんがくしようりょうMusic royalties音楽の利用に伴い、権利を持つ側へ支払われる対価。会場が利用許諾のために払うお金と、個々の作り手に分配される金額は、分けて捉える必要がある。用語集で詳しくの徴収を委ねるアーティストと権利者は約50万に上ると記事は伝える。同団体が掲げるのは、国際徴収に伴う複雑な管理負担の軽減だ。各地の制度と窓口をつなぐ契約を増やすことには、権利者が個別に海外の手続きを進める負担をまとめて扱うという意味がある。
ただし、91%超という値の算定方法や、対象となる市場の詳しい範囲は記事に示されていない。契約ごとの徴収額、分配までの時間、権利者の受取額の変化も不明だ。比較対象の団体より管理料率が低いという説明も、具体的な料率や比較条件は掲載されていない。確認できるのは契約網の拡張であり、そのまま収入の増加や効率の改善が実証されたわけではない。
次に問われる、網の広さと回収の実効性
この発表時点から先の1〜3年を見るなら、注目点は契約数がさらに増えるかだけではない。新たにつながった地域で、どの利用を把握し、どの権利者に、どのように分配できるのか。対象範囲を広げる段階から、その網が実際に機能するかを確かめる段階へ進む可能性がある。
欧州に加え、中南米やアフリカ、インドの団体が含まれることは、国際徴収の接点が複数の地域に置かれていることを示す。ただし、一覧に国や団体の名があるだけで、その地域のすべての実演家や録音物、あらゆる利用が対象になるとは読めない。実演家向けと権利者向けの契約を区別し、対象となる権利や利用を確認する必要がある構造だ。
今後、徴収や分配の成果が開示されれば、契約網の広さを実際の受取額と照らし合わせて評価できる。逆に、到達範囲の数字だけでは、回収の取りこぼしや費用の実態までは見えない。ネットワークの拡大と、その成果の透明性。両者がどこまで結びつくかが、この動きの広がりを読む手がかりになる。
日本から見る、海外利用のもう一つの地図
日本との違いを論じるには留保が要る。この記事には、日本の管理団体との契約状況や国内の徴収実務との比較はない。日本の権利者が今回の追加契約でどれだけ恩恵を受けるかも示されていない。したがって、海外で徴収網が広がったことと、日本からその網を利用できることは分けて捉える必要がある。
それでも、日本から海外の音楽市場を見る際の補助線にはなる。どこで聴かれたかという地図に、どこから対価を回収できるかという地図を重ねること。今回の発表が照らすのは、国境を越える音楽の価値が、流通の広さだけでは完結しないという構造だ。音が届いた場所と、収入が戻る経路。その間をつなぐ仕事が広がっている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年2月11日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Digital Music News2026-02-12
SoundExchange Claims 91% of the Neighboring Rights Marketdigitalmusicnews.com ↗
“On Monday, SoundExchange announced the addition of 17 new agreements with collective management organizations (CMO) worldwide in recent months.”
月曜日、サウンドエクスチェンジは、ここ数カ月で世界各地の著作権等管理団体(CMO)との新たな契約17件を追加したと発表した。
確認日 2026-10-18


