NOW — 数ヶ月〜1年先 · 兆しの初動AI生成音楽ブランド×音楽
既存曲の記憶を、別の音でまとう
ミラノのランウェイで鳴ったカーリー・サイモンのAI再解釈
2026年1月、ミラノのDsquared2のショーで、カーリー・サイモンの楽曲をAIで再解釈した音源が使われた。配信先では曲名や名義が原曲と異なり、AI生成の表示も付く。ブランドの演出に入り込む生成音源と、その来歴の見え方を、当時の報道から読み解く。

既存曲の記憶が、別の音で歩き出す
2026年1月16日、ミラノで開かれたDsquared2の2026年秋コレクション。俳優ハドソン・ウィリアムズが先頭で歩いたランウェイに、カーリー・サイモンカーリー・サイモン Carly SimonSpotify で探すApple Musicの「Let the River Run」をAIで再解釈した音源が流れた。翌17日付のBillboardが伝えたのは、生成音源がブランドの演出を支える場に入った一例である。
約15分のショーのサウンドトラックサウンドトラックSoundtrack映画やゲームに結びついた音楽や、その収録作品を指す言葉。劇伴だけを収める場合も、歌ものや既存曲を含む場合もあり、具体的な収録範囲は作品ごとに確かめる必要がある。用語集で詳しくは、大部分が同曲の再解釈を組み合わせた構成だった。冒頭の2分間は、オーケストラとロックを合わせた解釈。原曲の録音をそのまま使うのではなく、知られた楽曲を別の音の姿にして、服と身体の動きに重ねている。
兆しは、AIの存在を見せるための実演ではなく、ファッションの発表に使う音として採用された点にある。ただし、記事が伝えるのは今回の使用例だ。ブランドがAI音源を選んだ理由や制作への関与、費用は示されていない。採用の事実と、その動機は分けて読む必要がある。
15分の演出と、配信先に残る手がかり
ショーの主題はウィンタースポーツだった。翌月にミラノとコルティナで始まる冬季五輪を控え、ミラノ・メンズ・ファッションウィーク初日の締めくくりとして行われた。スポーツという時節と、映画を通じて知られる楽曲。その組み合わせの中で、AIによる再解釈が使われたのである。
原曲は1988年の映画『Working Girl』のために書かれ、冒頭とエンドクレジット制作クレジットせいさくくれじっとRecording credits楽曲や録音の制作に関わった人と、その役割を示す情報。歌い手だけでなく、演奏や録音などの担い手を知り、別の作品へ進む手がかりにもなる。用語集で詳しくを彩った。アカデミー賞とグラミー賞を受賞し、Billboard Hot 100では49位を記録している。今回の演出が借りたのは旋律だけではない。映画や過去の聴取と結び付いた曲の記憶も、受け手によっては重なる可能性がある。
一方、配信上の曲名は「Running on the Water」だ。Apple MusicではKradexKradexSpotify で探すApple Music、YouTubeとDeezerではDa Soul OrchestraDa Soul OrchestraSpotify で探すという名義で掲載されていると記事は記す。同じ曲名でも、どこで聴くかによってアーティスト欄が異なる。ここではメタデータメタデータMetadata音源そのものとは別に、その内容や属性を説明する情報。今回の構想では、生成AIの関与を示すアイコンの背後で、表示に必要な情報を納品システムとともに支える。用語集で詳しく自体が、音源の来歴をたどる際の手がかりとなる。
Deezerには「AI-generatedAI-GeneratedAI-Generated今回の共通方針で、録音の創作的要素の全体または主要部分を生成AIが作った場合に使うラベル。主たる歌唱や主要な楽器演奏だけを生成した場合も例に含まれる。用語集で詳しく content」の表示があり、同サービスがAI生成と検出したことを示す。Da Soul OrchestraDa Soul OrchestraSpotify で探すのYouTubeの紹介文も、既存の著名曲を新しい様式に作り替えるためAI技術を使うと説明している。AI-GeneratedAI-GeneratedAI-Generated今回の共通方針で、録音の創作的要素の全体または主要部分を生成AIが作った場合に使うラベル。主たる歌唱や主要な楽器演奏だけを生成した場合も例に含まれる。用語集で詳しくという検出結果と、発信者自身の説明。出典が提示する根拠は、この二つである。
広がりを測るのは、用途と来歴
この一件から見えるのは、既存曲を別の様式に作り替えた音源が、配信サービスに置かれるだけでなく、ブランドの現場でも使われたことだ。配信とランウェイは、聴かれる目的も時間も異なる。生成音源の用途が、楽曲単体の鑑賞を越えていることがわかる。
今後数年の広がりを見るなら、同様の音源が演出の選択肢として継続的に使われるかが、一つの観察点になる。ただし、今回の報道には他ブランドの採用件数も、市場規模もない。制作費の削減や作業の高速化が採用を促したとまでは言えず、この事例だけで業界全体の方向を決めることもできない。
もう一つは、音の変化に来歴の表示がどこまで伴うかだ。曲名、名義、AI生成の検出表示、発信者の説明は、それぞれ別の情報である。これらが並んでも、制作工程の全体や原曲に関する許諾条件はわからない。AI表示があることと、権利関係が確認できることは同じではない。記事にも許諾や対価の説明はなく、その空白は残る。
日本から見ると、音だけでは見えない
日本からこのショーを見る際にも、映像に流れる音と、配信先に記載された情報は別々に確かめる対象となる。耳で原曲を思い出せても、検索で出会う曲名や名義は異なるからだ。今回、AI利用の手がかりが示されたのも、Deezerの表示とYouTubeの紹介文だった。
出典は日本のブランドによる採用状況を扱っておらず、国内との普及の差は比較できない。それでも、ミラノの事例から読み取れる変化は具体的だ。既存曲の文化的な記憶を、AIによる別の音で演出に持ち込める。その音がどこから来たのかを示す情報は、聴こえる場所とは別の場所に散らばっている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月17日(土))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Billboard(Business)2026-01-17
Hudson Williams Walks Dsquared2 Runway to AI Carly Simon Remakebillboard.com ↗
“The soundtrack of the 15-minute runway show largely consisted of a mash-up of reworkings of “Let the River Run,” with the opening two minutes scored by an orchestral-rock interpretation of the Academy Award-winning song.”
15分間のランウェイショーのサウンドトラックは、大部分が「Let the River Run」の再解釈を組み合わせたもので、冒頭の2分間には、このアカデミー賞受賞曲をオーケストラとロックで解釈した音源が使われた。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
- カーリー・サイモンSpotify で探すApple Music
- KradexSpotify で探すApple Music
- Da Soul OrchestraSpotify で探す


