1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明

学習の前に、入手経路を問う

音楽出版社が2万曲超で提訴、AI学習とデータ入手を問う

2026年1月28日、音楽出版社の連合がAnthropicを再び提訴した。対象は2万曲超、法定損害賠償の可能額は30億ドル超。争点は生成AIによる歌詞の利用だけでなく、学習資料をどこから入手したかにも及ぶ。同時に原告側にはAI企業との契約例もあり、訴訟と許諾が並走する兆しが見える。

クリーム色の背景に、青い本から伸びる線と、その途中に置かれた赤い鍵穴を描いた抽象的な平面イラスト。

歌詞の出力から、資料の入手経路へ

生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくが何を出力したか。その手前にある、何をどこから集めたか。音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくとAnthropicの争いは、二つの段階を同時に問うものになった。2026年1月28日、Universal Music Publishing音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しく Group(UMPG)、Concord Music Group、ABKCO Musicなどが、米カリフォルニア北部地区連邦地裁に新たな著作権侵害訴訟を起こした。

翌29日付のMusic Business Worldwideによると、対象は2万曲超。原告が示す法定損害賠償法定損害賠償ほうていそんがいばいしょうStatutory damages実際の損害額の立証とは別に、法律で定めた枠組みに基づいて求める損害賠償。訴状に示された可能額は、裁判所が認めた支払額や和解金とは異なる。用語集で詳しくの可能額は30億ドルを超える。ただし、これは認定された侵害件数でも、支払いが確定した金額でもない。提訴時点で原告が掲げた請求の規模である。Anthropicは記事掲載時点で、この訴えに公に回答していなかった。

兆しは、請求額の大きさだけにはない。楽曲を収めた書籍の入手と、その後のAI学習・出力を分けて追及している点だ。音楽の権利をめぐる争いが、完成した音源や生成結果だけでなく、開発用データを集める工程にまで及んでいる。

約500作品の訴えが、2万作品超へ

出版社側は2023年10月にもAnthropicを提訴していた。最初の訴訟で問題とされたのは499作品で、損害賠償の可能額は約7500万ドル。今回の訴状は、違法なダウンロードがあったとされる714作品と、継続的なAI学習に関する2万517作品を対象とする。両者に重複があるかは記事からは分からず、単純に合算はできない。

新たな訴えの柱は二つある。一つは、Anthropicの創業者らがBitTorrentを使い、楽曲集を含む海賊版書籍を入手したという主張。訴状は、2021年6月にBenjamin MannがLibGenから約500万冊をダウンロードし、Dario Amodeiがこれを協議・承認したとする。もう一つは、新しいClaudeモデルでも無許諾の学習が続いているという主張だ。いずれも原告側の申し立てである。

なぜ別の訴訟になったのか。出版社側によれば、問題の入手行為を知ったのは、別件のBartz v. Anthropicで判断が公表された2025年7月だった。既存の訴訟に追加しようとしたが、同年10月に認められなかった。その結果、資料の入手をめぐる請求を別訴で追う形になった。規模の拡大には、新たに表面化した情報と訴訟手続きの双方が関わっている。

訴訟とライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくが並ぶ場所

ここで見落とせないのは、原告側がAIとの契約を一律に退けているわけではないことだ。訴状は、UMPGがUdioやKLAYとライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約を結んでいると記す。そのうえで、出版社と作詞・作曲家の権利を保護する形でAI開発が進む必要がある、という立場を示している。

つまり、この時点で見えるのは、AIを使うか使わないかだけの対立ではない。許諾を得た利用と、権利侵害だと主張される利用が、同じ音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの事業の中で並んでいる。ただし、契約の詳しい条件は記事にない。契約が存在することから、学習データ全般について合意できる条件が整ったとまでは言えない。

ここから1〜3年を見渡すと、資料の入手経路、学習への利用、生成された出力を、それぞれどのように扱うかが、裁判と契約で検討される可能性がある。ある段階の許諾が、別の段階まで覆うとは限らない。今回の訴えは、その区別が実務上の争点になっていることを示す。ただし、法的責任や契約の標準形は、まだ定まっていない。

日本から見る、音源の手前にある権利

日本から読む際には、まず訴訟の対象を取り違えないことが重要になる。これは音楽出版社音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくが、歌詞や楽曲の著作権をめぐって起こした米国の訴訟だ。録音された音そのものを使ったか、という問いだけでは捉えきれない。楽曲集という書籍の形で集められた資料も、音楽の権利問題につながっている。

また、30億ドル超という法定損害賠償法定損害賠償ほうていそんがいばいしょうStatutory damages実際の損害額の立証とは別に、法律で定めた枠組みに基づいて求める損害賠償。訴状に示された可能額は、裁判所が認めた支払額や和解金とは異なる。用語集で詳しくの可能額を、日本で同様の利用があった場合の金額へ直接置き換えることはできない。この記事だけでは、日本の契約や紛争の実態との比較もできない。それでも読み取れるのは、AIと音楽の交点が、生成された曲だけにあるのではないということだ。学習資料の由来と許諾の範囲。その手前の工程にも、権利交渉の焦点が生まれている。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月28日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-01-29

    UMG sues Anthropic for $3bn over ‘brazen’ copyright infringement of 20,000+ songsmusicbusinessworldwide.com ↗

    “The new case also addresses Anthropic’s ongoing violation of these rights by exploiting lyrics in the training of new AI models without authorization, as well as in the outputs generated.”

    今回の新たな訴訟では、新しいAIモデルの学習や生成された出力において歌詞を無許諾で利用する、Anthropicによる継続的な権利侵害も扱う。

    確認日 2026-10-18