1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明

提携の先に残る、同意の境界線

音楽AIの争点は学習許諾から声と契約の分配へ広がる

2025年末、音楽大手とAI企業の間では、訴訟と並行してライセンス契約が動き始めた。だが、学習への許諾だけでは、生成物による既存曲の再現や歌声の模倣まで整理できない。2026年初のCMUの記事から見えるのは、企業間の対立の先に、音楽を作る人の同意と利益配分をめぐる問いが現れ始めたことだ。

クリーム色の背景に、コバルトブルーのレコードと枝分かれする波形を配し、波形の途中にコーラル色の小さな門を描いた抽象イラスト。

訴訟が続くなかで、契約が動き始めた

2025年末、音楽大手とAI企業の関係に、対立だけでは説明できない動きが現れた。CMUによれば、それまで対立していたAI企業との間でライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約が結ばれ、提携が進み始めた。学習に音楽を使う条件を、裁判だけでなく取引でも定めようとする動きである。

ただし、これは著作権をめぐる決着ではない。2026年初の時点で、生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの学習に許諾が必要なのか、どのような生成物に別途同意が必要なのかという問いは残っている。契約の成立と、法律上の答えが出ることは別の出来事だ。

ここにある兆しは、争点の広がりである。音楽業界とAI企業の対立に加え、音楽業界の内部で誰が参加し、誰が利益を得るのかが問われ始めた。企業同士が握手しても、作り手や実演家の同意まで自動的にそろうわけではない。

学習の許諾と、生成された声は別の問題

音楽を作る生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの学習では、通常、数百万の音楽ファイルを集め、サーバーに複製する。権利者側は、その複製にライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくが必要だと主張する。一方、AI企業は著作権の例外や、米国のフェアユースフェアユースFair Use米国著作権法で、利用の目的や性質などに照らし、権利者の許諾なしでも著作物の利用が認められる場合があるという原則。AI学習への適用は争われている。用語集で詳しくによって許諾が不要になると論じている。この食い違いが各地の訴訟につながった。

英国にはテキスト・データマイニングテキスト・データマイニングText and Data Mining文章やデータを機械的に分析し、特徴や関係を取り出すこと。著作権法では、その過程で必要となる複製などを、どの条件で許諾なしに行えるかが論点になる。用語集で詳しくの例外があるが、対象は非商業的な研究に限られる。政府は2024年末、商業利用にも例外を広げ、権利者が自分の作品を対象から外せる仕組みを提案した。CMUによると、意見募集には1万件を超える回答が寄せられ、提案への支持は3%。95%は、著作物の利用前にAI企業がライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくを取得することを支持した。

これは一般人口の意識調査ではなく、政策への意見募集に集まった回答である。それでも、提案に対する反発の強さは見える。2026年初の時点で政府は選択肢を絞り切らず、3月に著作権とAIの報告書を公表する予定としていた。

他方、生成物には別の境界がある。既存曲をそのまま再現する場合と、特定の実演家の声や姿をまねる場合だ。CMUは、声そのものには著作権がないと整理する。学習用の録音を使う許諾と、その人らしい声を出力する同意は同じではない。この隙間を埋める制度として、デジタルレプリカデジタルレプリカDigital replica個人の声や姿をデジタル技術で再現したもの。この記事の法案では、本人と混同される明白な可能性のあるリアルな模倣が保護の対象になる。用語集で詳しくを保護する権利が議論されている。

広がるのは、一つの許諾では覆えない交渉

2026年初から先の1〜3年を見ると、注目点は契約の数だけではない。学習、既存曲の再利用、声や姿の模倣を、それぞれどのような条件で認めるかである。CMUによれば、既存作品の加工や特定人物の声の利用をサービスの設計に組み込む企業には、必要な同意を得るまで公開に慎重な例もある。

制度づくりも並行する。米国ではテネシー州が2024年にELVIS Actを成立させ、連邦レベルのNo FAKES Actは2025年に再提出された。デンマークでも新たなデジタルレプリカデジタルレプリカDigital replica個人の声や姿をデジタル技術で再現したもの。この記事の法案では、本人と混同される明白な可能性のあるリアルな模倣が保護の対象になる。用語集で詳しくの権利を導入する改革が予定されていた。ただし、各地の制度が同じ範囲を保護するとは限らず、欧州全体への広がりも、この時点では可能性として示されている。

国境も残る。英国のGettyとStability AIの訴訟では、米国で学習したモデルを英国で提供する際の扱いが争われた。裁判官は、侵害物の輸入を禁じる既存規定は当該モデルには適用されないと判断し、Gettyには上訴が認められた。学習した場所とサービスを使う場所のずれは、一国内の許諾だけでは整理しにくい問題である。

日本から見ると、提携は終着点ではない

日本からこの動きを読む際、英国や米国の議論を、そのまま国内の制度説明に置き換えることはできない。出典は日本法を検討していない。むしろ見えてくるのは、同じ音楽AIでも、学習時の複製と生成物、作品の権利と人の声を分けなければ、何が合意されたのかを捉えにくいという構造だ。

大手の提携発表は、音楽業界全体の合意を意味しない。許諾を出せる主体と、声を使われる本人、収益を受け取る主体は、必ずしも重ならないからだ。2026年初に見えていたのは、対立の解消というより、交渉の入口が増えたこと。AIを使えるかという問いの内側で、誰の同意が、どこまで届くのかが問われ始めていた。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年1月12日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次CMU(Complete Music Update)2026-01-13

    Music and AI: 2025’s developments that will shape 2026’s disputescompletemusicupdate.com ↗

    “Though towards the end of the year there were also licensing deals, as the majors successfully turned previously confrontational AI businesses into partners and collaborators.”

    ただし年末にかけてはライセンス契約も結ばれ、音楽大手は、それまで対立していたAI企業を提携・協業の相手へと変えていった。

    確認日 2026-10-18