1–3 YEARS · シーンと言説の潮流レーベル2.0

折半の約束に残された権利の境界

サラ・ランドリーの英米訴訟、自主レーベルの分配と所有

自主レーベルの運営を支えたマネージャーに、収入の半分を渡す。それは著作権の半分も渡す約束なのか。サラ・ランドリーと元マネジメント会社の英米での訴訟は、運営支援の対価と権利の所有が別の問題であることを浮かび上がらせる。アーティストが自らレーベルを営む時代に残された、協業の境界線である。

クリーム色の背景に、二つに分かれた円盤と、それぞれへ伸びる青と赤の線を配した、収入分配と権利の境界を表す抽象図

収入の半分と、権利の半分のあいだ

テクノテクノTechnoデトロイトで生まれ、ベルリンなどへ広がった電子ダンス音楽。ドイツのクラブ文化を語る中心的な存在だが、その受容の歴史と発祥地の歴史は区別して捉えられる。用語集で詳しくDJ/プロデューサーのサラ・ランドリーサラ・ランドリー Sara LandrySpotify で探すApple Musicと、英国の元マネジメント会社The Night Departmentの対立が、英米の裁判所に広がっている。CMUが10月12日に伝えたのは、報酬をめぐる争いだけではない。自主レーベルを誰が所有し、その名前で誰が音楽を流通させられるのかという、協業の土台に関わる問題である。

中心にあるのは、ランドリーのHekate Recordsだ。同社は書面の契約がない状態でレーベル運営を支え、50対50で分ける取り決めをしていた。だが、その対象が収入だけなのか、リリースされた録音の著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくも含むのかで認識が分かれた。折半という数字は一致していても、分けるものが一致していなかった。

元マネジメント会社は8月、マネジメント契約マネジメント契約Management dealアーティストの活動方針や仕事の交渉、関係者との調整などを支える契約。録音物の制作・販売に関する契約とは役割が異なり、具体的な業務範囲は契約ごとに決まる。用語集で詳しくへの違反を理由にロンドンで提訴した。ランドリーはそこで反訴し、さらにニューヨークで商標権侵害商標権侵害しょうひょうけんしんがいTrademark infringement商品やサービスの出所を識別する名称・標識について、権利者の保護範囲に抵触する使用をすること。音楽家の活動名も争点になり得るが、似ているだけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくを訴えている。いずれも当事者の主張が争われている段階であり、権利の帰属や侵害が認定されたという報道ではない。

通常の20%を越える仕事

背景には、アーティストが自らレーベルを持ち、流通会社を通じて音楽をデジタルサービスへ届ける動きがある。CMUによれば、その運営をマネージャーが支えることも一般的になっている。活動全般を支える役割に、リリースを事業として動かす仕事が重なる構図だ。

同記事は、録音収入に対する通常のマネジメント報酬を20%と説明する。一方、レーベル運営には通常の業務を越える労力が伴うため、50対50の分配も珍しくないという。ただし、これは報酬水準の説明であって、その割合で著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくも共有するという意味ではない。今回の争いは、その違いが曖昧なまま協業が続いた事例として読める。

時間のずれもある。同社がランドリーのマネジメントとレーベル運営に関わり始めたのは2020年ごろ。正式なマネジメント契約マネジメント契約Management dealアーティストの活動方針や仕事の交渉、関係者との調整などを支える契約。録音物の制作・販売に関する契約とは役割が異なり、具体的な業務範囲は契約ごとに決まる。用語集で詳しくは2023年に結ばれたが、レーベルへの関与について暫定的な合意書が起草されたのは2024年だった。運営の実態が、条件の文書化に先行していた。

ランドリーは、当初「全面的なコントロール」を維持できると説明されたと主張する。CMUは、元マネージャー側が芸術面の裁量を意味し、本人が会社と録音の完全な所有を意味すると受け止めた可能性を示している。これは同媒体の解釈であり、裁判所が確認した事実ではない。制作上の決定権と、権利を所有すること。その隔たりが表面化した。

契約終了後も続く流通と名前

争いが英米にまたがるのは、関係の終了後も音楽の流通とブランドの利用が続いているためだ。ロンドンでは契約違反契約違反けいやくいはんBreach of contract契約によって負った義務を果たさないこと。芸名を変更する約束が争われる場合、名前の類似そのものとは別に、合意の内容や履行の有無が問題となる。用語集で詳しくと録音の権利が争われる。一方、米国に会社を設立し、ブランドの商標商標しょうひょうTrademark商品やサービスの出所を見分ける名称や標識に関わる権利。音楽活動ではグループ名などが対象になり得るが、楽曲の著作権や収益の取り分とは別に扱われる。用語集で詳しく登録を行ったランドリーは、ニューヨークで自身とレーベルの名前の利用を問題にしている。

米国の訴えは主に、元マネジメント会社がBelieveを通じて、本人とレーベルのブランド名で音楽のディストリビューションディストリビューションDistributionレーベルなどの音源や商品を、配信サービスや販売店へ届ける流通業務。契約によっては、宣伝や販売促進、技術面の支援まで含むことがある。用語集で詳しくを続けていること、同社の宣伝で両者との関係に言及していることに向けられている。CMUは商標権侵害商標権侵害しょうひょうけんしんがいTrademark infringement商品やサービスの出所を識別する名称・標識について、権利者の保護範囲に抵触する使用をすること。音楽家の活動名も争点になり得るが、似ているだけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくの主張の強さに懐疑的だが、その評価と裁判の結論は別である。

ここから1〜3年の広がりとして考えられるのは、自主レーベルの協業条件を、報酬率だけで捉えない議論である。収入の配分、録音の所有、芸術面の裁量、契約終了後の流通や名称の利用。それぞれを別の条件として扱う必要性が、この訴訟では可視化されている。ただし、この一件から業界全体の契約変更が進むとまでは言えない。

日本から見ると、比率より分ける対象

日本から読む際には、英米で争われている契約と商標商標しょうひょうTrademark商品やサービスの出所を見分ける名称や標識に関わる権利。音楽活動ではグループ名などが対象になり得るが、楽曲の著作権や収益の取り分とは別に扱われる。用語集で詳しくの問題を、日本の制度や実務へそのまま置き換えることはできない。また、出典には日本の自主レーベルの契約慣行との比較はなく、同じ報酬率が使われているとも判断できない。参照できるのは、数字の一致だけでは合意の範囲が定まらないという構造だ。

アーティストがレーベルを持つことと、その事業のすべてを単独で動かすことは同じではない。外部の運営支援が加わるほど、誰が何を担い、何を持つのかという境界が重要になる。今回見えているのは、自主性の有無という二択ではなく、自主性を構成する複数の権利と役割である。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年10月12日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次CMU(Complete Music Update)2026-10-12

    Sara Landry’s legal battle with ex-managers over commissions, copyrights and trademarks now being fought out in US and UKcompletemusicupdate.com ↗

    “The management company initially helped run Landry’s label without a written contract in place under a 50/50 arrangement.”

    そのマネジメント会社は当初、書面の契約がないまま、50対50の取り決めでランドリーのレーベル運営を支援していた。

    確認日 2026-10-18

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