1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明

語りを支える道具は、まだ途上

UMGとSplice、音楽AIの評価軸を生成量から創作意図へ

音楽AIの進歩を、作れる曲数や音の完成度だけで測らない。2026年4月、UMGとSpliceの幹部は、創作者の意図を支える道具という評価軸を示した。権利保護を提携の土台とする一方、その意図を十分に表現できる制作ツールはまだないと認める。そこに、両社が目指す市場と未解決の課題が重なる。

クリーム色の背景に、コバルトブルーの波形と、その形を調整するコーラル色のスライダーを配した抽象的な平面イラスト。

曲を増やす技術から、意図を支える道具へ

音楽AIは、どれだけ多くの曲を作れるか。その競争とは別の評価軸が、権利者と制作ツール企業の対話から見える。2026年4月15日付のMusic Business Worldwideが伝えたのは、サンフランシスコのHumanXで登壇したUMGのマイケル・ナッシュと、SpliceSpliceSplice楽曲制作に使う音声素材を提供するサービス。検索やダウンロードの動向は作り手の関心を映すが、完成曲の再生数や一般の聴取者数を直接示すものではない。用語集で詳しくのカクル・スリヴァスタヴァの発言だ。

ナッシュは、AIによる「アーティストの置き換え」という見方を批判し、「アーティスト×AI」という枠組みを提示した。注目したいのは、単に人間の創造性を擁護したことではない。すでに提携を発表している両社が、生成量ではなく、創作者の意図をどれだけ実現できるかを技術の評価基準に据えた点である。

ただし、道具は完成していない。スリヴァスタヴァは、音楽家が自分の物語を十分に語れるAI制作ツールは、まだ市場にないと述べた。将来像への期待と、現状への不足感。その両方が示されている。

供給不足ではない市場で、何を作るのか

ナッシュが問題にしたのは、AIが音楽の供給制約を取り払うことで既存の市場を変える、という投資上の前提だ。彼によれば、デジタル化によって参入障壁はすでに大幅に下がり、4年前の時点で毎日10万曲がアップロードされていた。この数字は登壇者の説明であり、記事中で独立した検証が示されているわけではない。

その説明に沿えば、生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくが大量の曲を追加できることと、聴き手の需要を満たすことは別である。供給量の増加だけでは、新しい道具が何の役に立つかを説明できない。ナッシュの発言は、AIの能力を否定するものではなく、その能力をどこへ向けるかという議論だった。

ここで権利保護と事業開発がつながる。ナッシュはUMGの姿勢を「守りから攻めへ」と表現し、アーティストの権利を守ることを、新しい道具や体験の市場を組み立てる基盤に位置づけた。提携先としてSpliceSpliceSplice楽曲制作に使う音声素材を提供するサービス。検索やダウンロードの動向は作り手の関心を映すが、完成曲の再生数や一般の聴取者数を直接示すものではない。用語集で詳しくに加え、BandLab、KLAY、Udio、Stability AI、YouTube、Nvidiaを挙げている。

ただし、提携の広がりは条件の統一を意味しない。記事は、SunoがWarner Music GroupとはライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約を結ぶ一方、UMGやSonyとの交渉は行き詰まっていると報じられていたことも記す。AIとの協業を選ぶ姿勢と、個別の契約が成立するかどうかは、分けて読む必要がある。

制作ツールの進歩を測る、別のものさし

もう一つの論点は、技術的な改善と音楽の良さを切り離したことだ。ナッシュは、歌声を完璧にすれば音楽も良くなるのかと問い、最終的にはアーティスト、創作過程、創作意図に依存すると語った。誤差を減らすだけでは捉えられない価値。制作ツールに何を残すか、という問いでもある。

今後1〜3年という距離で見るなら、注目点は生成量の拡大だけでなく、音楽家が自分の判断を制作に反映できる機能がどう整うかにある。これは、両者の発言から読み取れる見通しであり、実装の予定ではない。クリエイティブ・コントロールクリエイティブ・コントロールCreative control作品の内容や表現について、制作者が判断できる権限。制作資金の提供や作品の所有権とは別の論点で、どこまで裁量を持てるかは契約によって異なる。用語集で詳しくがどこまで確保されるかを判断するには、具体的な機能や利用条件を見る必要がある。

対談で示された予測自体は、5年先を対象としていた。ナッシュは個人に合わせた音楽体験の広がりを、スリヴァスタヴァはAIの使用を意識しなくなる状態を描いた。ただし、前者は体験の設計、後者は道具の浸透についての見方である。どちらも、権利処理や創作者への還元が解決済みだと示すものではない。

日本から見ると、完成曲より制作過程

この出典は日本の制作現場や契約慣行を扱っておらず、国内との普及率や制度の違いは判断できない。日本から読む際に取り出せるのは、完成曲がAI製か否かという分類とは別に、制作のどの段階で、誰の意図を支えるためにAIが使われるのか、という見方である。

両社の発言は、権利者とツール企業という事業上の立場から出ている。音楽家全体の合意ではない。それでも、権利保護を協業の土台としながら、既存ツールの不足を認めた点には具体性がある。2026年4月の時点で見えていたのは、AIが人を代替するかという二択から、創作者の意図を扱える道具をどう作るかへ、議論を移そうとする動きだった。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年4月15日(水))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次Music Business Worldwide2026-04-15

    UMG’s Michael Nash takes aim at ‘false narrative of artist replacement’ by AI – and 3 other things we learned from his HumanX panel with Splice’s CEOmusicbusinessworldwide.com ↗

    “No matter how good [AI] gets, the goodness of the music that is created will come from the authenticity of the Creator’s narrative coming through.”

    [AIが]どれほど良くなっても、生まれる音楽の良さは、創作者の語りの真正さが伝わることから生まれる。

    確認日 2026-10-18