1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明
作品の巧拙から、作り手の所在へ
CISACのパリ宣言、AI時代の創作者保護に4原則
生成AIが人を感動させる音楽を作れても、作品の背後にいる人への対価は別の問題だ。2026年6月初旬、世界の著作権管理団体が集まるCISACは、透明性やライセンス、集中管理を柱とする宣言を採択した。見え始めていたのは、AIの能力を否定するのではなく、人間の創作を支える仕組みを問い直す動きである。

人間のほうが優れている、とは言わない
2026年6月初旬、パリで開かれたCISACの総会で、創造性とAIをめぐる宣言「The Paris Commitment」が採択された。CISACは、作詞家や作曲家などを代表する著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく管理団体の国際組織である。CMUが6月5日に報じたこの宣言は、AIの発展に対し、人間の創造性を保護し、尊重し、持続させる責任を掲げた。
注目したいのは、その出発点だ。会長のビョルン・ウルヴァースビョルン・ウルヴァース Björn UlvaeusSpotify で探すApple Musicは、自身も創作の過程でAIを使うと明かした。生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくは、構造だけでなく感情の面でも人間の作品に匹敵するものを作れる、あるいは今後作れるようになると認めている。AIには人を動かす音楽を作れない、という防衛線は引いていない。
そのうえで彼が語ったのは、人間の創作は生きた経験の証言だ、という考えだった。作品の出来栄えを比べることと、誰が何を経験して作ったのかを問うことは同じではない。ここに見えるのは、能力の競争から、創作者の存在と対価を支える制度へと議論の重心を移す姿勢である。
4原則がつなぐ、学習と報酬の問題
背景には、利用が広がる速度に対し、著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく上の問いが未解決のまま残っている状況がある。既存作品をAIの学習に使う際に許諾は必要なのか。AIが作った作品に著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくは認められるのか。音楽業界が契約を結ぶ場合、交渉するのは誰で、個々の作詞家や作曲家にはどう支払われるのか。CMUは、これらを一続きの問題として取り上げている。
宣言が掲げた原則は4つ。人間の創造性と文化的多様性の保護、AIシステムの透明性・ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく・公正な報酬、創作の環境を支える集中管理集中管理しゅうちゅうかんりCollective rights management多数の権利者に代わり、管理団体が作品の利用許諾や使用料の回収・分配をまとめて行う仕組み。権利者と利用者の個別交渉の負担を減らす役割を持つ。用語集で詳しくの重要性、そして政府や政策担当者による創作者の権利と文化的表現の保護である。単に無断学習への反対を示すのではなく、利用を認める条件と、その先の報酬までを同じ枠組みに置いた。
米国では、既存作品の学習利用に許諾は不要だとするAI企業が、フェアユースフェアユースFair Use米国著作権法で、利用の目的や性質などに照らし、権利者の許諾なしでも著作物の利用が認められる場合があるという原則。AI学習への適用は争われている。用語集で詳しくを根拠にしている。記事は、その主張が音楽業界とSunoの訴訟などで争われていると伝える。ただし、これは当時の係争状況であり、結論ではない。ウルヴァースは判決の影響を大きく語ったが、個別の裁判があらゆる契約の行方を決めると、ここで確定することはできない。
契約の成立だけでは見えないもの
この時点から先の1〜3年を考えると、広がり得る論点は、AI企業が許諾を得るかどうかだけではない。許諾を得たとして、その契約が誰の作品を対象とし、誰への支払いにつながるのか。宣言が透明性と公正な報酬を並べたことで、契約の存在だけでは答えにならない問いが前面に出ている。
そこで意味を持つのが集中管理集中管理しゅうちゅうかんりCollective rights management多数の権利者に代わり、管理団体が作品の利用許諾や使用料の回収・分配をまとめて行う仕組み。権利者と利用者の個別交渉の負担を減らす役割を持つ。用語集で詳しくだ。多くの創作者の権利をまとめて扱う仕組みを、宣言は創作の持続に関わるものとして位置づけた。AIをめぐる交渉でも、個々の創作者に代わって条件を調整する役割が論点になる可能性がある。ただし、この宣言自体が具体的な徴収方法や分配方式を決めたわけではない。
また、文化的多様性を保護対象に含めた点も見逃せない。報酬を確保する問題と、異なる文化的表現を支える問題が、同じ宣言に収まっている。今後の制度や契約が両者をどう結びつけるのかは未確定だ。原則の共有と、実際に機能する仕組みとの間には、なお距離がある。
日本から見る、作品の背後の人
日本から読む際には、国際的な権利管理団体権利管理団体けんりかんりだんたいCollective management organization多数の権利者に代わり、音楽などの利用に伴う使用料の徴収や分配を担う組織。扱う権利や地域は団体ごとに異なり、海外団体との協定が回収経路になる。用語集で詳しくによる意思表明と、国内で適用される法律や契約を分けて捉える必要がある。この記事は、日本の制度変更や国内の分配実態を報じたものではない。各国の法制度の違いを越えて共通原則を示す宣言であり、そのまま日本の許諾要件や支払条件を説明する資料にはならない。
それでも読み取れる変化はある。AIが作った音楽に感動できるかという問いと、人間の創作者が識別され、対価を受け取れるかという問いが、明確に切り分けられていることだ。CISACが創立100周年に掲げたのは、技術の能力を低く見積もる主張ではなかった。作品の背後には人がいて、その人に何が支払われるのかを問う。その接点を制度として保とうとする動きが、ここにある。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年6月4日(木))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次CMU(Complete Music Update)2026-06-05
“People like us in this room have spent a century insisting - in legal and practical terms - that the person behind the work is real, identifiable and owed something.”
この会場にいる私たちのような者は、作品の背後にいる人は実在し、識別でき、その人には支払われるべきものがあると、法と実務の両面から一世紀にわたり訴えてきた。
確認日 2026-10-18
Artistsこの記事に登場するアーティスト
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