1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明

許諾の先に残る、演奏への対価

AI契約の収益配分を問う、米演奏家組合のレーベル提訴

米国の演奏家組合AFMが、生成AI企業との契約を結んだUniversal MusicとWarner Musicを提訴した。争点はAI学習の許諾だけではない。録音に参加した演奏家への通知と支払いである。2026年6月の報道から、著作権の交渉と並行して浮上した、労働協約による分配要求を読む。

クリーム色の背景に、黒いレコードから伸びる青い線と、二方向に分かれるサンゴ色の小さな円を配した抽象図

許諾が成立しても、演奏家の交渉は終わらない

生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しく企業が音楽の利用許諾を得ても、その録音で演奏した人に対価が届くとは限らない。2026年6月9日のCMU報道が伝えたのは、この隔たりをめぐる訴訟だ。米国の職業音楽家を代表するAmerican Federation Of Musicians(AFM)が、Universal MusicとWarner Musicを提訴した。

対象は両社とUdioとのライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約、さらにWarnerとSunoとの契約である。AFMは、対象となる録音が開示されず、そこに参加した組合員への補償も確保されていないと主張する。争われているのは、レーベルによる音楽の許諾と、演奏家への支払いが別々に扱われている点だ。

ここに見える兆しは、AIをめぐる交渉の焦点が増えたことにある。「学習に許諾が必要か」という著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく上の問いに加え、「許諾後の収益を誰が受け取るのか」という労働契約上の問い。AFMは後者を、既存の協約に基づいて法廷へ持ち込んだ。

二つの義務違反と、既存協約の「新たな利用」

AFMが根拠とするのは、米国のレーベルと音楽家の間で使われる録音労働協約労働協約ろうどうきょうやくCollective bargaining agreement労働組合と使用者側が交渉して結ぶ、報酬や労働条件などに関する取り決め。今回の録音労働協約では、AI利用の料金が定められていない点が争われた。用語集で詳しく、Sound Recording Labor Agreement録音労働協約ろくおんろうどうきょうやくSound Recording Labor Agreement米国の演奏家組合AFMがレコード業界と交渉した、録音参加者の労働条件に関わる協約。本件では、従来の対象外の利用に伴う通知と補償の条項が争点となった。用語集で詳しく(SRLA労働協約ろうどうきょうやくCollective bargaining agreement労働組合と使用者側が交渉して結ぶ、報酬や労働条件などに関する取り決め。今回の録音労働協約では、AI利用の料金が定められていない点が争われた。用語集で詳しく)だ。同組合によれば、協約には、従来の対象に含まれない用途で録音を許諾する場合、組合への通知と参加演奏家への補償を求める「新たな利用」条項「新たな利用」条項あらたなりようじょうこうNew use provision協約で既に扱う用途とは異なる録音利用について、通知や補償を求める条項。本件ではAFMが、生成AIへの利用も対象に含まれると主張している。用語集で詳しくがある。生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくへの利用もこれに該当する、というのが訴えの中心である。

主張される違反は二つ。どの録音を許諾したのか知らせていないことと、その録音に参加したAFM組合員への補償を確保していないことだ。CMU記事は契約金額や対象録音数を示していない。問題の規模を金額では測れない一方、対象を確かめるための情報自体が争点になっている。

背景には、対立から契約への転換がある。UniversalとWarnerは当初、UdioとSunoによる無許諾の録音利用を著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しくとして訴えた。その後、両社はUdioと、WarnerはSunoとも和解し、ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約を結んだ。AFMは、レーベルが自らの収益源を確保する一方で、学習に使われる演奏の担い手を補償していないと批判している。これは組合側の主張であり、協約違反が認定されたという報道ではない。

AI企業側には、学習は米著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しく法上の許諾不要の利用に当たるという立場もあり、その当否は裁判で争われている。CMUは、法的な不確実性が残るなか、将来の敗訴や損害賠償損害賠償そんがいばいしょうDamages契約違反などによって生じた損害を金銭で補うこと。本件の争点は、請求できるかだけでなく、将来収入や残るメンバーの活動を金額にどう反映するかにある。用語集で詳しくのリスクを避けるために契約を結ぶ企業が出ていると説明する。ただし、企業間で紛争を解決しても、個々の参加者への分配方法まで明らかになるわけではない。

声の承認と、学習への対価が分かれていく

今後1〜3年を考えるうえで注目されるのは、同意を求める場面の違いだ。CMUによれば、Udioの新サービスは既存曲の組み替えや、歌声を別のアーティストに似せた音声へ置き換える機能を備えると見られている。大手各社は、声の複製にはアーティスト、楽曲の組み替えには作家の個別承認を得る方針だという。

一方、モデルの学習については、管理する楽曲群をアーティストや作家に相談せず組み入れる意向と報じられている。しかも、学習に対する報酬の分け方は明確ではない。目に見える声の利用には個別承認があっても、その手前の学習段階では参加者が交渉から離れてしまう可能性。このずれが、セッション演奏家の立場から表面化した。

AFMの解釈が認められるかは、この報道段階では分からない。それでも、AI専用の新制度だけでなく、既存協約の条項を通じて通知や補償を求める道が試されている。今後、契約の対象録音と参加演奏家をどう結び付けるか、企業間の許諾を個人への支払いへどう接続するかが、交渉の論点として広がる可能性がある。

日本から見ると、録音の権利と演奏の契約の間

日本から読む際には、米国のこの協約を、日本の録音参加契約へそのまま当てはめることはできない。出典は日本の契約実務を比較しておらず、同様の通知義務や補償があるとは判断できない。今回の要求は、単に演奏に参加したという事実だけでなく、AFMが交渉した協約の具体的な条項に立脚している。

その違いを踏まえても、読み取れる構図はある。録音を許諾する企業と、その音を実際に生み出した人は、同じ立場ではない。生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの契約を「権利者との合意」でひとまとめにせず、録音に関わった誰への通知と対価が含まれるのかを見る視点。2026年6月の提訴は、その内訳を問う動きとして現れていた。

この記事は、2026年10月に、当時(2026年6月8日(月))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。

EVIDENCE出典

  1. 二次CMU(Complete Music Update)2026-06-09

    US musicians’ union sues Universal and Warner over AI deals, claims breach of ‘new use’ clause in record industry’s performer agreementcompletemusicupdate.com ↗

    “The American Federation Of Musicians has sued Universal Music and Warner Music over their licensing deals with AI company Udio.”

    American Federation Of Musiciansは、AI企業Udioとのライセンス契約をめぐってUniversal MusicとWarner Musicを提訴した。

    確認日 2026-10-18