1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明
許諾の先に残る演奏者の取り分
AI学習の許諾収益を問う、米演奏家組合の大手提訴
AI企業への楽曲利用の許諾は、録音に参加した演奏家への分配まで保証するのか。米国の演奏家組合が、大手レーベルを労働協約違反で提訴した。2026年6月初旬に見えていたのは、AI学習を認めるかという対立の先で、収益と利用情報を誰に渡すのかが争点になる動きだ。許諾の成立と、制作に関わった人への還元は、別の問題として浮かんでいる。

許諾の成立では閉じない問い
AIに音楽を学習させるには、誰の許諾が要るのか。その問いに、録音へ参加した演奏家には何が返るのか、という問いが重なった。2026年6月5日、セッション演奏家らを代表する米国音楽家連盟(AFM)が、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)とワーナー・ミュージック・グループ(WMG)を提訴した。
争点は、AI音楽企業のSunoとUdioに対する学習用のライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくだ。AFMは、両社が組合員の参加した録音を許諾しながら、労働条件などを定める労働協約労働協約ろうどうきょうやくCollective bargaining agreement労働組合と使用者側が交渉して結ぶ、報酬や労働条件などに関する取り決め。今回の録音労働協約では、AI利用の料金が定められていない点が争われた。用語集で詳しくに基づく報酬を支払っていないと主張する。協約が定める音楽の「新たな利用」に、今回のAI学習が関わるという訴えである。
兆しは、対立の場所にある。これはAI企業だけを相手にした無断学習への異議ではない。AI企業と契約を結んだレーベルに対し、録音を支えた演奏家の組合が分配を求めている。利用を認める契約と、その収益を制作に関わった人へ届ける仕組み。その間に残る問題が表に出た。
訴訟から契約へ、その先の分配
背景には、2024年から続く交渉の流れがある。UMGとWMGはソニー・ミュージックエンタテインメントとともに、SunoとUdioが著作権著作権ちょさくけんCopyright楽曲や歌詞などの創作的な表現を保護する権利。出典は楽曲・歌詞・録音の保護と声のブランドを守る試みを区別し、商標を追加の手段として位置づけている。用語集で詳しくで保護された数百万件の録音を違法に学習へ使ったとして提訴していた。出典によれば、2025年秋までにはUMGとWMGがAI企業側との契約に至り、許諾された作品を使う新たなモデルの学習へ道を開いた。
その際に示されたのは、参加を選んだアーティストやソングライターには報酬が支払われ、音楽や肖像などの利用について「完全なコントロール」を保てるという説明だった。ただし、この説明だけでは、録音に参加した組合員への支払いがどう扱われるかは分からない。AFMが今回問うのは、その演奏労働に対する協約上の扱いである。
訴状は、報酬やクレジット制作クレジットせいさくくれじっとRecording credits楽曲や録音の制作に関わった人と、その役割を示す情報。歌い手だけでなく、演奏や録音などの担い手を知り、別の作品へ進む手がかりにもなる。用語集で詳しくがないことに加え、どの録音の、誰の仕事が許諾されたのかという情報も提供されていないと主張する。原盤原盤げんばんMaster recording音楽の録音そのものや、その元となる録音物を指す言葉。権利を論じる際は、録音に関する権利と、テープなど現物の所有を区別する必要がある。用語集で詳しくという録音物の権利を扱う契約と、そこに参加した人への対価は、同じ問いではない。対象となった録音が分からなければ、演奏家側は自分の仕事と新たな利用を照合することも難しい。
一方、これは訴訟での組合側の主張であり、違反が認定されたという報道ではない。UMGはAFMとの良好な関係を強調し、団体交渉団体交渉だんたいこうしょうCollective bargaining労働者が労働組合を通じ、賃金や労働時間などの条件について使用者と話し合うこと。組合結成そのものと、交渉による協約の成立は別の段階である。用語集で詳しくを通じて問題を解決すると説明した。WMGは交渉中の提訴に失望を示しつつ、対話の継続に言及している。出典には、許諾料や演奏家に支払うべき金額、対象録音数の具体的な記載はない。
次に試されるのは利用をたどる仕組み
2026年6月初旬から先の1〜3年を考えると、この争いが示す論点は、AI学習を認めるか否かだけには収まらない。認めた利用について、何を対象とし、誰への支払いが生じるのかを確認できるか。ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しくが成立した後の説明と分配が、交渉の対象として浮かんでいる。
仮に同様の契約が増えるなら、録音と参加者の情報を結び付け、許諾の範囲を確認できる仕組みの重要性が増す可能性がある。AFMが金銭とともに情報を求めている点は、その接点を示す。ただし、この提訴が情報開示や分配の共通ルールにつながるかは、出典の時点では分からない。
また、報道にあるのは特定の労働協約労働協約ろうどうきょうやくCollective bargaining agreement労働組合と使用者側が交渉して結ぶ、報酬や労働条件などに関する取り決め。今回の録音労働協約では、AI利用の料金が定められていない点が争われた。用語集で詳しくを巡る争いであり、すべての演奏家やAI契約に同じ条件が適用されるという話ではない。「新たな利用」をどう扱うかは、既存の契約の文言と交渉に左右される。新しい技術の対価が、すでに存在する労働上の約束を通じて問われているのである。
日本から見る、権利と労働の二つの入口
日本から読む際には、米国のAFMと大手レーベルとの協約に基づく訴えだという違いを外せない。この出典だけで、日本の演奏家にも同じ支払い請求が成り立つとは言えない。国内の契約や労使関係を、今回の枠組みとそのまま重ねることはできない。
それでも読み取れるのは、AIと音楽の関係には、権利者による利用許諾とは別に、制作を担った人の労働と対価という入口があることだ。レーベルとAI企業の合意だけで話が閉じるとは限らない。誰の演奏が使われ、その利用を誰が確かめられるのか。許諾後に残る問いが、今回の提訴によって具体的な姿を持った。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年6月7日(日))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Pitchfork2026-06-08
Musicians Union Sues Universal and Warner Over AI Usepitchfork.com ↗
“At the same time, they have refused to provide information to the AFM about which recordings and whose work is being licensed.”
同時に彼らは、どの録音の、誰の仕事が許諾されているのかについて、AFMへの情報提供を拒んでいる。
確認日 2026-10-18


