1–3 YEARS · シーンと言説の潮流AI生成音楽著作権の再発明
生成物だけでは見えない権利の境界
Sunoが認めた音源取得、AI学習訴訟は入口も争点に
Sunoは、YouTubeから音声を取得してAIの学習に使ったと裁判書面で認めた。一方、取得時の技術的保護の回避をめぐっては、レーベル側が訴えを起こせる立場にあるかを争う。2026年9月初旬に見えていたのは、学習の適法性だけでなく、データへの「入口」も別の争点になるという構図だ。

学習の前に、音源への入口がある
AIが何を作ったか。その前段にある、音源をどう手に入れたかが争われている。Sunoは2026年9月1日、米マサチューセッツ州の連邦地裁に提出した答弁書で、公開ツールのYT-DLPを使い、YouTubeから学習データ学習データがくしゅうデータTraining DataAIがパターンや特徴を学ぶために使うデータ。音楽では楽曲や音声などが対象になり得るが、個別サービスの収集内容や利用条件は、開示資料などによる確認が必要となる。用語集で詳しく用の音声を取得したと認めた。9月初旬の時点で、取得元と手段が同社自身の裁判書面に明記されたのである。
ただし、これは違法行為を認めたという意味ではない。UMG、Capitol、Sony Music側は、YouTubeの暗号化を回避して録音物を取得したと主張する。対するSunoは取得の事実を認めながら、技術的保護の回避について、原告が訴えを起こす資格や、法律上の被害を受けた立場にあるかを争っている。
ここにある兆しは、AI学習を一つの行為として扱わず、取得と利用を分けて問う構図だ。Sunoは学習についてフェアユースフェアユースFair Use米国著作権法で、利用の目的や性質などに照らし、権利者の許諾なしでも著作物の利用が認められる場合があるという原則。AI学習への適用は争われている。用語集で詳しくを主張する一方、ストリームリッピングストリームリッピングStream ripping配信サービス上の音声や映像を抽出し、ファイルとして保存すること。著作権侵害や技術的保護措置の回避に当たるかは、取得方法や適用法などによって判断される。用語集で詳しくをめぐる請求には別の抗弁を置く。生成された曲が似ているかだけでは、この訴訟の全体像は見えない。
二つの法的な問いと、560の録音物
背景には、請求の追加がある。裁判所は8月18日、DMCADMCAディーエムシーエーDigital Millennium Copyright Act米国のデジタル著作権法。ネット上の侵害に対する削除通知や、一定の条件を満たすサービス提供者の責任制限を定め、本件の通知制度の背景となる。用語集で詳しくの技術的保護手段の回避禁止規定に基づく請求をレーベル側が加えることを認めた。Sunoは以前から、この規定が禁じるのは著作物へのアクセス制御の回避であり、コピーの制御の回避ではないと主張していた。何を保護する技術だったのかも争点である。
9月1日の答弁書では、原告の訴える資格などを争う抗弁が加わった。ただし、この抗弁は回避行為に関する請求に限られ、別に提起されている二つの著作権侵害著作権侵害ちょさくけんしんがいCopyright infringement著作権で保護される表現を、許諾や法律上の根拠なく利用して権利を侵すこと。音楽では歌詞や旋律などが問題となり、似ているという印象だけで直ちに成立するわけではない。用語集で詳しく請求には及ばない。取得方法への反論と、学習時の複製がフェアユースフェアユースFair Use米国著作権法で、利用の目的や性質などに照らし、権利者の許諾なしでも著作物の利用が認められる場合があるという原則。AI学習への適用は争われている。用語集で詳しくに当たるという主張は、区別して読む必要がある。
対象は560の録音物。レーベル側は1作品につき最大15万ドルを求め、Sunoは侵害があったとしても故意ではなく、法定損害賠償法定損害賠償ほうていそんがいばいしょうStatutory damages実際の損害額の立証とは別に、法律で定めた枠組みに基づいて求める損害賠償。訴状に示された可能額は、裁判所が認めた支払額や和解金とは異なる。用語集で詳しく額を1作品200ドルまで減額できると主張する。いずれも当事者の請求や抗弁であり、裁判所が認めた金額ではない。学習規模について同社は、公開された情報源から集めた数千万件の録音例を使ったと認めている。
裁判と契約が並んで進む
法廷の外では、許諾を得たモデルへの移行が準備されていた。Warner Music Groupは2025年11月にSunoと和解し、ライセンスライセンスLicensing一定の条件のもとで利用を認めること。声や姿の複製では、誰が何に同意したのかが重要で、楽曲や録音を使う許可とは区別して考えられる。用語集で詳しく契約を締結。BMGも2026年8月12日、録音物と音楽出版音楽出版おんがくしゅっぱんMusic publishing歌詞やメロディーなど楽曲の著作権を管理し、利用の許諾や収益につなげる事業。特定の録音物を扱う権利とは区別され、契約によって管理や保有の範囲が異なる。用語集で詳しくの管理作品を対象に契約を結んだ。BMGは過去の作品利用も解決したと説明し、両社は新モデルの開発に参加している。
Sunoは8月10日、音楽業界と共同開発する新世代モデルの導入時に、従来モデルをすべて終了すると発表した。ただし、導入日は示していない。9月初旬に見えていたのは、許諾のない学習の適法性を争う道と、契約で利用条件を定める道が、同じ企業の中で並走する姿である。
今後1〜3年の焦点になり得るのは、契約の対象が音源利用だけでなく、生成後の持ち出し方にも及ぶかどうかだ。Sunoは9月3日からダウンロード回数を制限。8月10日公開の利用規約では、自社のダウンロード経路以外による出力の取得を禁じ、録音やストリームリッピングストリームリッピングStream ripping配信サービス上の音声や映像を抽出し、ファイルとして保存すること。著作権侵害や技術的保護措置の回避に当たるかは、取得方法や適用法などによって判断される。用語集で詳しくを例示した。他社音源の取得を争う企業が、自社出力の取得経路には制限を置く。この対照は、入口と出口の双方で利用条件が重要になる可能性を示している。
日本から見ると、公開と許諾は別の話だ
日本から読む際に残したいのは、「公開されている音源」と「利用が許されている音源」の区別である。Sunoは従来、公開インターネット上で入手できる一定品質の音楽ファイルを学習に含めたと説明していた。今回の書面では、その抽象的な説明にYouTubeという取得元と具体的なツール名が加わった。公開性だけでは説明しきれない取得の過程が、表に出ている。
もっとも、この訴訟は米国のフェアユースフェアユースFair Use米国著作権法で、利用の目的や性質などに照らし、権利者の許諾なしでも著作物の利用が認められる場合があるという原則。AI学習への適用は争われている。用語集で詳しくやDMCADMCAディーエムシーエーDigital Millennium Copyright Act米国のデジタル著作権法。ネット上の侵害に対する削除通知や、一定の条件を満たすサービス提供者の責任制限を定め、本件の通知制度の背景となる。用語集で詳しくに基づく争いであり、日本で同じ利用が適法かを直接示すものではない。出典は日本の制度や契約実務との比較も示していない。読み取れるのは、学習への利用、取得時の手段、生成後の配布条件を分けて考える必要が生じていることだ。音楽生成AI生成AIせいせいエーアイGenerative AI学習したデータのパターンをもとに、音声や画像、文章などを生成する技術の総称。音楽では作曲、歌声、演奏など、使われる工程によって役割が異なる。用語集で詳しくの権利問題は、完成した曲の手前と、その先にも続いている。
この記事は、2026年10月に、当時(2026年9月8日(火))の出典をもとに書いた振り返りです。数字や状況はその後変わっている可能性があります。
EVIDENCE出典
- 二次Music Business Worldwide2026-09-09
“Suno admits that audio data was obtained from YouTube for use as training data using YT-DLP.”
Sunoは、YT-DLPを使い、学習データとして利用するためにYouTubeから音声データを取得したことを認める。
確認日 2026-10-18


